私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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後日談

第8話

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「エミリア! 火傷の塗り薬、余ってないか⁉︎」

表の世界にある冒険者ギルドに行っていたシジマが【夢のさと】に慌てて戻ってきた。錬金術をしているときは連絡が取れないため、こちらの世界でフーリたちが開いている食堂バラクルに飛び込んできたシジマは、運良くエミリアの姿を確認して慌てて駆け寄る。

「あるよ、数は少ないけど」
「どうした?」

いつもなら落ち着き払った言動の多いシジマの慌てっぷりに、その場に居合わせた全員が腰を浮かす。

「コウコクシ国内の迷宮から出てきた魔物が暴走してるらしい」

コウコクシ国と聞いて数人が納得したように小さく頷く。シジマの出身国なのだ。

「コミューンが動いて火傷の傷薬を求めてる」

コミューンが動くということはコウコクシ国内ではすでに手がないということ。

「治療師は?」
「いまは彼らが集結しているらしいが……」
「万能薬はどうした」
「…………焼け石に水、だ」
《 情報が足りん! すぐに『空魚ルティーヤ調査隊』に出動させる 》
《 急げ! 急げ! 》
「待って! 俺も行く!」

シジマが妖精たちを追いかけようとしたものの、その肩をオボロが後ろに引く。

「シジマは支援品を集めろ」
「しかしっ!」
「そんな興奮状態で冷静に判断できるか?」

オボロの言葉で我に返ったシジマは頭を左右に振ると、小さな声で「頼む」と肩に置かれたままのオボロの手を軽く叩く。

「まかせろ」
「まかされた」

オボロが肩を軽く叩いて出ていく。その後ろを続くアルマンやコルデがシジマに声をかけて肩を叩いていく。

「アゴール、ミズーリ草を採取とりに行くよ」
「うん、わかった」

エミリアに頷いてすぐに立ち上がる。

「エミリア。ミズーリ草を緊急依頼すればいいか?」
「鮮度重視で乱獲は禁止してね」
「わかった。上限を設定した数でコミューンを通して全世界に依頼をかける」

ミズーリ草は葉に透明なぬめりを持った薬草だ。その滑りが熱傷全体に効く薬の大事な素材となる。鮮度が落ちると効き目が悪くなり、ケロイドが残ってしまう。

「ケロイドは治療院に入院して半年は集中治療を受けないと治らないんだよ」
《 痛みと痒みが伴うからね 》

完治するまでは掻き毟らないよう、ベッドに手足を拘束する。再生中は痛痒く、分かっていてもみ無意識で掻きむしろうとする。壁やテーブルの足でも背をこすったりする。

《 再生中の皮膚は柔らかくて薄いからね。ちょっと動いただけでも、皮膚がめくれたりして傷口が開くんだ 》

その度に皮膚をのばして張り直したり、汚れて皮膚の再生が難しいようなら切り取り、またイチから再生治療を始めなくてはならない。痛みは眠らせていても無意識に動いてしまうため、拘束するしか方法がないのだ。

「かわいそう」などと言っていられない。早く回復するにはそれが一番の方法なのだから。でも、皮膚の再生が成功して固くなってきたら触っても大丈夫になる。

「ちょうど瘡蓋カサブタみたいになっているんだよ」

瘡蓋の下が回復していくように、そして回復すると瘡蓋が剥がれていくように。

《 全部剥がれても、まだ皮膚自体は弱いから 》

完全に傷口が塞がって、やっと退院できる。

《 エミリアの万能薬は時間のかかる治療を一瞬で治してくれるけどね。筋力の回復やリハビリは必要だから 》

ケロイドはできなくても神経が修復したなら回復までリハビリが必要となる。気道熱傷にを回復した場合、呼吸や嚥下の訓練が必要となる。それこそ、赤ん坊からやり直すのだ。

「そこの組織が『生まれたて』だからね。覚えさせるのに時間がかかるんだよ」

魔物の討伐はダイバたちに任せているものの、エミリアたちが途中まで魔物を駆除してきたダンジョンを通っているためダイバたちの出番はない。そのためエミリアや妖精たちからケロイドの治療に関して教授を受けていた。

「エミリアさーん! あった! これだよね!」

そこにアゴールがミズーリ草を見つけたと声をあげる。

「……へんだな」
「何が?」

エミリアの言葉にスレイが足を止めて周囲をうかがう。

「私たち、んだよ」

その言葉にアゴールが後方へと地面を蹴る。エミリアだけではない。ピピンやリリン、妖精たちがのだ。
2度の跳躍でエミリアの前に戻ったアゴールの胸の前には小刀が構えられている。

「あ、ああ。そっか」

そう呟いたエミリアが手を前に出すと、周囲に風が起きて渦を巻く。そして小さな爆発が立て続けに起きた。

《 花粉、だね 》
「幻覚症状を起こすタイプですね」

呑気に結果だけを話すくらやみの妖精とピピン。

チュンッ

あまり聞きなれない音がすると同時に天井から、アゴールがミズーリ草を見つけたという場所を光の玉が落とされる。

ボンッ

小さな爆発音と共に奇怪な音が耳をつんざく。それが魔物の断末魔の叫びだと気付くのに時間はかからなかった。
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