神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

大神殿

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 領主ジェニファーと対面し、一風変わった激辛料理で楽しい食事と伝統衣装ヌイナを纏った【踊り子】の舞台を堪能した後、ジェニファーが用意してくれていたようでヌーを一反約束通り譲り受けた。
 伝統衣装に使われている生地というだけあってかなり丁寧におられていて、大変貴重な物なのだとすぐにわかった。
 そして疑問点も解決した。
 というのもこの大陸を渡った時にリーンが身につけていた洋服はアリアが作ったもので、勿論生地は絹。それを見ていたクロードはあの嘘を信じたのか、気づかないふりをしているのかずっと疑問だった。
 ただそれはこのヌーをみて理解した。
 ヌーは色鮮やかで赤、青、緑、金、銀と様々か色が入っている。激辛料理が有名だからなのか、“ヌイナ”が赤いから辛い料理が生まれたの分からないが、赤を中心とした配色で中心に緑の線、それを挟むようにして銀、その更に外側を青の線が挟んでいる。布の端は金の縁取り。見事だ。
 素材が一緒なのだから当然絹とヌーが同じ物だと思っていたが、リーンが使う物は白で着色は殆どしていないし、主にシャツや寝間着に加工している。それなら別物だと考えても良さそうだ。
 
「見事な色ですね」

「えぇ、神聖な冠婚葬祭で着る物であるが故にリーンハルト様を…いえ、神の色を使わせて頂いているのです」

 確かに言われてみればそうだ。目の色と髪の色を使ったと言う事なのだろう。ただ先程の【踊り子】達もそうだったが、この生地がヌーなのだとしたら全員色形が全く同じ物を着ている事になる。

「ヌーは全てこの配色なのですね」

「はい。ただ冠婚葬祭で着ると言っても着るのは参列者が着る晴着なので、問題はありません」

「ふふ、そうでしたか」

 質問の意図が分かったのか、やはり優秀な案内人だ。この半月でリーンの気になるであろう物事を把握したようだ。

「花嫁、花婿は黒を纏います。勿論故人も同様に黒を纏います。神子様のお色です」

「不思議な風習ですね」

「不思議?ですか。我々はそう生きてきたので疑問を持つこともありませんでしたが、ハルト様が仰るのならそうなのかもしれませんね」

 もう真逆と言ってもいいだろう。
 リーンが生きてきた地球では当然ながら花嫁は純白の衣装が一般的で、故人が着るのも白のイメージがある。黒は故人を偲ぶ時と言うイメージのほうが強い。それ故の発言だったが、よく考えると何でも知っている神の発言ではなかったし、少し不用心な返答だったかも知れない。少し油断した。
 ポートガスは特に気にした様子でもないので気にしても仕方がない。

「本日はヌーヌーに一泊して、明日は更に西へ向かいたいと思っております。宿はいつも通り先にイアン様達に見て頂いているのでそれまでは観光と行きましょうか。ご希望は御座いますか?」

「そうですね。ヌーも見れましたし、鉱物、鉱石の方も観れるといいですね」

「リーン様」

 イアンは少し難しい顔をしている。
 理由は分かる。少し油断している、という事。
 クロードに関してはまだいい。信頼をおいているし、何かあってもすぐに対処出来る相手だからだ。
 しかし、人の口に戸は立てられぬ。ダーナロで散々味わってきた事だ。いつ何処で誰が何を聞いているか分からない。
 こればかりはどうする事も出来ない。
 いや、出来ないわけではないが、相手による。
 ディアブロには手立てはない。
 相手もこちらに対して手立てがないように、此方もディアブロに対しての手立てがない。だからこそこうして地道に準備を整えている。まさに今裏の攻防戦をしているのだ。
 次の目的である治外法権、ヴェルスダルム唯一の独立国家レオレアも言わば攻防戦の開催地。

「…どうかされましたか?」

「いえ」

 なんとなく察しているのであろうが、クロードは最後まで気づかぬフリをする。こうも優秀だと寧ろ少し怖い。

「おーい、確認終わったぞー」

「今回は早かったですね」

「まぁな、今回の所は逆にやり易いと言うか」

「…?」

「見れば分かるって」

 連れてこられたのは宿、というよりも家。屋敷とも名乗れない程の大きさだ。
 確かに人は減ってきたとは言え流石にみんなの寝る所はないように思う。

「まぁ、中見ればわかるさ」

 イアンが楽しそうにはしゃいでいる。
 中はそれ程良いものなのだろうか。
 イアンに続いて中に入る。

「空間魔法ですか」

「えぇ、ご存知だとは思いますが、ジェニファーは空間魔法の使い手です。この街は既に区画整理が終わっており新しく立て直すとなると単純に街の面積を増やす他ありません。故にこの様な形を取らせて頂きました」

