26 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
盗賊くん
しおりを挟む
むっすーーーーーーーーー。
……今の盗賊くんに効果音をつけるならこれだろう。ドラくんにつれてきてもらった小さな洞窟の中で、地面に座り込み、頬を少し膨らませ睨んでくる。
僕とアリアさんは互いに顔を見合わせ、小さくため息をついた。
「……ねぇ? なにも説明しなかったのは悪かったけど、でも、そんなにすねなくても」
「なんだよ。別にすねてねーし」
「それはすねてるって言ってるようなもん……」
「…………」
「あぁっ! ご、ごめん! ごめんって!」
進みもせず、戻りもせず、わざわざこんなところに来たのにはもちろん理由がある。
僕らとしては、やはり盗賊と名乗っているこの子を置いていくわけにはいかなかった。しかし、さっきみたいに捕まえて街に連れていけば、犯罪者として確実に牢に入れられる。
……僕らは警察じゃない。警察に突き出すんじゃなくて、なにか別の方法で改心させられないかと思ったのだ。
で、その話をゆっくりしようと、街から離れたここまで来たのだが……。
「……この状態じゃあな」
「ですねー」
「ぷる……」
なにか次の策を考えなければ、そう思っていた矢先だった。
ぐぅぅぅ……。
「……僕じゃないです」
「私でもないぞ」
「ってことは……」
ちらっと盗賊くんの方をみると、真っ赤な顔で僕らを睨み付けてきた。
「……な、なんだよ! 腹減ってるんだからしかたねーだろ!?」
「……うん」
「なんだよそのビミョーな反応!」
そういえば、彰人さんにもらった大量の料理があるんだった。僕はおもむろにアイテムボックスを開き、その中から玉子サンドを取り出す。
お皿に乗ったそれは、僕が王都で食べたのと同じやつだった。
「これ、食べる?」
「はぁ?! 食いもんで釣られるとでも思ってるのか? おいらは盗賊だぞ! そんなのに釣られるか!」
いや、今あきらかに目を輝かせてたし……。それに、
「でもよだれ垂らしてる」
「た、垂らしてねーよ!」
いや、そこで口こすったら垂らしてたよーっていってるようなもんじゃ……。
「……食うのか? 食わないのか?」
「うっ……」
唐突に言葉に詰まった盗賊くんは僕とアリアさんをチラチラと交互に見て、僕の手から玉子サンドの乗ったお皿を奪い取った。そして、ガツガツ食べ始めたのだ。
「くそっ……くそっ! うまいし! 無駄にうまいしコノヤロー!」
「なぜ、こいつは怒っているんだ?」
「さぁ……?」
ご飯に夢中になっている盗賊をちょいちょいと指差しながら、アリアさんが僕にささやく。
「今なら隙がある。鑑定してみろ。多少のレベル差なら誤魔化せるだろう」
「分かりました……鑑定」
よし、読み取ることができた。盗賊くんのステータスはー、こちら!
名前 ポロン
種族 人間
年齢 10
職業 盗賊
レベル 18
HP 2900
MP 1600
スキル アイテムボックス・暗視・剣術(初級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度3)・土魔法(熟練度1)・風魔法(熟練度1)
ユニークスキル 窃盗
称号 キルナンス所属・軽犯罪者・癖っ毛
ついに称号の中に外見が入ってきたんだけど? いいのそれって。それに、キルナンスって……なんだ?
