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第三章
“悪魔”
しおりを挟む真剣な面持ちで相対する6人。
こじんまりとした部屋に集まった彼らは冗談が通じる様な様子ではない。
「ルーベンの方は終わったって連絡が来てたわ」
「来てたわ」
「如何程で?」
「6」
「フレディ君の方は後2で3体始末したそうです」
「…フレディ君って…まだ4歳だったよね?凄いな…」
「キールの方も片付いたからハルト様の所へ戻るって」
「って」
「え!終わったらハルト様の所に戻れるの?」
ーーーパンパンッ
アイザックの手を叩く合図で静まり返る。
床の木が少し軋む音と彼らの息遣い、それから外の喧騒と下から聞こえてくる賑やかな音楽。
「まず僕の予想通りだとここに集まっているのはざっと50。グレイに見てきて貰ったらやはり大人多い所に集まっていて中々手が出しづらい。往来で大掛かりな戦闘は避けたいんだけど」
「50…多いわね」
「わね」
「その為の僕らでしょ?まぁ、このメンバーが残された時点で何となく想定はしてたけど…。とにかくアリアさん、ジェシーさんの戦闘特化メンバーに情報収集とその後の後処理用にイッシユさんとフォークさん、オールマイティーのグレイ、そして作戦参謀に僕。ハルト様からは殲滅を支持されてますから一匹でも漏れがあってはなりませんよ」
「んで?何から始める?」
「まずは…」
「アリアさんとジェシーさんにフォークさん入れ替わる悪魔を先に始末して貰います」
「その相手が何処にいるのか分かってるの?」
「それはまだですが、目星は付いているのでグレイ残りの調査をお願いします」
「分かった」
「イッシュさんにはもしものためにいくつかポーションの作成をお願いします。リストは後ほど」
「分かりました」
「その後グレイとアリアさん、ジェシーさんで一気に下級悪魔の殲滅をお願いします。これで悪魔のボスが次々に死んでいく仲間にあたふたしている間にフォークさんは入れ替わった“悪魔”のフリをして潜入、隙をついて始末をお願いします。今回の計画の肝です」
「うん!分かった」
翌朝。
昨夜は夜通し作戦内容の把握、情報整理、情報共有、指示振り、作戦シミュレーション、事前準備…寝る暇も無いくらいに忙しなく動いていた。今日にでも決行したいところだが、1日の休息をアイザックが唱えたのでそれに従い、皆それぞれ各々ヌーヌーの街を楽しんだ。
しかし、これは職業柄だろうか。皆ついつい標的の把握や武器の補給場に適している所、一時的に身を隠すのに丁度良い路地、道すがら見つけては目で追ってしまう。
そしてしまいにはバラバラに宿屋を出たはずなのにみんなと何度も何度も出くわしてしまい…。
「いらっしゃいませ!」
「あー、1人…何で居るんだよ」
「「さあ?」」
「何ででしょうね?」
「みんな集合だね…?」
店員は今日このやり取りを短時間の間に最低でも3回はやっていたのだろう。またか、とでも言いたげに厨房へ戻っていく。
「それでみんな作戦は成功できそう?」
「…分かってたんなら、初めからそう指示しておけば良いでしょ?」
「でしょ?」
「いいえ、皆さんは戦闘能力や諜報活動に長けていても演技は下手なのでこの方が怪しまれずに済みます」
「そうかもしれないね」
「ふふふ、アイザック君は慎重だね」
全てアイザックの思惑通りだった事に納得のいかないアリアは乱暴に頭を掻いて、目の前の料理を口に詰め込む。ジェシーはとっくに食べ終わっていたようだ。
「んじゃ、私達は先出るわ」
「ア、アリィ、ジェシーどこ行くの?」
「あー、折角だしヌー見てくるかな」
「じゃあ、我々はフォーク君が気にしてたお菓子屋さんに行って見ましょうか?」
「うん!いいの?ありがとう!イッシュ」
「じゃあ、グレイはこの後僕と一緒にいて貰おうかな?」
「ん、了解」
先にアリアとジェシーが店を出る。
続いてゆっくりと食事を楽しんでいたフォークネルとイッシュが店を出た。
「僕たちはこの後どうするの?」
「僕たちはこの後ある人と会う約束をしてる」
「ん~ある人か。誰だろう?」
思い浮かぶ人は数人いるが、今更会う必要があるのか?と単純な疑問だった。
「グレイはさ、今回僕の作戦内容の聞いて少し足りないって思わなかった?」