「いえ、面白いです」

 空間魔法。リーンが1番初めに使おうとした魔法だ。とにかくその使い道の汎用性が広い。
 このように部屋や家、テントなどの空間を広げたり狭めたり、勿論鞄やトランク、馬車なども同様に出来る。そして1番は移動。夢のどこでも○アに近い事もできる。空間同士を繋げたり、逆に離したり。Lvを上げれば異空間へも自由自在。

「これは《広域化》と《重複化》ですね。しかも建物自体は《縮小化》をかけている。この3つを組み合わせるのは至難の技のはず。…中々優秀な人のようです」

 流石のレスターも認めざるを得ないようだ。

「仰る通り部屋はたくさんありますのでお好きなところをお使い下さい。リーンハルト様部屋は別途用意しております」

 満更でもないと得意げなジェニファーは意気揚々と歩き出した。

 《重複化》のせいか、傷や汚れまで同じく出来ている。なので部屋に置かれているものの位置まで同じでとても奇妙で面白い。

「その、質問はよろしいでしょうか」

「どうぞ」

 少し畏まったジェニファーは一転少し肩を落としたように姿勢を丸めている。

「リーンハルト様はキャラベリンドール様ではないのでしょうか」

「…?」

「いえ、その…私達は神について幼少期から親や聖職者から教え伝えてられます。数々の御言葉や御業もその一つです。聖職者によると…キャラベリンドール様はその御業でどんな病も怪我も癒す特別な薬を作れると…聞きました…。でも、容姿が…その目が金眼でらっしゃるという事はヴェルムナルドール様なのでしょうか…?」

「では変わりましょうか?」

「…変わる?」

 ゆっくり目を閉じてるリーン。そしてまたゆっくりと目を開ける。

「…赤い…深紅の瞳…」

 驚きで固まるジェニファーにリーンは優しく微笑む。

「素敵な部屋を用意してくれたお礼に貴方のお願いを聞きます」

「…誠ですか、」

「えぇ」

 堪えようと必死に綺麗な顔を歪ませるジェニファーの肩をクロードが抱く。
 リーンは部屋の扉を開き、もう一度微笑むとそのまま中へ入った。部屋の外の嗚咽が遠のいていくのを聞きながら綺麗に整えられた部屋のソファに腰掛けた。

「…バルサ神殿ではやはりコートバルサドールが良いのでしょうか?」

「そうですね…正直に申しますとその方が宜しいかと。ただジェニファーから騎士団に御触れを出せば、姿は変われど神は一柱だと言う事は直ぐに神殿には伝わるでしょう。どちらにせよ歓迎されると思われます」

「如何なさいますか?」

「では、明日からはアポロレイドールで行きます」

「…かしこまりました」

 疑問は最もだろう。要望のコートバルサドールでもなく、この国の皇帝に合わせたキャラベリンドールでも無く、いつも通りでも無いアポロレイドールになると言うのは。

「少し気を使ってみますか」

「気を…?」

「今回はポートガス卿のご主人にお呼ばれした身。どちらも立てるならこれが一番の方法ではありませんか?」

 確かにそうなのだが、リーンが態々どちらの顔も立てるためにそうするのは周辺に対して少々気を回しすぎに思えてならない。 
 多くは語らないリーンなりに何かがあると感じたので誰もそれ以上は何も言わないし、聞かないが疑問は残る。

「今回は流石に少しキチンとした格好をして見ましょうか」

「はい、リーンハルト様。私にお任せください」

「レスターには少し頼みたい事があります」

「はい、リーン様。なんなりとお申し付けください」

 レスターとミモザに視線を向けたリーンはニッコリと微笑む。その笑顔に癒された一同の顔はダラシない。イアンは相変わらず、可愛いなぁ、とリーンの頭を撫で付けて冷ややかな目で見られていた。
 
 此処でも被服師アリア、魔回路師ジェシカ、薬師イッシュ、神導十家フォークネル、支店長グレイソンとアイザックが別の仕事を、と命を受け残る事になった。

 そして次の日は朝から朗らかな雰囲気で神殿に向かったのだった。


 
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