神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

正体不明

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「「「「「おかえりなさいませ」」」」」

 時間を知っていたのだろうか、レスターが連絡していたのだろうか、使用人達はリーン達の帰りを出迎えてくれた。
 揃いも揃っていつもの顔ぶれに意外にも安心感を覚えた。アンティメイティアも混ざっているが、飛びかかってこない所を見ると留守中に大きな問題はなかったようだ。

「ただいま」

「お部屋で休まれますか?」

「報告を先に聞きます。軽い昼食も用意して下さい」

「かしこまりました」

 ミモザはリーンの上着を預かりながら、頭を下げて後ろに下がった。全部用意済み、と言う事なのだろう。
 屋敷には昼過ぎに到着した。
 程よく疲れてはいるが中々快適な旅だったと思う。それもこれも全て職人達のお陰なのだから、感謝の言葉しかない。

「報告します。罰の執行は滞りなく終わりました。退職志願者は3名でした。条件の受け入れと新たな契約も完了しております。それから、ハルト様の留守中にミナモ伯爵家の方がまたいらっしゃいまして、此方を置いていかれました」

 給料の3分の2を没収する減給罰。普通の貴族家なら命があればいい方だと聞いていたので割と優しいものだと思う。割と過激な世界だなぁ、と呑気なリーンは正直罰はどうでも良かったのだが、雰囲気が災厄だったので、罰があった方が切り替えやすいだろうと考えた。内容はレスターが考えたので関与はしていない。

 それからキリもいいので条件の変更も追加で契約書に織り込んだ。というのも商会はもう手放す事にした。後継は本店をソマリエ伯爵家に、支店の方は今親交のある其々の土地の領主ガーデンシュタール子爵やランドマーク侯爵、トラリア男爵に任せ、その他は纏めてポートガス男爵家に売り渡した。
 元々ここロビティーはソマリエ伯爵家の領地。幾ら閉店するにしても適当に売るわけにもいかず、申し出てくれたソマリエ夫人達には感謝しかない。
 ソマリエ家はとても物静かな家で争いを好まず、ひっそり穏やかな雰囲気だ。何処にも角を立たないやり方はソマリエ家ならではの対応なのだ。
 ダーナロ王国第2の都市なだけあってロビティーの領主は忙しいだろうし、リーンの行動にも物申したい事もあっただろうが、ロビティーにいる間の事は目を瞑ってくれたのでとても助かった。

「成程。ミナモ伯爵の御子息をお連れして下さい」

「かしこまりました」

 仕込みは終わっている。
 後は元王妃様とランドマーク侯爵家、ソマリエ伯爵家、ガーデンシュタール子爵家が動き出すだけだ。きっとリーン達が王都へ行った事も知っているのでそれが合図になっただろう。

「ミナモ伯爵家の御子息からは何と…」

「お読みなりますか?」

「宜しければ」

 差し出された封の切られた手紙を受け取り、中身を取り出す。警戒していた相手からの手紙なのだからレスターからすればリーンが会うことを決めたその内容が気になって仕方がない。
 リーンに出会う前は自身は有能だと自信を持っていたレスターにとってこういった事態に対応しきれない自分の無能さに嫌気がさしている。
 ただリーンの為に、と思う気持ちだけでは空回りしてしまう事の方が多いし、リーンも説明が足りない人なので如何にもこうにも行かない事の方が多い。

「では、協力を申し込むのですか?」

「これだけ知られているのなら一層のこと引き入れた方が楽かと思いまして」

「確かにそうかも知れませんが…」

「私にはレスターが居るので問題ありません」

「…勿体ないお言葉です」

 レスターは心でも読んでいるのだろうか、と時より思う事があった。今みたいに落ち込む場面は何度もあったが、その度に欲しい言葉をくれるリーン。
 リーン自身がそう言う世辞を言うタイプの人間ではないので本当にそう思ってくれているのも伝わってくる。

「そういえば、ペンのお礼を申し上げておりませんでした。大切に使わせていただきます」

「気に入って下さったのなら嬉しいです」

 笑い合う2人の雰囲気はとても良い。
 ただどういう風に見ればいいのか分からない、という事だけは普段言葉を交わさないイアンもミモザもそこだけは意見が一致している。主従の信頼関係だけなのか、それとも愛や恋などの名前が付くものなのか、はたまた親類関係に等しいものなのか。