「足りない?…強いて言えばフォークさんが少し危険かな、ってぐらいかな」
「流石グレイだね。そう言う鋭いところが好きだよ」
本当に嬉しそうに言うアイザックに笑顔を返す。アイザックはこの頭の良さ、回転の速さ、応用力を初めから上手く使いこなしていたわけでは無い。能力故に早熟だったアイザックは周りから心良く思われない事は多々あった。
良く考えれば子供の言う事、する事で済む話が、アイザックが頭が良すぎたあまり子供扱いされる事なく少しの悪戯ややんちゃを許される事がなかった。
ミスが許されない、親に甘えられない、大人で在らねば、というプレッシャーは幼い彼を冷たい人間に変えるには十分な出来事だった。
誰にも干渉されずに1人で生きて行くための方法としてアイザックが選んだのがカジノだった。そして彼はなるべくして【プレイヤー】になった。望んでいた通り【プレイヤー】として1人で生きる事には成功したが【プレイヤー】はユニーククラス故に他に同じクラスの人が現れる事は彼が生きている間は無い。
それを知った彼は悟った。同じレベルでゲームが出来る人がいないのなら、ゲームで絶対に負ける事の無い彼がゲームで負けを知る事は無い、という事を。
それから直ぐにそれがどう言う事なのか理解する。
永遠の孤独。
それを望んでいた筈だった。
そのために【プレイヤー】になった。
でも、無理だった。1人で生きていける筈は無かったのだ。これまでも孤独と付き合って来た彼はその孤独を埋める為に常に誰かと対戦し、小さな満足感を得る為に更に加速するようにゲームに明け暮れていった。
止める店員を払い除けてけゲームに明け暮れる日々。もうとうに窶れなど通り越して廃人になりかけていた。
それでも負けない彼にも遂に転機が訪れる。
それがグレイとの出会いだ。
彼らが出会ったカジノだった。奇しくもアイザックは【プレイヤー】として、グレイは【ディーラー】として相対した。
アイザックは来店当初から【ディーラー】として付いていたグレイには一切の感情も興味もなく顔すら覚えていなかった。ただの客と店員。それだけだった。
そんなある日。たった一言だけ言葉を交わした。
ーーー飽きたのですか?
今の今まで客と店員としての会話しかして来た事がなかったのに何故彼が急にそんな事を言い出したのかとアイザックはそこで初めて彼の顔を見たのだ。
凄い、天才だ、と褒められたり、憎い、羨ましいと妬まれることはあっても彼自身の気持ちを聞かれ、更には当てられたのは初めてだった。
常に歴戦連覇でどんなゲームも当てて来た彼が初めて負けたのだ。
そしてその日初めてゲームを楽しいと感じる事が出来た。
そしてその日のうちにアイザックはグレイに心を許した。もう逆に異常なまでの執着心を向けていた。
でもそれは意外にも相性の良い関係になった。何故ならグレイは異常なまでの世話焼き人間だったからだ。
そしてそれからアイザックに待ち受けていたのは綺麗な部屋に清潔な服と三食きっちりと同じ時間にバランスの良い美味しい食事を取り、そしてフカフカのお日様の匂いがする布団できっちりと8時間の睡眠を取る生活だった。
そしてそれを嫌がらないアイザックにグレイもまた依存していったのだ。
それからと言うもの何をするにもお互いの了承を取り、お互い予定を把握し合い、職場でも顔を合わせるようになった。
それは流行病が起こっても変わらず、リーンに仕事を紹介されてからも変わらなかった。
ただ不思議なのはお互い過干渉では無いという事。いや、言葉が違うかもしれない。一緒にいたいわけでは無く、お互いに別々の行動をしても大丈夫だという事だ。アイザックはグレイの言う事を聞くし、グレイもアイザックの甘えを全て受け入れる。でも一緒に暮らす事はなかったし、休みを合わせたりなどはしなかった。
故にリーンには双子と呼ばれるようになった。
「まぁ、今回はちょっとグレイにいて欲しいって言うか…」
「ちょっと不安だったんだね」
「そうなんだ」
なんでも言わなくても理解してくれる、差し出してくれるグレイに甘えるアイザック。そして、そんなアイザックを子供のように育てて満足するグレイ。
2人は約束の人を静かに待っていた。
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