1 / 387
駆け出し転生者ウタ
死んだよ……
しおりを挟む
柳原羽汰、17歳。高校二年の夏。いまだに「女みたいー」と名前をいじられる今日この頃。
僕のことを簡単に言えばヘタレである。強いやつには言い返せない。冬場は静電気が怖くてドアを開けるのにいちいちびくびく。挙げ句のはてには息絶えた白い目が怖くて、焼き魚が食べられない、なんてヘタレだ。
そう、そんな僕が、人生で初めてと言っても過言ではないくらいの勇気を出した。ほぼ反射的にだった。目の前を転がっていくボール。それを追いかける男の子。気づかずに突っ込むトラック……。全てがスローモーションのように見えた。
普段足が固まって動かない僕が、どうしてこのときばかりそうしたのか、よく分からない。でも僕は、道路に飛び出て、男の子を突き飛ばし、その直後、自分の赤い血を見て気絶した。そして、そのまま死んだ。
……さすがに、もうちょっと生きたかったなぁ、と思い目を開ける。
…………ん? 目を開ける?
「パンパカパーン! 死んでしまうとはー、情けない!」
「……へ?」
目の前には、白いふわふわのドレスに身を包んだ7歳くらいの女の子。金色の髪は肩のあたりで切り揃えられ、可愛らしく微笑んでいた。
「本当だったらこのままさよならだったけど、私優しい神様から転生させてあげちゃう!」
「……え?」
「はぁー! 若くして死んだ憐れな少年! 君にめちゃつよ能力を与えよう!」
「あの」
「不便しないようにお金もあげるし家もあげちゃう! 私ってふとっぱらぁ!」
「あの」
「転生先は異世界ばんざい! んじゃ、楽しんでね!」
「あのーーー!!!」
嵐が過ぎ去ったようだった。なんだこれは。ラノベでお馴染みの『異世界転生』ってやつなのか? 僕が!?
次に目を開くと、知らない天井が目に飛び込んでくる。視界がぼやっとしてるのは、眼鏡を外しているからのようだ。
「えっと……眼鏡、眼鏡……」
僕の寝ていた頭の隣くらいに眼鏡は置いてあった。それをかけると、色々状況が見えてくる。
ここはどうやら小さな家で、森の中にあるらしい。窓の外には豊かな自然が見える。枕元には数百枚(かなり重い)の金貨が入った麻袋。僕が寝ていたのは小さなベッドだった。
「いやお金もらったって、どうすりゃいいのさ……」
とりあえず、街にでも向かえばいいのだろうか? それにしたって、街がどこにあるのか分からないじゃないか! 全く……。これ、どうすりゃいいの? 本当に。ていうか、異世界なんだよね、ここ。だったらラノベあるあるで魔物とかいるのかな? うっわ無理。本当に無理。助けてお母さん。僕もう無理だよ……。
そこまでは冷静に考えていた僕だったが(これでもかなり冷静な方なのだ)、ふと、違和感のある臭いが鼻をついた。
「なんか……焦げ臭い……?」
ドキッとして外に出る。いやまさか。だって、ついさっき転生したばっかりだよ? ほら、これから強くなるならなっていくわけだし、そういう展開早すぎるんじゃないかなぁ? ……早すぎる、よね?
一応、麻袋だけは抱えてきた。なんか、すごく嫌な予感がしたから。すると……。
「……いや、マジか」
家の二階部分から火の手が上がっていた。そしてその上に舞い降りる、一匹のドラゴン。真っ赤な美しいとすら思うそのドラゴンは僕を睨み付けた。
……え?
「グォォォォォォ!!!」
「僕はなんにもしてませぇぇぇぇん!!!」
その場からとにかく逃げなければ! そうじゃなきゃまた死ぬ! やだやだやだやだやだ……!
ってかねぇ! 普通こういうのってゴブリンとかスライムとか、そういうのから始まるんじゃないの!? ドラゴンってボス級だよ!?
知りもしない森の中をひたすらに走る。実のところ、ドラゴンは追いかけてきてなかったのだが、それでもヘタレな僕は走り続ける。怖くて後ろなんて振り向けない。走って走って走って……何かにぶつかった。
「あっ! ごごごご、ごめんなさい! お願いだからかつあげしないで!」
「ヴヴヴ……」
僕の言葉に答えたのかなんなのか知らないけど、それはそううめいた。よかったー、かつあげはされなさそうだ!
……いや絶対人じゃないよね? 絶対人じゃないよね?! お金は取られなさそうだけど命とられそう!
