私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

文字の大きさ
442 / 791
第九章

第455話

しおりを挟む

「妖精たちが、死んだら同じ場所に生まれるっていうのは間違いよ」

女神があまり身体を借りていても疲れてしまうと思い、最後に聞きたいことを質問した。妖精たちのことだ。隣国での事件が気になっていることがあったのだ。

「隣国は?」
「あそこは王都周辺に結界が張られていたの。妖精たちを指定して、入ることができても、結界から出られないようにしたの。だけど穴はあって、運良く国の外で生まれ変わった妖精はいたわ」
「しかし、妖精たちの話の中で、殺されていなくなった、消滅した、という話を聞くよ」
「ええ。妖精たちは無限の生命をもってるわ。でも、心が疲弊して『消えたい』と強く願ったときに、妖精たちは一時的に眠るの。『妖精のたまご』と呼ばれるものよ。騰蛇、保護しているんじゃない?」

女神が騰蛇を見上げて確認する。すると妖精が驚きの声をあげた。

《 え⁉︎ 騰蛇が隣国で回収して持ってるって! 》
《 じゃあ、私の仲間もいる⁉︎ 》
「『妖精のたまご』は傷ついて癒されるために眠っているの」
《 それでもいい…… 会いたい。私を逃してくれたの。だから、お礼が言いたい 》

あの子は私たちと一緒に国境まで行って、最後まで仲間を探し続けていた地の妖精だ。必死に涙を我慢している妖精だったが、決壊してしまったのはアラクネがいくつかの卵をいれた、羽毛が敷かれたとうの籠を持って現れたからだ。

《 いた! みんないたぁ! 》
《 そっか。あの子、仲間がみんないなくてだったんだ 》

卵に抱きついて、ひとつずつ撫でたりキスをして再会を喜んでいる妖精。誰もがその様子を黙って見守っていた。



「エミリア。農場を広げられる?」
「地上に『妖精のゆりかご』をつくるの?」
「心が落ち着いた妖精たちだけね」

『妖精のゆりかご』とは、妖精たちの巣みたいなものだ。ゆっくり休められる自然の多い場所である。

「いいですよ。隣に妖精たちの住まいを提供しましょう。妖精も仲間ですからね」
「そこに魅了の女神も一緒に住めばいいわ」

シーズルの言葉にアラクネが提案する。その言葉に女神は驚いたが、「妖精のたまごと妖精たちの見守りよ」と言われて恥ずかしそうに微笑んだ。



目を覚ましたフィムは、アゴールに連れられて火龍と挨拶中。魅了の女神に身体を貸していた間は寝ているため、話を知らないらしい。そんなフィムに火龍がご褒美として頭に乗せたり遊ばせている。
地上にはいま問題が起きている。

「って言ってたけど何が?」
「大したことではないわよ」
「そうね。ちょーっと某湿地帯のある国と、偉そうにしていたお隣の国がケンカを始めてね」
「あの二国、正式に約束を反故にしたことで仲違いしたよね」
「それがケンカの理由よ」

人はそれを戦争という。

「でも、なんでケンカを始めたの? 下剋上?」
「勝てないことがわかってるダイバが、無謀にもコルデに向かっていくようなもんさ」
「そして瞬殺?」
「うーん、今回はいつもとちょっと違うから」
「女神が関わってるから?」

そう聞いたら「「「違う違う」」」と声を揃えられた。

「コルスターナの国王が死んだ」
「あれ? まだ生きてたの? あ、違うか。聖魔士くずれジュールは父親や兄姉たちを殺したんだっけ」
「そのジュールが、母国の王都と母国以外の国の王城を壊したことを覚えているか?」
「どこかって公開してなかったよね」

そう言ってメッシュに目を向ける。

「パルクスです」

パルクスは、アウミの中にいる女神を手に入れたから、大きくでたのだろう。

「ってことは、コルスターナの国王はパルクスの手の者に殺されて?」
「それがケンカの発端です」

……迷惑な連中だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

よかった、わたくしは貴女みたいに美人じゃなくて

碧井 汐桜香
ファンタジー
美しくないが優秀な第一王子妃に嫌味ばかり言う国王。 美しい王妃と王子たちが守るものの、国の最高権力者だから咎めることはできない。 第二王子が美しい妃を嫁に迎えると、国王は第二王子妃を娘のように甘やかし、第二王子妃は第一王子妃を蔑むのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。