ーーコンコン

「早かったですね」

「何処にいようとも何をしていようとも直ぐに参る準備をしておりましたので」

 挨拶もそこそこに懐っこい彼はとても嬉しそうに返事をした。大陸が違えば文化も違うだろう事から特に誰も突っ込まないが、初対面の相手に対しての表情ではない。
 特に貴族なら足元を掬われないように、そう言う事にはより慎重になる筈だ。が、彼はそのままでリーンに促されるままソファに座った。

「ご挨拶させてください。私はイッシュさんの元で薬師をしていたディーンと申します」

「宜しくお願いします」

「ハルト様にお会い出来るとは思っておりませんでした。お会い頂けたという事は今回の手土産は気に入って頂けたようで」

「とても気に入りました。ただ。何処で情報を得て居るのかが気になりますが」

 リーンの隠す気のない言葉に流石に少し身構え、表情が崩れる。それに笑顔を向けるもんだから怖いとしか言いようがない。

「今回も、前回も同じ所から、とだけ。今すぐ言いたい所なのですが、私の主人が影からお支えする事に拘ってまして…。まぁ、何と言いますか、主人の自己満足の域なので申し訳ないとしか…。いずれお話しできる時まで待って頂きたいのです」

「では、主人には私が感謝をしていたとお伝えして置いてください」

「えぇ、勿論伝えさせて頂きます。他にご要望があれば…」

「では、ひとつだけ。此方もお願いしたいのですが、如何でしょう」

 リーンの差し出した用紙に笑顔で目を通す。
 彼の顔がだんだん曇っていく様子を笑顔で見届けるリーンにレスターは楽しんでいるのだと理解した。
 ディーンは用紙を裏返してそっと机に戻すと小さなため息を洩らしらし、ごくりと喉を鳴らしながらひとくちだけ紅茶を流し込む。少し冷えた紅茶を味わう余裕はなく、カップを机に戻すと諦めたように言葉を洩らす。

「シナリオを事前に知らせて頂けて光栄です。お任せ下さい。少し時間がかかるとは思いますが…」

「準備だけ整えたらまたいらして下さい。タイミングも大切ですので」

 ディーンは頭を掻きながら参ったと言わんばかりに言葉を崩す。これが本来の彼の姿なのかも知れない。面倒な事を避けたい。そこはリーンと似ているかも知れない。

「…何やらややこしくなって来ましね」

「首を突っ込んだのは其方からですよ」

「…確かに、そうですね…」

 ははは、と笑い合っている姿はとても見てられない。それ程までに主導権はリーンが握っている。手助けする側の人間よりもされる側の方が強いのは見ようによっては面白いかもしれない。
 主人に対しての悪態をボソボソと呟きながら、早速さと退散したディーンを見送る。
 漸くお昼にあり付けたのは正午の鐘から数えて3回目が鳴った頃だった。
 今日は軽くと伝えていたので出て来たのは和食だった。旅の間この国ならではの脂っこいのに味がしない不思議な料理ばかりだったので今日はいつも以上に美味しく感じた。
 昼食を食べながらイアンは素朴な疑問を投げかけた。

「あいつは大丈夫なのか?」

「大丈夫ですね。敵意も害意もありません。単純にこき使われてる小間使いですね。イアンはどう思いますか」

「俺も大丈夫だと思う。ただ、あんまり好きじゃない」

 感覚の話なのだが、強者というのもは強さに由縁しているかは分からないが強者が分かるらしい。強者同士何か伝わるものがあるのだろうか。
 感覚故の信憑性のある話ではないのだが、彼は強者ではない。ましてや魔力の魔の字も見当たらない。それにこっそりと水晶鏡を覗き込んたが、抜きん出る才能は全て薬師関係のみでイッシュの元で働いていたのも勿論事実だ。
 何故伯爵家の次男が、とも思えるが次男だからこそ爵位も継がないし、彼は体より頭の方が働くので騎士などには向かないだろう。
 これだけスキルや技能が薬師に寄っているところを見ると幼い頃から薬に関する教育を受けていた事は見て取れるので、大きな組織…国の意向とも考えられる。

「彼は“自由”が足りない人なので仕方がないかも知れません」

「そうか、仕方がないな」

 イアンは分かるのだ。“自由”とは何と難しい言葉なのかを。イアンはその中でも意思を持てない“不自由”を経験しているので、やはりその気持ちが分かるのだろう。
 2人の会話の意味まで理解出来るのはレスターだけだった。

 

 
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