チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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ウタと愉快な盗賊くん

盗賊くん

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 むっすーーーーーーーーー。

 ……今の盗賊くんに効果音をつけるならこれだろう。ドラくんにつれてきてもらった小さな洞窟の中で、地面に座り込み、頬を少し膨らませ睨んでくる。
 僕とアリアさんは互いに顔を見合わせ、小さくため息をついた。


「……ねぇ? なにも説明しなかったのは悪かったけど、でも、そんなにすねなくても」

「なんだよ。別にすねてねーし」

「それはすねてるって言ってるようなもん……」

「…………」

「あぁっ! ご、ごめん! ごめんって!」


 進みもせず、戻りもせず、わざわざこんなところに来たのにはもちろん理由がある。
 僕らとしては、やはり盗賊と名乗っているこの子を置いていくわけにはいかなかった。しかし、さっきみたいに捕まえて街に連れていけば、犯罪者として確実に牢に入れられる。

 ……僕らは警察じゃない。警察に突き出すんじゃなくて、なにか別の方法で改心させられないかと思ったのだ。
 で、その話をゆっくりしようと、街から離れたここまで来たのだが……。


「……この状態じゃあな」

「ですねー」

「ぷる……」


 なにか次の策を考えなければ、そう思っていた矢先だった。


 ぐぅぅぅ……。


「……僕じゃないです」

「私でもないぞ」

「ってことは……」


 ちらっと盗賊くんの方をみると、真っ赤な顔で僕らを睨み付けてきた。


「……な、なんだよ! 腹減ってるんだからしかたねーだろ!?」

「……うん」

「なんだよそのビミョーな反応!」


 そういえば、彰人さんにもらった大量の料理があるんだった。僕はおもむろにアイテムボックスを開き、その中から玉子サンドを取り出す。
 お皿に乗ったそれは、僕が王都で食べたのと同じやつだった。


「これ、食べる?」

「はぁ?! 食いもんで釣られるとでも思ってるのか? おいらは盗賊だぞ! そんなのに釣られるか!」


 いや、今あきらかに目を輝かせてたし……。それに、


「でもよだれ垂らしてる」

「た、垂らしてねーよ!」


 いや、そこで口こすったら垂らしてたよーっていってるようなもんじゃ……。


「……食うのか? 食わないのか?」

「うっ……」


 唐突に言葉に詰まった盗賊くんは僕とアリアさんをチラチラと交互に見て、僕の手から玉子サンドの乗ったお皿を奪い取った。そして、ガツガツ食べ始めたのだ。


「くそっ……くそっ! うまいし! 無駄にうまいしコノヤロー!」

「なぜ、こいつは怒っているんだ?」

「さぁ……?」


 ご飯に夢中になっている盗賊をちょいちょいと指差しながら、アリアさんが僕にささやく。


「今なら隙がある。鑑定してみろ。多少のレベル差なら誤魔化せるだろう」

「分かりました……鑑定」


 よし、読み取ることができた。盗賊くんのステータスはー、こちら!



名前 ポロン

種族 人間

年齢 10

職業 盗賊

レベル 18

HP 2900

MP 1600

スキル アイテムボックス・暗視・剣術(初級)・体術(中級)・初級魔法(熟練度3)・土魔法(熟練度1)・風魔法(熟練度1)

ユニークスキル 窃盗

称号 キルナンス所属・軽犯罪者・癖っ毛



 ついに称号の中に外見が入ってきたんだけど? いいのそれって。それに、キルナンスって……なんだ?
 まぁ、なんとなく意味は分かるけど、とりあえず『窃盗』を鑑定する。


窃盗……物を盗み続けることによって習得する。素早さが上昇し、気配を消すことができる。


 ふむふむ。やっぱり名前が名前だけあってそういう感じなのねー。


「どうだ?」

「見れましたよ! えっとですねー……」


 アリアさんにステータスを一通り伝える。ポロンくんのステータス――特に前半――は年相応のものらしい。アリアさんが気になったのは『キルナンス』だった。


「……キルナンス、か」

「その、キルナンスって?」

「とりあえずはポロンに聞きたい」


 アリアさんは身をかがめ、玉子サンドをもしゃもしゃ食べるポロンくんに声をかける。


「……ポロン、っていうんだな」

「???!!!」


 あからさまに驚いたポロンくんは口の中の玉子サンドをごくっと飲み込み、一息ついて、


「な、なんで知ってるんだ!」

「ごめん、ステータス覗いたからさ」

「はぁぁ?! なんだよそれ! ズルいやズルいや! 結局食いもンで釣るのか!?」

「釣られたのはポロンだけどな」

「うっ」

「それはいいんだ」


 アリアさんは真剣な顔つきになるとポロンくんを問い詰めた。


「……キルナンス所属、なのか?」

「…………だったら、なんだよ」


 その場の空気がピンと張りつめた。キルナンスが分からない僕だけ置いてきぼりだ。


「おいらがどこに所属してて、何をして生きてるかなんて、お前らには関係ないや」


 そして、泣き出しそうな顔でキッと僕らを睨む。


「どうせ、盗賊なんかやめて足洗えって言うんだろ? 家族と平和に暮らせって。
 ……恵まれたお前らには分からないや。
 おいらは、盗賊になりたくてなったわけでも、なるしかなくてなったわけでもないやい! おいらは……生まれたときから盗賊だっただけだい!」

「あっ、待っ――」

「ストリーム!」


 追いかけようとした僕らを風魔法で吹き飛ばし、ポロンくんは洞窟の外へ駆けていった。


「……参ったな」

「ドラくんに頼めば、見つかると思いますけど……」

「いや、無理に追っても逃げるだけだろう。窃盗のスキルを使えば気配も消せる。ドラくんでも見つけるは困難だ」


 それからアリアさんは、腕を組んで考え込んでしまった。


「ただの盗賊なら、人を傷つけないことを条件にそのまま返してもいいかと思っていたんだが……キルナンスとなれば、話は別だ」

「その……キルナンスって、なんなんですか?」

「キルナンスはとある犯罪組織だ。全体の人数はおよそ1000人とも言われている。幹部は4人。頭領が1人。盗賊ということは下っ端だろうが……」

「でも、犯罪組織なら他にも多分ありますよね? ポロンくんは盗賊だし……なにがそんなに問題なんですか?」


 アリアさんは赤い瞳をゆっくりと閉じ、言う。


「キルナンスの主な活動内容は、人身売買なんだ。ポロンも被害者かもしれない」
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