チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
32 / 387
ウタと愉快な盗賊くん

侍再び

しおりを挟む
 アイリーンさんへの頼み事は明日にお願いすることにした。というのも、今日は色々あって疲れてるし、街の様子も見ておきたい。
 それに、アイリーンさんが気絶させ、ギルドの方々に捕らえられたキルナンスから話も聞きたい。

 聞きたい内容は三つ。
 一つ目、キルナンスの上層部について。
 説明したかもしれないが、キルナンスは世界的にも迷惑している犯罪集団だ。
 人身売買を行うグループはわりと地位が高いという。実際、捕らえられたのは今回がはじめてだ。幹部や頭領について、何か知っているかもしれない。

 二つ目、最近起こっているドラゴンの異常行動。それの原因になっているもう一つの『勇気』について、なにか情報はないかということだ。
 あとでギルドでも聞き込みをしてみるつもりだが、闇の世界で生きる彼らの方が知っていることもあるかもしれない。どちらにせよ、聞くことが出来るのなら聞いておきたい。

 そして三つ目ディラン・キャンベルについてのことだ。
 これに至っては、こちらにある情報はゼロに等しい。少しでもなにか掴めればこちらのものだ。
 そう、例えば、東の方に向かったとか、どこどこで見たとか、隣国にいるらしいとか……なんでもいい。些細なことで構わないから、情報がほしいのだ。

 以上の理由から、僕らはギルドに向かっている。というのも、この街には留置場のような場所はなく、現在一時的に、ギルドの奥に簡易的な牢をつくり、そこにキルナンスの人をいれているらしいからだ。
 ちなみに、簡易的といっても、作ったのは錬金術師と呼ばれる人で、脳内に想像できるものならばとても精密に作ることが出来る。よって、とっても丈夫である。属性魔法の熟練度8までなら耐えられるとか。(捕まったキルナンスの人たちの中に、熟練度8以上の魔法を使う人はいなかった)


 ……それと、キルナンスとは直接関係はないのだが、僕らには気がかりなことが一つあった。
 例のあの人のことだ。ヴォルデモートじゃない。


「…………謎ですね」

「謎だな」


 そう、あの、反復横跳びしてて、時計を売りつけてきたあの人だ。いや、それだけでも十分謎なのだが、謎なのはその少し前だ。

 「4時47分東から」

 ……なぜ知っていたのだろう。だって、さすがにキルナンスだって外部にやすやすと情報を流すほどバカじゃないだろう。しかし知っていた。……キルナンス、だったのか?
 しかし、それならそれで謎だ。わざわざ僕らに伝える必要だってない。第一、アイリーンさんがジャッジメントするときに指定した標的は『キルナンスの人々』だ。例外はない。
 となると、キルナンスじゃないけど情報を知ってて、僕らに伝えたと思ったら時計を売りつけると……。


「……意味不明だ」

「あいつを見つけたら、また声をかけてみるか。……ぼったくり覚悟で」

「ぼったくり覚悟で」


 そう、まさにそのときだった。


「ユンユンユンユンユンユンユンユンユンユンユンユン――」

「…………」

「…………」


 僕らの目の前を、当の本人が両手を頭の横でくるくるさせながら通りすぎ、小道に入っていった。


「…………あ!」

「……ちょ! 待って!」


 慌てて追いかけて小道に入ると、そこはすぐに行き止まりになっていて、あの人の姿はなかった。


「……見間違えた、か?」

「いやでも、そんなことな」

「なーんの話ーーー?」

「「うわっ?!?!」」


 急に後ろからした大声に驚き振り向くと、あの人がにこにこしながら立っていた。


「あ、あの! あなたって一体何者なんですか?」


 するとその人は、またとんちんかんなことを言う。


「氷、雷、光、風、炎。この順番がいいんじゃないかなぁ? と、侍は思うぜベイベー」

「べ、ベイベー……?」

「ベイベーのベイは、米って書くんだぞー」

「べ、米ベー?」

「いやどういうことだよ」


 とりあえず、この人が何者なのか知りたい。教えてくれないのなら……多分無理だけど、鑑定!



名前 名乗るほどの名はないのさ!

種族 人間にさせて種族くらい

年齢 いくつに見えるかなー?

職業 侍でござるよ( ・`д・´)

レベル うぇっ、へっ、へっ

HP テレッテッテレッテー

MP ふぁーーーーーー!!!

スキル やっぱさー、侍が使うと言ったら剣術だよねー! いやっほう!

ユニークスキル 君のハートを撃ち抜くこと、さっ!

称号 えー? こんなのも見ちゃうのー? ダメだってばぁー!



 ……遊ばれてるのかな、僕は。顔文字まで使ってる。こんなのありか? ありなのか!? いやダメだろ!


「ところでお二人さーん! 腕時計、使ってくれてるねー、気に入ってくれたようで嬉しいよー!」

「いや、これはなんとなくつけてるだけで」

「まったまたぁ! ツンデレなんだから!
 と! いうわけで、今回は新しい商品を持ってきたよー!」


 …………おっと、この流れは嫌な予感。


「取り出しますのはー、こちら! 睡眠学習用スピーカーつき枕!」

「いらなっ!」


 前回以上にひどい! 腕時計はまだ使えたからよしとしよう。百歩も二百歩も譲ってね!?
 しかし! 睡眠学習用枕はどう考えても使わない! 本当にいらない!

「アリアさん……」

「……覚悟の上だった。覚悟の……」

「全力で断りましょう」

「あぁ、そうだな。断ればいいんだ、断れば」

「今ならこちらの、スピードラーニングCDもつけて、お値段なんと! 金貨一枚! 安いでしょお?」


 高い。


「さ! お二人さん、買ってくかい!?」

「いや! 私たちは……」

「ぼ、僕らは買いませ」

「リピートアフターミー!
 イエス! マイプレジャー!」

「「い、イエス! マイプレジャー!」」


 …………はぁ。うぅ、頭が痛い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...