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エピローグとプロローグ
道化師たちの密会2
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人気のカフェの昼下がり。
まさか、魔王とその后候補、その后候補の婚約者、隣の邪神さまのご一行とも知らないミトラミュゼの店員が、巨大な器にアイスクリームを幾つも浮かべて、緑色の液体を運んできた。
液体からは、ふつふつと泡が生まれては消え、まるでその奥になにかの生き物でも潜んでいるようだった。
そこから、ストローが二本出ているので、辛うじて飲み物だと分かる、という代物だった。
「クリームソーダだ。」
と、アキルはその飲み物を看破した。この世界で緑色の炭酸水にアイスクリームを浮かべた飲み物を見るのは初めてだったが、それはそう、称するしかない。
古の魔王と、その后候補は、かおをつきあわせるようにして、なかよくその飲み物をチューチューしていた。
「すごいな、ルトくん。」
「なにが?」
「すごい力をもってて、しかもこれだけの美形なのに、こいつらが普通のバカカップルに見える。」
続いて、コーヒーとパンケーキが運ばれてきた。
「ご注文のパンケーキセットです。」
店員が言ったが、アキルはその三段重ねの生地の厚さに、しばし呆然とした。
「失礼ですが、クローディア陛下の家中のかたですよね。」
と、店員が言った。
「パン生地柔らかめの蜂蜜まし、生クリームまし、アイスクリームまし、フルーツまし。となっております。」
なにかのサービスのつもりなら勘弁して欲しい、とルトは思った。
巨大なパンケーキは、アイスクリームや、生クリーム、カットされた果実に埋め尽くされて生地も見えなくなっていた。
「とりあえず、ナイフとフォークを入れてみよう。」
ルトが冷静に言った。
「パンケーキなら、どこかにパンケーキが隠れているはずだ。」
コーヒーは、アキルのキオクにある通り、真っ黒な香ばしい液体で、大きなマグカップのそこに、どろりと溜まっている。
アキルはそこに、砂糖を溶かし、さらにミルクをそそ出てルトに差し出した。
ルトはおそるおそる一口飲んでから、破顔した。
「うん。美味しい。」
「よかった!」
アキルも記憶にあるコーヒーと、ほぼ同じような飲み物にほっとした。
「そっちはそっちで、バカカップルじゃないの。」
ストローを咥えてぶくぶくしながら、フィオリナが言った。
「アライアス侯爵のお屋敷では、部屋は別々に、とってもらってる。」
と、ルトは言った。
「ぼくは、親父殿たちの結婚式の準備がある。ガルフィート伯爵によれば、まだエステル伯爵の親族が相続するのか、クローディアの持ち物になるのか揉めている土地があるらしい。
もっもと、それはポーズだけだ。オールべがなんとかならない限り、たいした産業もなく、整備も整っていない地域だから、実際にはゴネて、幾ばくかの礼金をせしめようとしているんだろう。」
「そいつらの首でもとってくるんなら手伝うけど?」
「それが必要なら鉄道公社が動くだろうとお思うよ。」
単純に優しい「だけ」ではない、ルトはずるそうに笑った。
「こちらが実力行使しなくても、ほどほどのところで落ち着くよ。あとあと、エステル伯爵のご親族が余計な口出しをでかないように、よく釘をさしておかなきとね。」
「で? その鉄道公社との契約はまとまったのか?」
リウが尋ねた。少なくともこちらは、為政者としての知識と経験がある。
冷徹な為政者の顔で、ストローをぶくぶくするでない!
「基本的には変えない。ただし、オールべの治安維持については、保安局に一任する。冒険者ギルドも商工会も解体だ。
エステル伯爵の不正に便乗して、甘い汁をすっていた連中だからな。」
「なにもかも鉄道公社の意向ばっかり通ってるみたいで面白くない。」
と、フィオリナ。せっかく真面目な話をしているのに、特大のクリームソーダを、ひとつのカップから二人でチューチューしてるので、気をそがれることおびただしい。
「細則は、親父殿とドロシーが打ち合わせ中だ。」
ルトは、クリームに塗れたパン生地を口に運んだ。周りが甘い分、生地の甘さは抑えられている。
アキルと、アイコンタクトすると、うん、これなら食べられる、とアキルは頷いた。
「ドロシーは、リウと行く気になってるの?」
「悩んでる。」
ルトは言った。
「でもまだ日はあるし、マシューと話をしてからでないと結論は出せない、ということで、昨日から親父殿のいる別宅に泊まり込みだ。」
「いい部下が出来たじゃない。あれを手放すたは正直ないと思うなあ。」
「仮にドロシーが、遠征を拒んでも、おまえは連れていかないぞ。」
リウは釘を指した。
ルトがへらへらしてるのを見て、いやな顔をする。
「信用されていないのか?
オレは連れた行かないと言ったら連れて行かない。」
「まあ、そうなのかな?
でもフィオリナが勝手についてくる分には…」
「そんなことはさせない!」
「いま、まさにその相談をしていたのでは?」
「フィオリナが勝手に言ってるだけだ。」
フィオリナの手が翻った。
コップ(これは普通サイズ)の水が、リウの胸元を濡らした。
「勝手なんてひどいっ!
あなたと一緒にいたくて、ついて行くって言ってるのに!」
「どこかで、お洋服を乾かしましょうは、却下だぞ、フィオリナ。」
リウは水をしたたらせながら言った。
「いずれにしても、ルトがもう少し成長するのを待て。オレがおまえ娶るにしても、いまのままでは、幼子から母親を取り上げるような気がしてな。」
まさか、魔王とその后候補、その后候補の婚約者、隣の邪神さまのご一行とも知らないミトラミュゼの店員が、巨大な器にアイスクリームを幾つも浮かべて、緑色の液体を運んできた。
液体からは、ふつふつと泡が生まれては消え、まるでその奥になにかの生き物でも潜んでいるようだった。
そこから、ストローが二本出ているので、辛うじて飲み物だと分かる、という代物だった。
「クリームソーダだ。」
と、アキルはその飲み物を看破した。この世界で緑色の炭酸水にアイスクリームを浮かべた飲み物を見るのは初めてだったが、それはそう、称するしかない。
古の魔王と、その后候補は、かおをつきあわせるようにして、なかよくその飲み物をチューチューしていた。
「すごいな、ルトくん。」
「なにが?」
「すごい力をもってて、しかもこれだけの美形なのに、こいつらが普通のバカカップルに見える。」
続いて、コーヒーとパンケーキが運ばれてきた。
「ご注文のパンケーキセットです。」
店員が言ったが、アキルはその三段重ねの生地の厚さに、しばし呆然とした。
「失礼ですが、クローディア陛下の家中のかたですよね。」
と、店員が言った。
「パン生地柔らかめの蜂蜜まし、生クリームまし、アイスクリームまし、フルーツまし。となっております。」
なにかのサービスのつもりなら勘弁して欲しい、とルトは思った。
巨大なパンケーキは、アイスクリームや、生クリーム、カットされた果実に埋め尽くされて生地も見えなくなっていた。
「とりあえず、ナイフとフォークを入れてみよう。」
ルトが冷静に言った。
「パンケーキなら、どこかにパンケーキが隠れているはずだ。」
コーヒーは、アキルのキオクにある通り、真っ黒な香ばしい液体で、大きなマグカップのそこに、どろりと溜まっている。
アキルはそこに、砂糖を溶かし、さらにミルクをそそ出てルトに差し出した。
ルトはおそるおそる一口飲んでから、破顔した。
「うん。美味しい。」
「よかった!」
アキルも記憶にあるコーヒーと、ほぼ同じような飲み物にほっとした。
「そっちはそっちで、バカカップルじゃないの。」
ストローを咥えてぶくぶくしながら、フィオリナが言った。
「アライアス侯爵のお屋敷では、部屋は別々に、とってもらってる。」
と、ルトは言った。
「ぼくは、親父殿たちの結婚式の準備がある。ガルフィート伯爵によれば、まだエステル伯爵の親族が相続するのか、クローディアの持ち物になるのか揉めている土地があるらしい。
もっもと、それはポーズだけだ。オールべがなんとかならない限り、たいした産業もなく、整備も整っていない地域だから、実際にはゴネて、幾ばくかの礼金をせしめようとしているんだろう。」
「そいつらの首でもとってくるんなら手伝うけど?」
「それが必要なら鉄道公社が動くだろうとお思うよ。」
単純に優しい「だけ」ではない、ルトはずるそうに笑った。
「こちらが実力行使しなくても、ほどほどのところで落ち着くよ。あとあと、エステル伯爵のご親族が余計な口出しをでかないように、よく釘をさしておかなきとね。」
「で? その鉄道公社との契約はまとまったのか?」
リウが尋ねた。少なくともこちらは、為政者としての知識と経験がある。
冷徹な為政者の顔で、ストローをぶくぶくするでない!
「基本的には変えない。ただし、オールべの治安維持については、保安局に一任する。冒険者ギルドも商工会も解体だ。
エステル伯爵の不正に便乗して、甘い汁をすっていた連中だからな。」
「なにもかも鉄道公社の意向ばっかり通ってるみたいで面白くない。」
と、フィオリナ。せっかく真面目な話をしているのに、特大のクリームソーダを、ひとつのカップから二人でチューチューしてるので、気をそがれることおびただしい。
「細則は、親父殿とドロシーが打ち合わせ中だ。」
ルトは、クリームに塗れたパン生地を口に運んだ。周りが甘い分、生地の甘さは抑えられている。
アキルと、アイコンタクトすると、うん、これなら食べられる、とアキルは頷いた。
「ドロシーは、リウと行く気になってるの?」
「悩んでる。」
ルトは言った。
「でもまだ日はあるし、マシューと話をしてからでないと結論は出せない、ということで、昨日から親父殿のいる別宅に泊まり込みだ。」
「いい部下が出来たじゃない。あれを手放すたは正直ないと思うなあ。」
「仮にドロシーが、遠征を拒んでも、おまえは連れていかないぞ。」
リウは釘を指した。
ルトがへらへらしてるのを見て、いやな顔をする。
「信用されていないのか?
オレは連れた行かないと言ったら連れて行かない。」
「まあ、そうなのかな?
でもフィオリナが勝手についてくる分には…」
「そんなことはさせない!」
「いま、まさにその相談をしていたのでは?」
「フィオリナが勝手に言ってるだけだ。」
フィオリナの手が翻った。
コップ(これは普通サイズ)の水が、リウの胸元を濡らした。
「勝手なんてひどいっ!
あなたと一緒にいたくて、ついて行くって言ってるのに!」
「どこかで、お洋服を乾かしましょうは、却下だぞ、フィオリナ。」
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