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第十章
第522話
しおりを挟む私がいかないとアサガオがわからない。
そんな理由から、今回は冒険者用の結界の魔導具を使って常時結界を張る。それによって脱兎の如く森から逃げ出す魔物を減らすことができた。
森の中に入ると長距離の結界が張れる魔導具が置かれた。魔導具の効果を試すために魔導具職人から預かったものだ。何とかギリギリで魔の森を覆うだけの結界は張れた。これによって地の妖精たちが結界の強度を高めることができた。
《 結界が張られたから、それにあわせて強化したの 》
地の妖精たちは最初の失敗から学び、何もない場所に結界を張ることも、張られた結界を強化することもできるようになった。泣いていた地の妖精たちは、自分たちのできることから始め、気付けば自ら結界を張れるようになった。ただし、大地や樹木など地の妖精たちの管轄内が発動の条件。もちろん結界の属性は地。それはほかの属性を持つ妖精たちまでが結界を張れることをも示していた。
水の妖精たちは大地や空気中の酸素を使って結界を張る。そのため、とても強固な結界が張れた。光の妖精は日中は張れるものの、夜や雨天では張れないことが判明したし、逆に暗の妖精は晴れていると結界が張れないことが判明した。
《 みんなが同じことをできると同調術も使えるんだよ 》
雨天で水と火の妖精が同調術で結界を張ると、雨が避けられる上に湿気も除湿される。雨に濡れた地面も乾燥される。これが水と地の妖精でも可能なのだ。そして結界を張る妖力も半分ですむ。それは強化にも範囲の拡大にも向けられる。
結界内に閉じ込められた魔物たちは結界を破って逃げられないため、私も魔導具を止めからダイバと共にアサガオ探し。
「やっぱり、濃い魔素を取り込んでるから……可愛げがな~い」
見つかったのは、伸ばした蔓で地面を叩いて周囲を威嚇しているアサガオたち。
《 叩いたらちっちゃくなるかな 》
《 エミリア、ほかにもアサガオあるよね? 》
「なにをする気?」
《 元に戻せないかなって 》
「ダイバ。アサガオは魔物化してないけど、この子たちに実験させてもいい?」
「ああ、森を枯らしたりしなければ大丈夫だ」
「だって」
妖精たちは魔素を取り込みすぎたアサガオから魔素を抜く方法を探していく。今回は魔素を取り込んだ植物がどう変化するのかを調査しにきたのだ。それによって、この魔の森でも植物が魔物化せずに育つことも可能になる。
《 危険だからって全部排除していたら森が消えちゃうもんね 》
そのため、妖精たちは森を回復させることを優先させようというのだった。問題は、ここユーグリア領の魔素溜まりが何でどこにあるのかがわかっていない。
「ユーグリアは元々隣の国で起きた魔物の氾濫も影響で滅びた。ああ、当時一度隣の国で鎮圧されたんだが、そのあとで第二・第三の魔物による集団逃走が起きたんだ。そのときにはユーグリア領内は全員がファウシスに避難したから被害はない」
ここで間引きをしている冒険者やダンジョン都市の討伐隊は、その廃都に魔物よけの魔導具が張られて寝ぐらにしている。そして彼らを相手に商人ギルドと鍛治職人が駐在しているそうだ。
私たちも調査のための拠点をその廃都に置くことになった。植物の研究、それは直接自分の目で確認しなくてはならないこと。繁殖域やその周辺がどのような場所になっていて、生育にどう影響しているのか。それがアサガオだけでなく、ほかの植物にも影響が起きているのか。
「魔素はいま空気の中にあるけど、それが植物に影響があるなら人にも影響する。私は『四人のお姉ちゃん』になるんだもんね。だから出来ることはしたい」
そういった私をダイバは黙って頭を撫でた。
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