私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十一章

第606話

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「それでエミリア。ナナシがどこに行ったかは分からないんだな?」

ダイバの言葉に私と女神は同時に頷く。他の大陸に行ったのは間違いないだろう。ただ……

「まだどこかに彼女の信者がいるかも知れないのよね」
「でも、『魅了の女神信仰』計画は失敗だったのよね? あのナナシは魅了の女神ではないから」
「ええ、信仰は結局よ。たとえ姉妹神であったとしても彼女に恩恵はないわ」

何をしているのだろうか。自分を信仰する人たちを死兵に変え、自分を信仰させるつもりだったパルクスの国民たちには恐怖を与えたせいで信仰してもらえず。

「アウミの話だと、封印が解かれないままでも弱まっていたことで直接手を出そうとしたようだな」
「なぜ知ってる……」
「涙石で見ていたのはエミリアの妖精だけではないからな。シエラたちはノーマンたちが歩いて帰ろうとしたことも全部知ってる」
「なんで知ってる……」
「妖精たちが泣きながら話したんだ。アイツらは繋がっているだろ? あっという間に全員に伝わって誰もが知ることになった」

妖精たちが私をひとりにしているのは、私の計画を妖精ネットワークで拡散されるのを防ぐため……

「以前と違って、エミリアのためならひとりで何でもやれるようになったからな」

ダイバが安心させるように優しく私の頭を撫でる。

「たまに家の中に妖精たちが入り込んでいるだろう? ピピンの話ではエミリアのテントの中までは入ってこないらしいが……妖精たちは用心に用心を重ねて、エミリアの世話をしているらしい。まあ、涙石に入るにはくらやみの妖精の協力が必要らしくてな。そっちの問題は大丈夫らしい」
「みんなエミリアを愛しているのね」
「目を離すと思い詰めて、今回みたいに家出するからな」
「家出じゃないもん」
「じゃあ、なんだ?」
「…………散歩」
「ほおおおう。それは長ああああああい散歩だったなあ?」

……ダイバの目が怖い。そりゃあ聖魔たちを残してひとりで飛び出したから怒ってる……

「みんな心配したんだぞ」
「……別に」
「『心配してくれと言っていない』とか言うんだったら怒るぞ」
「……もう怒ってる」
「……はあ……。エミリア、何をしようとかまわない。ただ、俺には言っていけ」
「止める」
「止めても行くだろうが」
「止められなくても行く」
「みんなが心配するから、黙って行くな。誰も止める気はない。ただ、俺を含めて一緒に行きたいとは思っている」
「女神とドンパチするよ」
「ノーマンの弔い合戦だろ? 覚悟は決まってる。ミリィもオヤジたちも、仲間を奪われた弔い合戦に参戦させてくれと言っている」

私には止める権限はない。みんな、ナナシに一発は殴りたいのだ。……たとえそれが生命をかける戦いになろうとしても……


コルスターナの湿地帯に到着した調査隊にアウミは気付かなかったが国王がいたのを知っていた。それとは別に、パルクスの城にも国王がいた。

「だから城に乗り込んだのか」
「敵国だから侵攻だもん」
「単身でな」

あの国王の影はうれいていた。しかし、影では何もできない。歯向かえば、待っているのは操り水による支配。
だから最後に『本当の国王』を演じてもらった。彼が国王として敗戦を受け入れて署名して処刑される。国王の影は国王代理として国王と同等の権限を持つ。ただのお留守番ではないのだ。

そのため、王都からルヴィアンカと宰相を引っ掴んでパルクスの王城に連れて行って敗戦処理をさせた。そして署名の1時間後に国王として公開処刑することで、本物の国王からすべての権限を奪うことができた。
それを知った臣下たちによって、国王たちは操り水を飲ませて自ら沼に沈むように仕向けられた。

「国王としての覚悟は影のほうが上だったな」
かれは事実上『パルクス国最後の国王』だよ」

悪名であったとしても、国王を演じてきた彼は最初で最後の表舞台に立てたのだ。

「ルヴィが彼の名誉のため、『敗戦目前に本物の国王は家族を連れて逃げ出し、影として残された男が国王として敗戦を受け入れて処刑された』って公表したよ」

そうすることで、捕まえた臣下たちは生き残っていた王族を殺した犯人として王城に戻して公開処刑した。

「今はまだ冷凍保存中」

外に放置しているため、絞首刑の状態で凍っているのだ。
春になって氷が溶けて……骨のカケラもすべて魔物の胃袋に入るだろう。そのために魔物よけの効果から外れた場所で公開処刑したのだから。
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