神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

人材集め

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「…リーン様」

「おはようございます」

 起きて早々にレスターが視界に映り挨拶をする。リーンに挨拶を返されたレスターは何かに驚き固まっていて、いつもの彼からは想像できない表情に小首を傾げる。
 それと同時にいつもと違う視界の広さと自分が発した筈の声が低く感じて、何事かと意外にも冷静に室内を見渡す。

「…其方のパターンでしたか。…確かに、そのお姿の方が今後とても円滑に進むと思います。直ぐにお召し物をご用意致しますので今は私物で申し訳ありませんが、此方をお召しください」

 そう言って、何故か素裸になっているリーンに手に持っていた上着を肩に掛けてくれる。
 そこで気がつく。こんなおかしな事があるだろうか、と。
 昨日までは幼女で今日からは成人男性になっているなんて事が幾ら異世界だからと言ってあり得るのだろうか。体格から性別もまで何かもかもが変わっているのだ。
 声は低くなり、喉にゴロゴロとした違和感を感じる。胸板は女性のそれとは違い厚く筋肉が発達している。視界に入る手も掛布団からはみ出した足も比較にならないほど大きくなっている。レスターが肩にかけてくれた上着すら袖丈、裾丈が足りないようでレスターよりも上背が高くなっている事を示している。

 姿が変わったとこでいい意味でも悪い意味でも今までの生活とは一変した。
 誰にも抱っこされず1人で歩き回れるし、椅子の上に異様に分厚くされたクッションは無いし、大きなステーキを自分で切り分けられる。視界も広がって今まで目につかなかった物が見えるようになった。
 まだその高さに慣れず頭をぶつけたり、足をぶつけたりもするが。そんな事よりも兎に角お手洗いが大変だった。一体どうやっているのだろうか。…もうこればかりは早急に何とかしなければ…、思ったほどだ。
 暫くすると、レスターとイアンが大量の衣服をリーンの部屋に持ち込んでされるがままに身支度を整えられる。当たり前だが、かなり装飾の凝った立派な作りで初めはどうなる事かと不安だったが、それがまた何とも似合っている。
 リーンの時同様、思わず自身が見惚れてしまうほどの綺麗に整った顔立ち。白銀の光る髪に透ける青空のような瞳。スラっと高い上背に程よい筋肉。
 これなら余程なことがない限り、どんな服でも着こなしてしまうだろう。
 それは兎も角、正装は着方が想像も付かない。ドレスも相当着るのが大変だったが、此方も中々に大変そうだ。
 
 勿論その間イアンは入り口近くの壁に背中を預けて、不思議そうに着替えを見ているだけだった。自分ですら不思議なのに他人からすれば余計に不思議だろう。

「なぁ、リーンって言うのは女の名前だろ?これから何て呼ぶんだ?」

 イアンの指摘に今更ながら納得する。確かに最もで素直な質問だった。
 そんなイアンの質問に対してリーンは何の疑問もなく答える。

「ハルトと呼んで下さい」

「…ハルト…様ですか」

「ほい。ハルトな!」

 普通ならこの状況で誰もが冷静でいられるわけがない。それはリーンも例外では無かった。ただ顔に出ない事のお陰か、レスター達に何か問い詰められる事もなかった。此処は一旦自身の無表情に感謝して、また呑気に慣れるまで気長に待とう、と思い至る。
 

 その後、レスターに着替えさせられて早速向かったのは屋敷の剪定だ。

「「「「「……」」」」」

「…ハルト様。此方です」

「…此処にしましょう」

 全くもって落ち着かない。周りからの視線が凄いのだ。案内をしてくれている男性も流石にたじろいでいる。静かに行動する予定だったのだが、これでは少々どころではない迷惑を掛けているので少々の予定変更が必要のようだ。

(予想通りだ…)

 レスターは心の中でそう呟く。
 どう見ても貴族然としたリーン。その容姿然り、出立ち然り、豪華に着飾っても負けない出立ち、見るものの視線を自然に攫っていく。

 リーン達3人の目の前には、想定していたよりも少々豪華な屋敷。周りには人だかり。
 初めは2、3人だった。それから徐々に人数を増やしていき、レスターが絞り込んだ5軒のうち3軒回った所で後ろから付いてくる人達が増えすぎて前後左右何処にも進めない状態になってしまった。
 初めのうちはイアンが威嚇し、追い払う事が出来たのだが、今はそれすら効かない状態だ。
 幸い、この屋敷は予算内に収まる様なので豪華さは気にしない事にする。今は何よりもこの人だかりから解放されたい一心だった。

