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第七章
第271話
しおりを挟むこの世界には死霊使いと呼ばれる職業がある。殺人の被害者の身体に使役している死霊を入れることで『殺された状況を魔石に記録する』ので、大抵の国の裁判所には最低でも二人はいる。貴族が罪を逃れるために代理人を立てたり、金を積んで揉み消されるのを避けるためだ。審神者同様、高給で待遇はいい。
「けど、死霊使いと奴隷化した死体は関係ないよね? ……まさか」
《 死霊使いには、くずれとかはぐれはいないから 》
私の言葉を遮るように地の妖精にツッコミを入れられた。
「じゃあ、奴隷化した死体ってなに?」
《 奴隷化した死体というのはね、この死体に使役している魔物や動物の魂をいれる 》
「そういえば『死隊』という軍団が現れたらしいって情報部のニュースで聞いたけど」
《 ……うん。あれは奴隷化した死体を使った軍団だよ 》
「やだなぁ。ああいうのは嫌いなんだよ」
まだ、スケルトンなら平気だ。ダンジョンにもでてくるけど、保健室にある完全な骨格標本だからだ。……アレが靴を履いて武器を持って、集団で襲ってくる。風魔法で倒せるから平気だけど、魔法を使うのもいる。
「死んだ後の方が攻撃魔法を使い放題になってないか?」
そう思っていたが、魔物全集には『アンデッドの一種。奴隷化した死体ではない』とあった。たしかに魔物なんだな、と思うことがあった。……自己があるから、行動が一律ではない。ただ闇雲に突っ込んでくるスケルトンもいれば、学習して攻撃態勢を変えてくるスケルトンもいる。攻撃魔法も使ってくるし、補助魔法を使うスケルトンすらいる。
「こんなのありえねぇ~!」
そう叫んだのは、倒したスケルトンを放置して第二陣と接戦していたら、バラバラになったスケルトンが復活したからだ。中には二体がくっついて強化した個体まで現れた。大きさは頭ひとつ分大きいくらいだ。……弱点が風魔法なのは変わらないが。
《 大丈夫。この国には近寄れないよ 》
「なんで?」
《 神獣がいるからね、それも四体も。奴隷化した死体にとって、自分たちを昇天させる神獣は天敵ともいえるんだよ 》
「…………救いを求めて寄ってくる、という可能性は?」
《 それは大丈夫。神獣の領域に入ったと同時に昇天するから 》
「神獣の領域って神域と同等?」
《 アンデッド系にとってはね 》
ここは『精霊以上の存在に見捨てられた大陸』だ。妖精たちも一部を残してほかの大陸へ渡っていった。そのため、ダンジョン都市以外では通常の常識は通用しない。……無秩序が彼らの常識だからこそ、ダンジョン都市でトラブルが起き、その結果、独立した地区になった。
《 これからは、神獣たちの存在が守護になる 》
「……魔導具で作れないかな」
《 それはムリ 》
《 排除系でガマンして 》
みんなも私が何を望んでいるのか気付いている。そう、絡まれたくないだけだ。普通の人でもそう思うのだから、私は特にそう思う。
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