神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

盟友

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 それからチラホラと患者は現れたが、直ぐに隔離する、接触者を減らす、不要な外出はしない、栄養や睡眠などを十分に取る、他領との往来を禁止する、などのきちんとした対応のお陰で初期程の爆発的な感染はなく、ネアで完全に封じ込める事に成功した。
 侯爵家の素早い対応とリーンの助言のお陰と言えるだろう。

「ネアは一命を食い止めた、と言って良いでしょう。報告は以上です」

「イッシュ、シュミットご苦労様でした。…イアン、あれは始末しておいてください」

「りょーかい!」

 報告を聞き終わったリーンはそう言うと一息ついて紅茶を啜った。
 内容とは裏腹に陽気に言うイアン。リーンが呼んで初めて存在に気が付いた2人は今まで何処に潜んでいたのだろうか、と疑問には思うもののそれを問うことはなかった。
 
 ネアの住民達に安心感が広がる中、またしても貴重なポーションを無償で提供し、住人を国を救ってくれた英雄は誰なのか、と様々な憶測が飛び交った。
 だがその正体が国中に知れ渡ったのはもっと後の事だった。一部の理解者達による商会の再会を望む声や今までの影響妨害、暴力行為、器物破損、誹謗中傷に対しての謝罪が多く寄せられたが、リーンはそれを一度も取り合う事はなかった。
 勿論、リーンは蔑ろにしている訳でも怒っている訳でもない。言うなれば興味が無くなった。信頼も希望も何もかも無くなり、ただただ無だった。
 国民達は自分達がして来た事を思えば当然だと分かり、そしてやっと国や新聞に振り回され続けて来た事をここで理解し、後悔したのだった。
 ただもう悔い改めようとリーンには何も届かない。



ーーーーー



「第一師団!右斜め前方向に注視!第三、第四師団は攻撃準備!第二師団は後方より漏れた敵を始末しろ!このラインは絶対に維持する!殿下に遅れを取るな!次が来るぞ!」

「「「「「「おー!」」」」」」

 ネアでの急速な感染が続いていた頃と同刻。
 国の各地でスタンピードが起こっていた。
 同時に起こった厄災により人々は疲弊し切っていたが、戦場は更に過酷な状態だった。
 どんなに【勇者】になったキングストンが強いからと言って所詮は1人だ。同時に何箇所もの場所で起こったスタンピードを対応し切れず、混乱は続いていた。
 特に前回のスタンピード以来住民達が移住し、一気に過疎化が進んでしまった街々は相当な混乱が広がっていた。
 誰もが絶望感に襲われて、逃げる気力すらないものまでいた。一体どうして、どれだけ、いつまで我々は苦しめられるのだろうか、と。
 それでも世のため国のため全力で戦っていた者たちがいた。己が安全など皆無な魔物との戦場は熾烈を極めた。

「…私は次に行く。後は任せるぞ」

「はい、殿下。お気をつけて」

 キングストンは駆け出す。
 何度も見てきた戦場に心は疲弊気味だったが、だからと言って今自分が休むわけにも逃げ出すわけにも行かない。それが直接的に国民に街に村にそして国に被害が及ぶのは分かりきっている。
 ふと立ち止まった彼の目に写るのはいつの日か見た魔法陣。

「…ポスト、マイルセン」

 そして光に包まれて次に目に写り込んだのは先程と同じく青々とした木々がひしめき合う森の中をかける馬車の中。

「殿下…お水を」

「状況は?」

「状況は芳しくありません。方々の指揮官より救援要請が出ています…そろそろ次の戦場に到着します」

「私が降り次第又次の目的地へ向かえ」

「…殿下。少し休まれては……いいえ、仰せの通りに」

 少しでも多くの人を助けれるようにと借りて来たこれは一対の結晶石。移動時間を稼ぐ為にキングストンの戦闘中にマイルセンを次の目的地へ走らせては助太刀に入り、又馬車へと結晶石で馬車へと飛ぶ。その繰り返しでここまでやってきた。

(リーンと教皇には感謝しないとな…)

 馬車を降り、魔物と騎士達の激しい衝突音が脳を直接響かせる。

「きゅ、救援だ!行けるぞぉ!!!」
 
「指揮官は状況を説明しろ」

「ははっ!ハンドレッドウルフとその上位種のサウザンドウルフ、数十匹のオンリーウルフも居ます」

「ハンドレッドにサウザンドか。厄介だな」

 胸に拳を携えてハキハキと報告をする男に目もくれず、戦場をただ真っ直ぐ戦場を見据える。キングストンに言われた通り説明をするのは凛々しい顔立ちの中年の男。

 彼らが厄介だと悩ませるのは、その名通り、このウルフ達のその数の多さと素早さ、そして群れで組織立った行動する、という点だ。
 ハンドレッドウルフは100頭のウルフ纏める長。要は100頭のウルフが組織立っていて、更にその上のサウザンドウルフがいるという事はその組織が全部で10あるという事なのだ。
 占めて1000頭以上のウルフがいて、それが組織立って行動し、それに注力を捧げていると群れとは別で個々に行動するランクBのオンリーウルフに隙をつかれる。

「かなり戦況は悪いです。負傷者は半分を超えております」

「少し時間を稼いでくれ。この数なら15秒。それで半分くらいまで敵を減らせるはずだ。少しでも多く減らすために敵を私の前に誘導してくれ」

「は!はい!一同!殿下がいらっしゃった!きこえたな!15秒だ!耐えろ!」

「…14!13!12!…」

 必死の形相。
 誰もがキングストンの登場に安堵し、自分を再び鼓舞する。死ぬよりも恐ろしい事。大切な人を亡くす事。それを10年前に嫌と言うほど彼らは学んできた。彼らにとってこの戦は以前と違って自身の手で何とかできる。以前は何も出来ずにただ回復を祈り見守り、自分達が手をこまねいている内に国民が次々命を引き取っていく。それがどんなに辛い事だったのかを思い出していた。

「5!4!3!…」

「……行くぞ!」

「散開ーぃ!!!」

 一斉に騎士達が散開する。
 3人の騎士だけは弱々しいながらも魔法を放ち、ヘイトを集めながら一直線にキングストンへと向かう。
 それはまるで何度も訓練でもしてたかのように見事な連携であった。
 
「殿下!!お願いします!!」

 キングストンは地面に刺したままの剣を更に力一杯に刺し込んで大声を上げる。
 その声は激戦を繰り返して来たからか、掠れていて魔獣の雄叫びのような苦しい叫び声だった。
 大きな地鳴りを発し、同時にとてつも無い揺れに襲われる。突き刺した剣先から地面が裂けて行き、キングストンに向かって来ていたウルフ達が悲しげな鳴き声を発して忽ち地面に飲み込まれていく。

 その光景を見ていた騎士達の表情は希望と高揚、そして少しの虚しさ、悔しさを抱いていた。
 キングストン1人よりここにいる騎士総勢60人の方が劣っていると目の当たりにしたからだ…
 彼らも決して鍛錬を怠っていたわけではない。寧ろ、来たる時の為に自身を磨き続けて来た。

 彼らは誰も知らない。
 この魔物達も元はただの狼で、ただの動物で…。人間の非人道的な行いにより、魔物にされた被害者であると言う事を。
 そしてその動物達が悪側である人類によって一方的に淘汰されている。当然罪を犯して来た者達が報いを受けるのは当然の事で彼らが襲われる分には寧ろ見逃して襲われる姿を誰もがまじまじと見つめていただろう。

「殿下、此方は殆ど片付きました。後は我々にお任せください」

「…頼んだぞ」

 気力の限界だろうか、キングストンに覇気がない。ただその瞳だけはまだ死んではいない。目の奥が燃えているように見えた。

 勿論スキルというものはマナを消費する。その為みんな必ずスキルを行使出来る回数は決まっているのだ。凄いスキルであればある程そのマナ量の消費は激しい。既に気力だけでこの危機的状況を脱して来たキングストンは限界など既に超えていた。
 ポーションを一度で飲み干したキングストンは豪快に口元を拭うと茂みの深い所へ進んでいく。

 キングストンの投げ捨てた瓶が地面で割れる。

「皆、すまない。きっとマルティア様や殿下が我々の骨を拾ってくださるだろう」

「…隊長、大丈夫です。我々も分かっております」

「…ありがとう…。絶対に抑えるぞ!!!」

「「「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」」」

 殿下を見送った彼は再び大声をあげる。確かに危機的状況は脱したが負傷者も多く、まだまだ相当数の魔物が残っている。死者が出る事は覚悟しなければならない。
 ただ、キングストンが来た事で無謀にも思えたこの作戦に巧妙が見えて、殿下への反骨精神からか騎士達の士気も上がった。危険は百も承知。今は全力でこの場を押さえる事だけを考えよう、それが彼らの決断だった。
 そうして騎士達の命を預かる身として彼は皆に謝罪したのだ。

(みんな、生き残ってくれ…)

 隊長である彼にはそう願うしかなかった。


 



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