まぁ、なんとなく意味は分かるけど、とりあえず『窃盗』を鑑定する。
窃盗……物を盗み続けることによって習得する。素早さが上昇し、気配を消すことができる。
ふむふむ。やっぱり名前が名前だけあってそういう感じなのねー。
「どうだ?」
「見れましたよ! えっとですねー……」
アリアさんにステータスを一通り伝える。ポロンくんのステータス――特に前半――は年相応のものらしい。アリアさんが気になったのは『キルナンス』だった。
「……キルナンス、か」
「その、キルナンスって?」
「とりあえずはポロンに聞きたい」
アリアさんは身をかがめ、玉子サンドをもしゃもしゃ食べるポロンくんに声をかける。
「……ポロン、っていうんだな」
「???!!!」
あからさまに驚いたポロンくんは口の中の玉子サンドをごくっと飲み込み、一息ついて、
「な、なんで知ってるんだ!」
「ごめん、ステータス覗いたからさ」
「はぁぁ?! なんだよそれ! ズルいやズルいや! 結局食いもンで釣るのか!?」
「釣られたのはポロンだけどな」
「うっ」
「それはいいんだ」
アリアさんは真剣な顔つきになるとポロンくんを問い詰めた。
「……キルナンス所属、なのか?」
「…………だったら、なんだよ」
その場の空気がピンと張りつめた。キルナンスが分からない僕だけ置いてきぼりだ。
「おいらがどこに所属してて、何をして生きてるかなんて、お前らには関係ないや」
そして、泣き出しそうな顔でキッと僕らを睨む。
「どうせ、盗賊なんかやめて足洗えって言うんだろ? 家族と平和に暮らせって。
……恵まれたお前らには分からないや。
おいらは、盗賊になりたくてなったわけでも、なるしかなくてなったわけでもないやい! おいらは……生まれたときから盗賊だっただけだい!」
「あっ、待っ――」
「ストリーム!」
追いかけようとした僕らを風魔法で吹き飛ばし、ポロンくんは洞窟の外へ駆けていった。
「……参ったな」
「ドラくんに頼めば、見つかると思いますけど……」
「いや、無理に追っても逃げるだけだろう。窃盗のスキルを使えば気配も消せる。ドラくんでも見つけるは困難だ」
それからアリアさんは、腕を組んで考え込んでしまった。
「ただの盗賊なら、人を傷つけないことを条件にそのまま返してもいいかと思っていたんだが……キルナンスとなれば、話は別だ」
「その……キルナンスって、なんなんですか?」
「キルナンスはとある犯罪組織だ。全体の人数はおよそ1000人とも言われている。幹部は4人。頭領が1人。盗賊ということは下っ端だろうが……」
「でも、犯罪組織なら他にも多分ありますよね? ポロンくんは盗賊だし……なにがそんなに問題なんですか?」
アリアさんは赤い瞳をゆっくりと閉じ、言う。
「キルナンスの主な活動内容は、人身売買なんだ。ポロンも被害者かもしれない」
……今の盗賊くんに効果音をつけるならこれだろう。ドラくんにつれてきてもらった小さな洞窟の中で、地面に座り込み、頬を少し膨らませ睨んでくる。
僕とアリアさんは互いに顔を見合わせ、小さくため息をついた。
「……ねぇ? なにも説明しなかったのは悪かったけど、でも、そんなにすねなくても」
「なんだよ。別にすねてねーし」
「それはすねてるって言ってるようなもん……」
「…………」
「あぁっ! ご、ごめん! ごめんって!」
進みもせず、戻りもせず、わざわざこんなところに来たのにはもちろん理由がある。
僕らとしては、やはり盗賊と名乗っているこの子を置いていくわけにはいかなかった。しかし、さっきみたいに捕まえて街に連れていけば、犯罪者として確実に牢に入れられる。
……僕らは警察じゃない。警察に突き出すんじゃなくて、なにか別の方法で改心させられないかと思ったのだ。
で、その話をゆっくりしようと、街から離れたここまで来たのだが……。
「……この状態じゃあな」
「ですねー」
「ぷる……」
なにか次の策を考えなければ、そう思っていた矢先だった。
ぐぅぅぅ……。
「……僕じゃないです」
「私でもないぞ」
「ってことは……」
ちらっと盗賊くんの方をみると、真っ赤な顔で僕らを睨み付けてきた。
「……な、なんだよ! 腹減ってるんだからしかたねーだろ!?」
「……うん」
「なんだよそのビミョーな反応!」
そういえば、彰人さんにもらった大量の料理があるんだった。僕はおもむろにアイテムボックスを開き、その中から玉子サンドを取り出す。
お皿に乗ったそれは、僕が王都で食べたのと同じやつだった。
「これ、食べる?」
「はぁ?! 食いもんで釣られるとでも思ってるのか? おいらは盗賊だぞ! そんなのに釣られるか!」
いや、今あきらかに目を輝かせてたし……。それに、
「でもよだれ垂らしてる」
「た、垂らしてねーよ!」
いや、そこで口こすったら垂らしてたよーっていってるようなもんじゃ……。
「……食うのか? 食わないのか?」
「うっ……」
唐突に言葉に詰まった盗賊くんは僕とアリアさんをチラチラと交互に見て、僕の手から玉子サンドの乗ったお皿を奪い取った。そして、ガツガツ食べ始めたのだ。
「くそっ……くそっ! うまいし! 無駄にうまいしコノヤロー!」
「なぜ、こいつは怒っているんだ?」
「さぁ……?」
ご飯に夢中になっている盗賊をちょいちょいと指差しながら、アリアさんが僕にささやく。
「今なら隙がある。鑑定してみろ。多少のレベル差なら誤魔化せるだろう」
「分かりました……鑑定」
よし、読み取ることができた。盗賊くんのステータスはー、こちら!
