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異世界

頭の中

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「と、とにかく。蜜蝋で保湿バームを作りますね」

 私は嬉しさの余り飛び跳ねる勢いでルーペリオさんの両手を握っていた。それがだんだん恥ずかしくなって来て、慌てて手を離し視線を逸らして蜜蝋を湯煎にかける。
 溶けたら植物系のオイルを混ぜる。今回マーサちゃんにお薦めされた3種類のブレンドオイルだ。石鹸や料理にも使われていてとても安全な物らしいが如何やら植物系の魔物から取れるオイルらしく、私は怖くて多くを聞くのをやめた。
 真剣な表情で見ているルーペリオさんに作業はこれだけだと言いにくい。
 私はルーペリオさんの様子を恐る恐る伺う。

「…取り敢えず、ガラスの容器に移し入れて冷えて固まれば終わりです…」

「とても簡単ですが、ここはやはり混ぜる分量などが大切なのでしょう」

「…ま、まぁ、そうですかね?」

「容器はやはりガラスが良いのでしょうか?」

「あ、いえ。これはアルミ缶…ってあるんですかね?金属でも大丈夫です。ただ、そう言うのを見かけた事がなくて」

「では、工房を頼んでみますか?」

「金属加工の工房ですか!?」

 ルーペリオさんはまたニッコリ笑って頷く。
 私はまた飛び跳ねる勢いでルーペリオさんの両手を握っていたが、今はそれどころではない。もしかしたら、これは…頼んでみたらいけるのかもしれない。

「じ、実は前から欲しかった物があって!」

「どう言った物なのでしょう?」

「蒸留器が欲しいんです」

「蒸留器…と言うものは金属で出来ているのですね?」

「はい、ガラスでも大丈夫ですが…」

「なるほど。では話しをつけておきます。明日工房にお連れ出来るかと思いますので、その蒸留器とやらのご説明をして頂ければと思います」

「よろしくお願いします!」

 宿に着いたら、職人さん達に蒸留器を作ってもらうためにも簡単な図解を用意しよう。
 その他にもバームが入れやすい平たい容器も欲しいし、蒸留するのだから瓶も遮光性のある物を用意しなければ…一緒に出るフローラルウォーターも無駄にしたくないから、化粧水用の瓶も欲しい。…と言ってもポンプもスプレーも原理が全く分からないから作ることは出来ないし…取り敢えずはポーションと同じくコルクでいいか。
 後々、ゴムや樹脂の加工も考えないとなぁ…。

 …って、あ!その前にお花が必要だ!
 こんな事ならリンドを予めドライフラワーにしておくんだったな…。
 取り敢えず香りは足りないかも知れないけど我慢して、今回は生花で挑戦するしかない。帰りにお花屋さんに寄って行こう。
 もう、夏本番だし!他にもいい香りのお花があれば、ドライフラワーにしておくのもアリだよね。


 …それから、蒸留器の他のものも作ってもらえるかな…?
 まだまだ欲しいものがたくさんあるんだよなぁ。スナップボタンとか金型、ピンセットやニッパー、ペンチも欲しいし、あー、ファスナーは流石に難しいかな…?
 実物を見れば分かるかな…?確か、こっちに来た時に着ていたパーカーがファスナーだったはず。試しに明日持って行ってみよう。

 ガラスの加工も出来るならガラス玉って無いのかなぁ…。あ、でも…冒険者の人が身につけるなら割れやすくてダメか。
 そしたらやっぱり樹脂だよね…流石の私もビーズから作ったことはないよ…。

 って事はアクセサリーはまだまだ先の話になりそうだよね。
 明日からは取り敢えず、精油作り。それと並行して化粧品やシャンプーやリンス。
 あ、今日中に市場にも行っておこう。りんごに似た物があれば良いけど。

 それから、ルーペリオさんの優秀さだったらビールの醸造所とか行けないかな…?何とか説得して醸造途中のビール貰えないかな…?
 
 ふふふ、楽しみになって来た!

「あ、ノア…痛いよッ!」

 浮かれすぎているのを嗜めるかのようにノアがザラリとした舌で私の頬を舐めた。
 
 
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