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第十章
第552話
しおりを挟む木の精霊が閉じ込められている件について調査していた妖精たちが帰ってくるとそのまま報告会が始まった。
《 エミリアが閉じ込められた箱と一緒だった! 》
《 悪い女神の気が入ってた! 》
《 森の中を探したけど、名なしの女神はここにはいなかったよ 》
「つまり、アウミも女神もいないということだな」
《 シーズル、違う! 》
《 うん、違う 》
《 アウミと一緒にいるのは元・女神! 》
妖精たちが両手を腰にあてて頬を膨らませる。……何ともかわいい仕草だけど、妖精たちにとっては大事なことだ。
「シーズル、妖精たちも元は神だ。一緒にするから怒るんだ」
「あ、ああ。スマン」
《 わかればよろしい 》
シーズルが謝ったことで妖精たちが笑って許す。ただし、両手を腰にあててさらに胸を張っているが。
「……偉そうに」
《 だって偉いもん 》
「たしかに、妖精の方が精霊の次の立場だよね~」
《 えっへん 》
私がこの世界の序列を思い出して口にすると妖精たちは胸を張り、ダイバとシーズルは苦笑した。この後の展開を思い浮かべたのだろう、ピピンの様子を窺っている。
「はいはい。偉いと自負する妖精たちに仕事です。その木の精霊を連れてきなさい」
《 えええー! 》
《 見張りがいるんだよ! 》
「寝てるよ、全員。魔物も揃って夢の中」
リリンがさらっと衝撃発言をする。妖精たちが簡単な報告を終えてシーズルに胸を張っている間、隠しもせずに堂々と二人は作戦をたててサクッと実行に移した。ピピンが魔物用に強めた睡眠薬をリリンに渡して、リリンは触手を床へ伸ばした。その後の展開は聞かなくても簡単に思い浮かぶ。
《 魔物用って…… 》
「だあって。魚人でしょ、木の精霊でしょ。人間たちも深~く深~く、死なない程度まで深~く眠らせて……。アァァァッ! 騰蛇が持っていっちゃったあ」
リリンが眠らせた彼らを見張っていたのだろう。しかし騰蛇が地下へ連れて行ったそうだ。
そのままにしていたら、通りすがりの魔物に襲われかねない。それで騰蛇が保護したのだろう。
「ありゃりゃ。……まあ、私たちが手を出さなくてもいいってことよね」
「まあ、騰蛇の配慮だろ。俺たちがレインドルーブと対峙しなくていいようにってさ」
「あと、木の精霊が閉じ込められている箱を負荷なく壊してくれるんだと思う。……私のときは無理矢理開けたから地震起こしちゃったし」
ここは騰蛇が守護するダンジョン都市ではない。こんなところで地震を起こせば、広範囲で被害がでるだろう。この世界は地震が少ない。騰蛇のように地中にいる神獣たちの影響で揺れる程度だ。
「木の精霊だって、目が覚めたら驚くだろうし……。エリーさんみたいに精神体でほっつき歩いていたりして」
「「ありえるな」」
ダイバとシーズルがウンウンと頷くと、エリーさんの一件を知る妖精たちも腕を組んで目を閉じてウンウンと頷く。
「そ・れ・で。残るは魔物だけなんだけど……。戦争不参加のみんなにおまかせしたいな~、なんて言ってもいい?」
両手を組んでお願いすると、妖精たちが代わる代わる私の頭を撫でる。
《 仕方がないなあ 》
《 いいよ、エミリアは休んでて 》
「私たちが戦闘を指揮します」
妖精たちだけでなく、私たちの魂胆に気付いているピピンたちも魔物の討伐に向かってくれるようだ。
「言っとくけど、冒険者たちがけっこうな人数を倒されているからね。強いことを考慮してよ」
「「「はい」」」
《 まかせて! 》
返事をすると、獣化した白虎の背にスライムに戻ったピピンとリリンが飛び乗る。そして妖精たちは駆け出した白虎を追って宿舎から飛び出していった。
「……アイツらに『窓は出入り口ではない』と教えないといけないな」
みんなが窓から飛び出していったのをみてシーズルが呟く。
「ここにいる三人には無理でしょ。すでに窓から出入りしたもん」
私とダイバはファウシスに向かう際に庁舎の窓から。そしてダイバは、シーズルと共にこの窓から飛び込んできた。
「階段は飛び降りるものだよね」
これはアゴールがいつもやっていること。
「屋根は駆け回るもの、だと言ったな」
「屋根から飛び降りるのも日常だよね」
これらはダンジョン都市の住人たちによる日常だったりする。妖精たちは彼らをみて学んだのだ。
私とダイバの会話に都長のシーズルは頭を抱えて大きく息を吐いた。
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