名前 ポロン
種族 人間
年齢 10
職業 盗賊
レベル 18
HP 2900
MP 1600
スキル アイテムボックス・暗視・剣術(初級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度3)・土魔法(熟練度1)・風魔法(熟練度1)
ユニークスキル 窃盗
称号 キルナンス所属・軽犯罪者・癖っ毛
ついに称号の中に外見が入ってきたんだけど? いいのそれって。それに、キルナンスって……なんだ?
まぁ、なんとなく意味は分かるけど、とりあえず『窃盗』を鑑定する。
窃盗……物を盗み続けることによって習得する。素早さが上昇し、気配を消すことができる。
ふむふむ。やっぱり名前が名前だけあってそういう感じなのねー。
「どうだ?」
「見れましたよ! えっとですねー……」
アリアさんにステータスを一通り伝える。ポロンくんのステータス――特に前半――は年相応のものらしい。アリアさんが気になったのは『キルナンス』だった。
「……キルナンス、か」
「その、キルナンスって?」
「とりあえずはポロンに聞きたい」
アリアさんは身をかがめ、玉子サンドをもしゃもしゃ食べるポロンくんに声をかける。
「……ポロン、っていうんだな」
「???!!!」
あからさまに驚いたポロンくんは口の中の玉子サンドをごくっと飲み込み、一息ついて、
「な、なんで知ってるんだ!」
「ごめん、ステータス覗いたからさ」
「はぁぁ?! なんだよそれ! ズルいやズルいや! 結局食いもンで釣るのか!?」
「釣られたのはポロンだけどな」
「うっ」
「それはいいんだ」
アリアさんは真剣な顔つきになるとポロンくんを問い詰めた。
「……キルナンス所属、なのか?」
「…………だったら、なんだよ」
その場の空気がピンと張りつめた。キルナンスが分からない僕だけ置いてきぼりだ。
「おいらがどこに所属してて、何をして生きてるかなんて、お前らには関係ないや」
そして、泣き出しそうな顔でキッと僕らを睨む。
「どうせ、盗賊なんかやめて足洗えって言うんだろ? 家族と平和に暮らせって。
……恵まれたお前らには分からないや。
おいらは、盗賊になりたくてなったわけでも、なるしかなくてなったわけでもないやい! おいらは……生まれたときから盗賊だっただけだい!」
「あっ、待っ――」
「ストリーム!」
追いかけようとした僕らを風魔法で吹き飛ばし、ポロンくんは洞窟の外へ駆けていった。
「……参ったな」
「ドラくんに頼めば、見つかると思いますけど……」
「いや、無理に追っても逃げるだけだろう。窃盗のスキルを使えば気配も消せる。ドラくんでも見つけるは困難だ」
それからアリアさんは、腕を組んで考え込んでしまった。
「ただの盗賊なら、人を傷つけないことを条件にそのまま返してもいいかと思っていたんだが……キルナンスとなれば、話は別だ」
「その……キルナンスって、なんなんですか?」
「キルナンスはとある犯罪組織だ。全体の人数はおよそ1000人とも言われている。幹部は4人。頭領が1人。盗賊ということは下っ端だろうが……」
「でも、犯罪組織なら他にも多分ありますよね? ポロンくんは盗賊だし……なにがそんなに問題なんですか?」
アリアさんは赤い瞳をゆっくりと閉じ、言う。
「キルナンスの主な活動内容は、人身売買なんだ。ポロンも被害者かもしれない」
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる