小犬令嬢、いびり戦線異状アリ!

 お互いに名前を知らないわたしたちは、誰かに尋ねることも伝言を託すこともできません。
 知りたいな、という気持ちはあります。でも、自分の名前を教える勇気はないのです。

 あの人はわたしがしていることを知っても、わたしを変わりなく受け入れてくれるでしょうか。
 たとえば事情のすべてを打ち明けて、それで理解してくれるでしょうか。

 ただの言い訳です。わたしのしていることの罪が軽くはならないでしょう。

 ――いつか。いつかは、話さなくてはならない時がくるでしょう。
 受け入れてもらえなくても、隠したままではいられなくなるでしょう。
 
 この思いが、つのっていくのなら――

 でも、今はまだ。
 もう少しだけ、このままで。
(「歪んだパズル」より)
侯爵令嬢グロリアという婚約者がいるにもかかわらず、隣国からの留学生アレクサ嬢とべったりのロバート殿下。
それに腹を立てた侯爵は貧乏伯爵令嬢レイチェルに実家への資金援助を条件にアレクサ嬢をいびることを依頼。
気が進まないレイチェルはどうにかお茶を濁そうと斜め上にハッスル。
しかし肝心のアレクサ嬢はいびりなんてどこ吹く風。なぜかレイチェルをかまってぐいぐい迫る。
次第に周囲がキナ臭くなるなか、レイチェルの前に謎のモサ男(?)が現れて――
二十年近く前の因縁に翻弄されるレイチェル達。崖っぷち令嬢の明日はどっち?
――そして、誰かがざまぁする――?

※R18はさらっとです。
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