24 / 24
閑話休題――露と答えて
しおりを挟む
これは、わたしが見た夢のお話しです。
いつ見たのかもさだかでない――そんな夢の物語です。
それは、わたしたち二人だけの舞踏会。
型どおりに手を構え――でも、触れることなく、わたしたちはただ、くるくるとステップを踏むのです。
気まぐれな、決して越えない隔たりを挟んで。わたしたちのダンスが回ります。
やがて、ダンスは終わり。
わたしたちを取り巻いていた幻が溶けていきます。
ああ。きっとこれは傷になる。
忘れられない心の傷。
思い出すたび、胸が痛む――そんな傷になるのでしょう。
もしもどんなに幸せになる未来がこの先にあったとしても
きっとこのひと時以上の喜びはありはしないから――
”永遠”を探してはいけないのでしょう。
見つからなければ苦しくて
見つけてしまえば、こんなにも哀しくなるのだから。
「――泣いているのか」
「いいえ」
「涙が――」
「いいえ。きっと夜露です」
「――」
「遠い遠い異国の物語にあるのですって。
――夜闇に紛れて恋人を連れて逃げることにしくじった男が、夜露と一緒に消えてしまいたかったと嘆く場面が――
――わたしも露と消えてしまえれば」
それ以上、わたしは続けることができませんでした。
彼の唇がわたしの言葉を封じてしまったから。
でも、それも夢幻の一場面――
いつ見たのかもさだかでない――そんな夢の物語です。
それは、わたしたち二人だけの舞踏会。
型どおりに手を構え――でも、触れることなく、わたしたちはただ、くるくるとステップを踏むのです。
気まぐれな、決して越えない隔たりを挟んで。わたしたちのダンスが回ります。
やがて、ダンスは終わり。
わたしたちを取り巻いていた幻が溶けていきます。
ああ。きっとこれは傷になる。
忘れられない心の傷。
思い出すたび、胸が痛む――そんな傷になるのでしょう。
もしもどんなに幸せになる未来がこの先にあったとしても
きっとこのひと時以上の喜びはありはしないから――
”永遠”を探してはいけないのでしょう。
見つからなければ苦しくて
見つけてしまえば、こんなにも哀しくなるのだから。
「――泣いているのか」
「いいえ」
「涙が――」
「いいえ。きっと夜露です」
「――」
「遠い遠い異国の物語にあるのですって。
――夜闇に紛れて恋人を連れて逃げることにしくじった男が、夜露と一緒に消えてしまいたかったと嘆く場面が――
――わたしも露と消えてしまえれば」
それ以上、わたしは続けることができませんでした。
彼の唇がわたしの言葉を封じてしまったから。
でも、それも夢幻の一場面――
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
ありがとうございます!
励みになります、嬉しいです!
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます!
「竜のディーバに捧げる恋歌」のプロローグは規則の関係で削除して、連載版に移行しました。
こちらの作品の後で、続きを投稿しますので、どうぞよろしくお願いいたします。