神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

思惑

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 暫くすると少し疲れた様子の男が店に入って来た。先程と同様に店員が愛想良く出迎える。待ち合わせだとでも伝えたのか店員と一緒に此方を見る。
 店員はまたか、と言わんばかりに途端に愛想を無くして再び厨房に戻るが、すぐにまた出て来てにっこりと愛想良く湯気が立ったままのお茶を出してきた。
 彼が誰だか裏で教えられたに違いない。

「あ、僕もおかわりもらって良い?」

「あ、じゃあ僕も」

「紅茶2つ追加ですね」

 そして、再び厨房に戻って行ったのを確認したら男は迷わずに2人の前に座った。

「呼び出してすみません」

「いえ、これも私の仕事ですので。それよりも部下がご迷惑をお掛けしたそうで…申し訳ありません」

「迷惑…ですか?」

「あぁ、アイザックには言ってなかった」

「…なに?」

 少し怪訝そうに眉を顰めてグレイに目を向ける。

「ほら、昨日尾行されてたでしょ?彼らは監視じゃなくて僕たちを誘拐犯だと思ってたみたいで」

「私の部下が無駄な疑いをかけたようです。後日謝罪に向かわせますので…どうかお許しを」

「ふーん、まぁいいや。問題なさそうだし」

 アイザックの言葉に作戦には、と言う言葉が付いている事にグレイだけが分かった。

「ご挨拶がまだでしたね、私はこの街の十師騎士団のジェニファー・フロレンスと申します」

「こんにちは、アイザックです」

「グレイです」

 軽く握手を交わす。
 初対面ではないがきちんと挨拶は交わしていなかったので簡単な挨拶だ。
 タイミングよくお茶も運ばれて来てソワソワする店員は此方をチラチラ見ていたが、少しするとそそくさと厨房へ再び消えた。

「今回お呼びしたのはこれから我々が行う事にご協力頂くための交渉に参りました」

「交渉?ですか?ご協力に関しては【錬金王】から直々に全面的に協力するよう通達を受けているので交渉など無意味かと」

「それは此方も存じてますが、幾分内密なお話なのです」

「秘密…と言う事は【錬金王】にも報告はできない、と言う事でしょうか」

「その通りです」

「…それは…了承しかねます。ご存知の通りこの大陸が【錬金王】のお力によって一つになってから5年になります。それ以前に10あった国の国王達は位を捨て十師と改めて、【錬金王】に知恵を貸す元老院のような役割を担う型になりました。その後【錬金王】は彼女の出身地を自身の国として新たに起こしました。私はこの辺りにかつてあったフローラ国の王位継承権第一位の王太子。5年前に【錬金王】に忠誠を誓い、十師騎士団の団長を賜りました身。例え神の命でも余程のことがない限りは【錬金王】に忠義を果たさねばなりません」

 この大陸は統一がなされてからまだほんの5年しかたっていない。
 それ以前は10あった国はそれぞれ外交関係も良好でお互い牽制し合いながらも時には王族同士の婚姻を結んだりしながら尊重し合って平和がなされていた。
 しかし、【錬金王】の誕生から少しずつその均衡が崩れて来た。【錬金王】が生み出す物はこの世界の2手も3手も先を行く物だったからだ。
 初めは上下水道。陸路の舗装時の耐久性の高いレンガ。それからサスペンション付きの馬車。そして巨大帆船。ありとあらゆるインフラを生み出したいってひとびの生活はとても楽で豊かなものになっていった。
 しかし、次第に奪い合いが始まる。
 それが今から20年前。
 【錬金王】はこの大陸を、国を、人々の生活を、発展させ豊かで楽なものにする為に尽力してきたが、その【錬金】の力や利権などの奪い合いが始まる。
 それにより一時的に【錬金王】は身を隠す。その間も時々【錬金王】の力と思われる近未来な道具が度々発見されたが、大変大掛かりな捜索も虚しく【錬金王】付きの従者と2人、10年間一度も姿を現さなかった。
 そしてその10年の間で成人した【錬金王】は大陸統一を画策し、5年前それを達成したのだ。

「それも重々承知しております。なので交渉なのです」

「…では、お話だけお聞きしましょう」

「分かりやすく行きましょう。此方が差し出す物は貴方の妹さんの命」

「!!!」

「そして貴方に求めるのは秘匿です」

「…妹がどうなる、と仰るのですか」

「それは交渉に応じるならお話しします」

「…病、に関しての話…ならお伺いします」

 どうやらジェニファーは察しの良いタイプのようだ。たかだか神に素晴らしい宿を提供したくらいで死を宣告された娘を治すのは対価として釣り合ってないと彼自身も分かっていたようだ。

「今までどんな名医に見せてももって1年と言われて来たのに…どうして確信を持てるのでしょうか」

「神の御業が成せる業だからです」

「……応じましょう」

 ゴクリ、と生唾を飲み込んだジェニファーは正直なところは理解していないように見える。
 何故ならもう彼の妹はリーンの手によって病を克服済みだからだ。
 最もアイザックは初めからジェニファーが了承すると分かっていたからの行動だが、この行動の意味を理解させるにはもう少し情報を与える事が必要だろう。

「治療は…いつから」

「あ、すみません。治療はもう終わってるんです」

「…え」

「先日リーン様からヌーのお礼に送られた清酒。あれを夕食時に振る舞ったとお聞きしました。あれは私の仲間でイッシュという薬師が作った神の妙薬“エリクサー”です。妹さんのご病気が完全に治癒したのを今朝訪問した時に私が《鑑定》で確認したので間違いありません。ただ元々寝たきりで衰弱していたのであと数日は沢山寝て沢山食べてなければなりませんがね」

「…そうですか…」

 予想に反して治っていることを直ぐに漏らしたアイザックにジェニファーは何か気が付いたようだ。
 彼が受け入れると分かっていたアイザックは既に妹の病気が治っている事を安易に伝える事で如何にリーンが慈悲深い人で、神で、【錬金王】よりも上だと遠回しに諭した、ように見せていると。

「…そうとも知らずに…ご無礼を…お許し下さい」

「私は《鑑定》で確認しただけです。感謝ならハルト様にして下さい」

「そうですね…」

「と言う事で私達のお願いですが、口の堅い人間を50人お借りしたい。それも中長期で。内訳のリストは此方で」

「…中々細かな…演技の上手い者…?これは何の意図が…?」

 アイザックの出したリストの書かれた羊皮紙を何の躊躇もなく広げたジェニファーは顔を曇らせる。

「かなり重労働になりそうですね…」

「えぇ、十師のお力が無ければ難しいでしょうね」

「私がもっている劇団の【役者】を使いましょう。彼らなら多少違ってもそう振る舞うことが出来ますでしょうし」

「あぁ、それは良い考えですね」

 少し棒読みで言うアイザック。
 グレイはそれも作戦には折り込み済みだったのか、と苦笑いだ。

「作戦日は明後日です。【役者】さんの方よろしくお願いしますよ~」

「よろしくお願いします」

 言い終わるや否や席を立って店を出たアイザックを追うようにしてグレイも席を立つ。
 何処かに控えていたのかジェニファーに近寄る女はアイザックが手渡した羊皮紙を受け取って厨房の方へ入って行った。

「50人集めたって事は“悪魔”の身代わりするって事?」

「まぁ、そう言う事。銀の短剣は僕らの人数分しか無いから始末は僕らで、その後の後処理は騎士団に丸投げ!楽でしょ?」

「そうだね。確かに50人もの人が一夜にして消えたら流石に色々騒ぎになるもんね」

「そーいうこと!配役とかも向こうにお任せって事で後はフォークさんの変身次第かな」

 両手を頭の後ろで組んで楽しそうに歩くアイザック。少しだけ体を上下に揺らしている所を見るとかなり上機嫌のようだ。

「でも、これでフォークさんが本当に安全になるの?」

「そうそう、まぁ見てなって!」

「でもなんて【錬金王】に秘密なの?」

「ん?いや、どのくらいの事なら十師族は【錬金王】を裏切るのかなって思ってさ。ただそれだけ」

「そう、ならいんだけど。アイザックが言うなら大丈夫だね。それより…」

「ん?なに?」

「今朝ご飯少し残してだけど大丈夫?」

「…あ、ごめん…怒らないで」

「やっぱり…体調悪いんじゃなくて、昨日夜夜更かししてたんだろ。君は決まって睡眠不足になると食事の量が減る傾向にあるから」

「い、いやー、そんなにしてないけどなぁ。ほんの1時間…いや2時間だったかな…?」

 仲良し二人組は微笑ましい?やり取りをしながら宿屋へ戻ったのだった。








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