 リーンの即決に案内人も安心したようでゆっくりと館内を歩いて説明してくれた。

 この屋敷は元々ダーナロでそれなりに有名な商家の物だったようだ。比較新しい建物で室内もとても綺麗だった。家具もそのまま使えるようで、家具1つ1つの品の良さはさすが商家と言える。

 入って直ぐの大広間。左右に上へ続く広い階段。目の前は食事が出来そうな広間。左の階段脇には使用人達の部屋。その2階にはお客様を迎える為の客間や応接室などの部屋が並び、広間の上に当たるスペースには大規模なホール。反対に右の階段の脇には倉庫や物置と更に馬屋や温室に続く廊下。2階には執務室と続きになっているベットルーム。本棚が並んだ書斎や休憩室などの部屋があり、とても日当たりがいい。使用人部屋40室とその他諸々含めて60室以上の部屋がある。
 予定よりも大きい屋敷だが文句は無い。


 そんなこんなで引っ越しが完了し、1週間程経った頃。相変わらず屋敷の前にチラホラ人が集まっている。
 初めのうちは追い払っていたのだが、屋敷に勤めたい。何処で募集しているのか。と言う質問から、肖像画を書かせて欲しいと、どうでもいい内容や家族構成や恋人の有無などの個人情報。商家や貴族からの使者やら、厄介な客が多くレスターもかなり手を焼いていた。
 人だかりの内訳が良く分かったのは良かったのだが、手が回らず放置になっていた。

「おはよう。今日もお仕事お願いしますね」

「「「はい!!!」」」

 朝食が済み、声をかけて席を立つリーンに元気な声で返事するのは可愛らしい少年3人。
 彼らは先日路地裏にいた子供達でイアンに“自由にしていい”と言うと少年3人と少女2人を連れて帰ってきた。彼らを養うつもりでいたのだが、仕事が欲しいと懇願した為、雇うという形で屋敷に置く事になった。
 彼らは本当によく働く。そして約束もしっかり守ってくれた。
 リーダーをしていた責任感の強い少年はカール12歳、真面目で気の強い少女ラテ11歳、控え目な性格でもじもじしている少年ストック8歳、自然に褒め殺してくる少年キール8歳、いつもうるうる泣き出しそうなモニカ4歳。因みにカールとキールは兄弟だ。


 リーンは廊下の窓から門前を見下ろす。

「レスター。明日からの面接準備は整ってますか?」

「はい、ラテに頼んで本日全て配達出来たようです」

 日に日に増えてくる人や手紙や贈り物。中には危険な物もあったと聞き、片付けることにしたのだ。
 圧倒的に雇って欲しいと言う話が多いようで、もう使用人はほぼ必要無いのだが、他に必要な人材がいる。

 この国に足を踏み入れた時にレスターが言った通りハロルドの話す話と此処は全然印象が違う。露店は大変賑わっていたが、それは大通りに面した一角だけで、しかも彼らはダーナロの国民ではなく観光客目当ての他国の商人達だ。大通以外はシャッター通りのようになっていて人通りも少ない。お昼時に混みそうな食堂でも客も従業員もやつれた表情でまた逆も然り。更にはパンや塩などの食料品やちょっとした生活必需品の物価の高さ。建物の多さに比べて明らかに少ない住人達。そして何処の店を探しても見つからないポーション。
 この街で何か起こっているか、と思ってしまうのは仕方がない事だ。
 とにかく、今は生活の潤いを取り戻す為に…特にトイレを作り出す為に人材を集める事が先決だ。

「あの方が来てくだされば良いのですが…」

「そうですね。あの方は少々厳しいかも知れません。リー…ハルト様の話だけでも聞いてくだされば問題ないのですが」

「呼びにくければリーンでも良いですよ。子供達にはリーンハルトと言う名で通ってますから」

「はい、申し訳ありません」

「何人の方が来てくださるか。楽しみです」

 横で慣れた手つきでお茶を淹れてくれるレスターを見ながらリーンは呟く。


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