上 下
257 / 788
第七章

第271話

しおりを挟む

この世界には死霊使いネクロマンサーと呼ばれる職業がある。殺人の被害者の身体に使役している死霊スピリットを入れることで『殺された状況を魔石に記録する』ので、大抵の国の裁判所には最低でも二人はいる。貴族が罪を逃れるために代理人を立てたり、金を積んで揉み消されるのを避けるためだ。審神者さにわ同様、高給で待遇はいい。

「けど、死霊使いネクロマンサー奴隷化した死体ゾンビは関係ないよね? ……まさか」
《 死霊使いネクロマンサーには、くずれとかはぐれはいないから 》

私の言葉を遮るように地の妖精にツッコミを入れられた。

「じゃあ、奴隷化した死体ゾンビってなに?」
《 奴隷化した死体ゾンビというのはね、この死体に使役している魔物や動物の魂をいれる 》
「そういえば『死隊したい』という軍団が現れたらしいって情報部のニュースで聞いたけど」
《 ……うん。あれは奴隷化した死体ゾンビを使った軍団だよ 》
「やだなぁ。ああいうのは嫌いなんだよ」

まだ、スケルトンなら平気だ。ダンジョンにもでてくるけど、保健室にある完全な骨格標本だからだ。……アレが靴を履いて武器を持って、集団で襲ってくる。風魔法で倒せるから平気だけど、魔法を使うのもいる。

「死んだ後の方が攻撃魔法を使い放題になってないか?」

そう思っていたが、魔物全集には『アンデッドの一種。奴隷化した死体ゾンビではない』とあった。たしかに魔物なんだな、と思うことがあった。……自己があるから、行動が一律ではない。ただ闇雲に突っ込んでくるスケルトンもいれば、学習して攻撃態勢を変えてくるスケルトンもいる。攻撃魔法も使ってくるし、補助魔法を使うスケルトンすらいる。

「こんなのありえねぇ~!」

そう叫んだのは、倒したスケルトンを放置して第二陣と接戦していたら、バラバラになったスケルトンが復活したからだ。中には二体がくっついて強化した個体まで現れた。大きさは頭ひとつ分大きいくらいだ。……弱点が風魔法なのは変わらないが。

《 大丈夫。この国には近寄れないよ 》
「なんで?」
《 神獣がいるからね、それも四体も。奴隷化した死体ゾンビにとって、自分たちを昇天させる神獣は天敵ともいえるんだよ 》
「…………救いを求めて寄ってくる、という可能性は?」
《 それは大丈夫。神獣の領域テリトリーに入ったと同時に昇天するから 》
「神獣の領域テリトリーって神域と同等?」
《 アンデッド系にとってはね 》

ここは『精霊以上の存在に見捨てられた大陸』だ。妖精たちも一部を残してほかの大陸へ渡っていった。そのため、ダンジョン都市シティ以外では通常の常識は通用しない。……無秩序が彼らの常識だからこそ、ダンジョン都市シティでトラブルが起き、その結果、独立した地区になった。

《 これからは、神獣たちの存在が守護になる 》
「……魔導具で作れないかな」
《 それはムリ 》
《 排除系でガマンして 》

みんなも私が何を望んでいるのか気付いている。そう、絡まれたくないだけだ。普通の人でもそう思うのだから、私は特にそう思う。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界ライフは山あり谷あり

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,307pt お気に入り:1,552

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,196pt お気に入り:5,104

ずっと、君しか好きじゃない

BL / 連載中 24h.ポイント:19,036pt お気に入り:577

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,201pt お気に入り:33

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,442pt お気に入り:139

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。