怯えながらも……そっと、顔をあげる。
「ヴガァァァァァ!!」
「わぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げた先にいたのは別の魔物でしたとか洒落になってないよ! まずいて……まずいってぇ……。なにこのライオンみたいなやつ……ジリジリ近づいてくるしぃ……。
うん、もう無理だね。無理ですねはい。あぁ、パトラッシュ……疲れたろう? 僕も疲れたよ、なんだか、とっても眠いんだ……パトラッシュ…………。
「おいっ……!」
目の前が赤で覆われる。それを見て、僕は気絶した。
僕のことを簡単に言えばヘタレである。強いやつには言い返せない。冬場は静電気が怖くてドアを開けるのにいちいちびくびく。挙げ句のはてには息絶えた白い目が怖くて、焼き魚が食べられない、なんてヘタレだ。
そう、そんな僕が、人生で初めてと言っても過言ではないくらいの勇気を出した。ほぼ反射的にだった。目の前を転がっていくボール。それを追いかける男の子。気づかずに突っ込むトラック……。全てがスローモーションのように見えた。
普段足が固まって動かない僕が、どうしてこのときばかりそうしたのか、よく分からない。でも僕は、道路に飛び出て、男の子を突き飛ばし、その直後、自分の赤い血を見て気絶した。そして、そのまま死んだ。
……さすがに、もうちょっと生きたかったなぁ、と思い目を開ける。
…………ん? 目を開ける?
「パンパカパーン! 死んでしまうとはー、情けない!」
「……へ?」
目の前には、白いふわふわのドレスに身を包んだ7歳くらいの女の子。金色の髪は肩のあたりで切り揃えられ、可愛らしく微笑んでいた。
「本当だったらこのままさよならだったけど、私優しい神様から転生させてあげちゃう!」
「……え?」
「はぁー! 若くして死んだ憐れな少年! 君にめちゃつよ能力を与えよう!」
「あの」
「不便しないようにお金もあげるし家もあげちゃう! 私ってふとっぱらぁ!」
「あの」
「転生先は異世界ばんざい! んじゃ、楽しんでね!」
「あのーーー!!!」
嵐が過ぎ去ったようだった。なんだこれは。ラノベでお馴染みの『異世界転生』ってやつなのか? 僕が!?
次に目を開くと、知らない天井が目に飛び込んでくる。視界がぼやっとしてるのは、眼鏡を外しているからのようだ。
「えっと……眼鏡、眼鏡……」
僕の寝ていた頭の隣くらいに眼鏡は置いてあった。それをかけると、色々状況が見えてくる。
ここはどうやら小さな家で、森の中にあるらしい。窓の外には豊かな自然が見える。枕元には数百枚(かなり重い)の金貨が入った麻袋。僕が寝ていたのは小さなベッドだった。
「いやお金もらったって、どうすりゃいいのさ……」
とりあえず、街にでも向かえばいいのだろうか? それにしたって、街がどこにあるのか分からないじゃないか! 全く……。これ、どうすりゃいいの? 本当に。ていうか、異世界なんだよね、ここ。だったらラノベあるあるで魔物とかいるのかな? うっわ無理。本当に無理。助けてお母さん。僕もう無理だよ……。
そこまでは冷静に考えていた僕だったが(これでもかなり冷静な方なのだ)、ふと、違和感のある臭いが鼻をついた。
「なんか……焦げ臭い……?」
ドキッとして外に出る。いやまさか。だって、ついさっき転生したばっかりだよ? ほら、これから強くなるならなっていくわけだし、そういう展開早すぎるんじゃないかなぁ? ……早すぎる、よね?
一応、麻袋だけは抱えてきた。なんか、すごく嫌な予感がしたから。すると……。
「……いや、マジか」
家の二階部分から火の手が上がっていた。そしてその上に舞い降りる、一匹のドラゴン。真っ赤な美しいとすら思うそのドラゴンは僕を睨み付けた。
……え?
「グォォォォォォ!!!」
「僕はなんにもしてませぇぇぇぇん!!!」
その場からとにかく逃げなければ! そうじゃなきゃまた死ぬ! やだやだやだやだやだ……!
ってかねぇ! 普通こういうのってゴブリンとかスライムとか、そういうのから始まるんじゃないの!? ドラゴンってボス級だよ!?
知りもしない森の中をひたすらに走る。実のところ、ドラゴンは追いかけてきてなかったのだが、それでもヘタレな僕は走り続ける。怖くて後ろなんて振り向けない。走って走って走って……何かにぶつかった。
「あっ! ごごごご、ごめんなさい! お願いだからかつあげしないで!」
「ヴヴヴ……」
僕の言葉に答えたのかなんなのか知らないけど、それはそううめいた。よかったー、かつあげはされなさそうだ!
……いや絶対人じゃないよね? 絶対人じゃないよね?! お金は取られなさそうだけど命とられそう!
怯えながらも……そっと、顔をあげる。
「ヴガァァァァァ!!」
「わぁぁぁぁぁぁ!!」
逃げた先にいたのは別の魔物でしたとか洒落になってないよ! まずいて……まずいってぇ……。なにこのライオンみたいなやつ……ジリジリ近づいてくるしぃ……。
うん、もう無理だね。無理ですねはい。あぁ、パトラッシュ……疲れたろう? 僕も疲れたよ、なんだか、とっても眠いんだ……パトラッシュ…………。
「おいっ……!」
目の前が赤で覆われる。それを見て、僕は気絶した。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる