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第8部 残念姫の顛末
第382話 ユニーク“ヤイバ”
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のちに、アモンの異界での、ルト、フィオリナ、リウ、ウィフニアによるこのときのやり取りは、「踊る道化師」たちの知るところとなる。
各自がそれぞれの表現で酷評しているが、アキルによるものがいちばん的を得ていると思われる。
「誰も共感できない登場人物が、全員でへんなことをし続けていても退屈なだけだって。」
邪神ヴァルゴールほ、通常、他人のやることに文句など言わない。その彼女にそこまで、言わせたのだ。
リウはたぶん、その後の言動から見ると大いに反省はしたのだが、そのためにとった行動は、また別の問題を引き起こすことになる。
そして、ルトたちが「誰にも共感できない会話」で盛り上がっていた、ちょうどそのころ、アキルは。
凄まじい勢いで切り結ぶヤイバとオルガは、アキルには目で追うことすら難しかった。
硬い金属同士が撃ち合う音が、続いたあと、ヤイバとオルガ。互いがくぐもった呻きをあげた。
オルガは、肩と太ももに。
ヤイバは、右手を切り落とされて、それぞれ床に叩きつけられるように、倒れ込んだ。
同時に顔をあげ、オルガは、影槍と呼ばれる主に相手を精神から破壊する魔法をうち、それをヤイバの振るった衝撃波が打ち砕いた。
ヤイバのキズはその間にも白い煙
をあげて、侵食を続けていく。
剣技がほぼ互角ならば、人間と魔物。勝敗は明らかなはずだったが、オルガが肩の傷の血をぬぐうと、そのにはなめらかな肌があるだけだった。
ヤイバは、自らに剣をふるった。
オルガのデスサイズが与えた傷口をさらにえぐるように、切り取ったのだ。
なにかの毒かはたまた呪詛のたぐいか。傷が広がるのをふせぐための処置なのだろうが、蜘蛛の魔物にも苦痛がないわけはない。
ヤイバの顔が歪む。彼の創造主のギムリウスのような、瞳の分裂もない。まるきり、十代の少年にしか見えないその顔が苦痛に歪んだ。
「なるほど、これが“闇姫”オルガなのか。」
それでもヤイバは笑う。魔物の体に武人の心。ギムリウスが見たら歓喜しただろう。まさに、魔物をこえた魔物。
「いまのぼくの技では及ばない。ならば、こんな方法をとらせてもらう。」
ヤイバは走った。そのさきには。反応さえできないアキルの姿!
振り下ろしたヤイバの一撃を、オルガは弾き返した。大きくバランスをくずしたヤイバはよろけて。
その足がオルガの腹部に伸びた。
もともと複数の足をもつヤイバが、よろめいたふりをしたのはわざと、だった。
そして、ヤイバの蹴りは。
もともと剣としての能力が備わった彼の「脚」の一本だった。
オルガはかろうじて、反応した。それは、脊髄を両断する一撃を、かろうじて内蔵をむしられる程度におさえた。その程度。
アキルは。
目をとじている。
口元には笑いを浮かべて、ぶつぶつとなにかをつぶやいていた。
そうだ。そうでなければ、ゴウグレは呼べない。助けを求めるのではない。来てくれと頼むのでもない。
ヴァルゴール。ゴウグレの信奉した神として、アキルはいま、話しをしてる。
ヤイバは、倒れたオルガを踏み越えた。足をつかんだオルガの指がぽろぽろと落ちる。普通の足にみえてもそれは、“剣のユニーク”ヤイバの脚だ。
アキルは反応しない。
ドロシーが、氷の礫をうった。
ヤイバの左手が一閃。いくつかは、はねのけられ、いくつかはヤイバの顔や肩口に当たる。人間ならば昏倒させられる。だが、ヤイバは魔物だ。
ドロシーの魔法は、拳は。対人を基準にしたものだ。魔物を相手にしては出力が不足する。
場数を踏んだベテランならば、咄嗟に別の方法で戦うだろう。
天才、と言われる才能の持ち主ならば、経験をカンでカバーして来るかもしれない。
だが、ドロシーはさまざまな点で非凡ではあったが、決して、こと闘いにおいては天才ではなかった。
勝手の違う相手の対応に、ドロシーの反応はわずかに遅れた。袈裟懸けの一撃は、ギムリウスの糸のスーツがなければドロシーを即死させていただろう。
ギムリウスの糸のスーツは、強力な防具ではあるが、竜鱗のように万能ではない。
ドロシーの体は真っ二つになるのは、避けられた。
だが、打撃となって、彼女を打ち倒すには十分だった。
侍女の服は、大きく切断され、彼女の胸元から腰が露わになっていた・・・・ヤイバは、動きを止めた。
「これはギムリウス様の糸で作られたボディスーツ・・・」
ヤイバは、考え込んだ。
「この者たちは、確かに主上の知己なのだ。しかもこのドロシーは特別な加護を受けている。」
オルガが、炎の矢を放った。
振り向きもせずに、ヤイバは左手を振った。
生まれた衝撃は、炎の矢をかき消し、オルガの体を反対側の壁まで吹き飛ばした。
「あの闇姫オルガはしぶとい。殺し切るには手間がかかる。」
それでも傷を回復しながら、起きあがろうとするオルガをもう一度、衝撃波で壁に埋もれさせてから、ヤイバは振り向いた。
「こちらのドロシーは、主上の特別な加護があるのならば、命まで奪うのは良くない。
つまり。」
アキルは半眼に目を開いたまま、誰ともわからないものと会話を続けている。
「真に危険を感じるこの少女一人の命を奪えばそれで事足りることになる。」
各自がそれぞれの表現で酷評しているが、アキルによるものがいちばん的を得ていると思われる。
「誰も共感できない登場人物が、全員でへんなことをし続けていても退屈なだけだって。」
邪神ヴァルゴールほ、通常、他人のやることに文句など言わない。その彼女にそこまで、言わせたのだ。
リウはたぶん、その後の言動から見ると大いに反省はしたのだが、そのためにとった行動は、また別の問題を引き起こすことになる。
そして、ルトたちが「誰にも共感できない会話」で盛り上がっていた、ちょうどそのころ、アキルは。
凄まじい勢いで切り結ぶヤイバとオルガは、アキルには目で追うことすら難しかった。
硬い金属同士が撃ち合う音が、続いたあと、ヤイバとオルガ。互いがくぐもった呻きをあげた。
オルガは、肩と太ももに。
ヤイバは、右手を切り落とされて、それぞれ床に叩きつけられるように、倒れ込んだ。
同時に顔をあげ、オルガは、影槍と呼ばれる主に相手を精神から破壊する魔法をうち、それをヤイバの振るった衝撃波が打ち砕いた。
ヤイバのキズはその間にも白い煙
をあげて、侵食を続けていく。
剣技がほぼ互角ならば、人間と魔物。勝敗は明らかなはずだったが、オルガが肩の傷の血をぬぐうと、そのにはなめらかな肌があるだけだった。
ヤイバは、自らに剣をふるった。
オルガのデスサイズが与えた傷口をさらにえぐるように、切り取ったのだ。
なにかの毒かはたまた呪詛のたぐいか。傷が広がるのをふせぐための処置なのだろうが、蜘蛛の魔物にも苦痛がないわけはない。
ヤイバの顔が歪む。彼の創造主のギムリウスのような、瞳の分裂もない。まるきり、十代の少年にしか見えないその顔が苦痛に歪んだ。
「なるほど、これが“闇姫”オルガなのか。」
それでもヤイバは笑う。魔物の体に武人の心。ギムリウスが見たら歓喜しただろう。まさに、魔物をこえた魔物。
「いまのぼくの技では及ばない。ならば、こんな方法をとらせてもらう。」
ヤイバは走った。そのさきには。反応さえできないアキルの姿!
振り下ろしたヤイバの一撃を、オルガは弾き返した。大きくバランスをくずしたヤイバはよろけて。
その足がオルガの腹部に伸びた。
もともと複数の足をもつヤイバが、よろめいたふりをしたのはわざと、だった。
そして、ヤイバの蹴りは。
もともと剣としての能力が備わった彼の「脚」の一本だった。
オルガはかろうじて、反応した。それは、脊髄を両断する一撃を、かろうじて内蔵をむしられる程度におさえた。その程度。
アキルは。
目をとじている。
口元には笑いを浮かべて、ぶつぶつとなにかをつぶやいていた。
そうだ。そうでなければ、ゴウグレは呼べない。助けを求めるのではない。来てくれと頼むのでもない。
ヴァルゴール。ゴウグレの信奉した神として、アキルはいま、話しをしてる。
ヤイバは、倒れたオルガを踏み越えた。足をつかんだオルガの指がぽろぽろと落ちる。普通の足にみえてもそれは、“剣のユニーク”ヤイバの脚だ。
アキルは反応しない。
ドロシーが、氷の礫をうった。
ヤイバの左手が一閃。いくつかは、はねのけられ、いくつかはヤイバの顔や肩口に当たる。人間ならば昏倒させられる。だが、ヤイバは魔物だ。
ドロシーの魔法は、拳は。対人を基準にしたものだ。魔物を相手にしては出力が不足する。
場数を踏んだベテランならば、咄嗟に別の方法で戦うだろう。
天才、と言われる才能の持ち主ならば、経験をカンでカバーして来るかもしれない。
だが、ドロシーはさまざまな点で非凡ではあったが、決して、こと闘いにおいては天才ではなかった。
勝手の違う相手の対応に、ドロシーの反応はわずかに遅れた。袈裟懸けの一撃は、ギムリウスの糸のスーツがなければドロシーを即死させていただろう。
ギムリウスの糸のスーツは、強力な防具ではあるが、竜鱗のように万能ではない。
ドロシーの体は真っ二つになるのは、避けられた。
だが、打撃となって、彼女を打ち倒すには十分だった。
侍女の服は、大きく切断され、彼女の胸元から腰が露わになっていた・・・・ヤイバは、動きを止めた。
「これはギムリウス様の糸で作られたボディスーツ・・・」
ヤイバは、考え込んだ。
「この者たちは、確かに主上の知己なのだ。しかもこのドロシーは特別な加護を受けている。」
オルガが、炎の矢を放った。
振り向きもせずに、ヤイバは左手を振った。
生まれた衝撃は、炎の矢をかき消し、オルガの体を反対側の壁まで吹き飛ばした。
「あの闇姫オルガはしぶとい。殺し切るには手間がかかる。」
それでも傷を回復しながら、起きあがろうとするオルガをもう一度、衝撃波で壁に埋もれさせてから、ヤイバは振り向いた。
「こちらのドロシーは、主上の特別な加護があるのならば、命まで奪うのは良くない。
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