43 / 387
ウタと愉快な盗賊くん
出発
しおりを挟む
結果から言おう。また寝むれなかった。まぁ、昨日よりは寝れたかもしれないけど、作戦会議が盛り上がってしまったおかげで気がついたら真夜中。急いでベッドに潜ったが、寝たと思ったら夜明け。……当日なのにこんなんで大丈夫か?
「……おはよう、ウタ」
「おはようございます……眠そう、ですね」
「お前もな。……あー、くっそ。昨日夜中まで話してたからだよなぁ」
「ま、まぁ。仕方ないですよ。とりあえず、ごはん食べましょ」
そうして、服を着替え――一応言っておくが、僕は洗面所の方で着替えている。そしてアリアさんにちゃんと確認とってから中に入っているよ!――スラちゃんを連れて下の食堂におりてきた。
「…………」
「……寝てるな」
「寝てますね」
「ぷる……」
アイリーンさんは例のごとくカウンターですやすやと寝息をたてていた。
「気持ち良さそうで、いいな……」
「眠くなってきました……」
「あー! もう! またアイリーンが寝てる!」
僕らがうとうとし始めたその瞬間、前に聞いたことがある声がして振り向いた。
「あ、チョコレートの銀貨の人」
「えっ?! そ、それ、俺のことっすか?」
そう、始めてここに来たとき、アイリーンさんを必死にサポートしようとしていたが、結局振り回されるだけ振り回されていた、あの人だ。
「あーーー……あのときのお客さん! 聞きましたよー、アリア様だったんですね! うちのアイリーンがとんだ無礼を……」
「い、いや、気にしていない、大丈夫だ。な?」
「は、はい」
というかそのあとめちゃくちゃ助けられてるしね。
「というか、あなたは一体……アイリーンさんの兄弟とか、旦那さんとか?」
「いや、俺はただの隣人Aです」
「……はい?」
意味がわかりません。
「いやー、わりと前のことなんですけど、パーティーで個性の塊'sに戦い挑んで、ボコボコにされまして」
「なんてことを」
勝てると思ったのか?! アイリーンさん一人倒すにもどれだけ人手がいるか……。
「その後、塊'sが解散して、アイリーンが『宿屋開きたいから手伝ってー』って」
「……それで、手伝ってるのか?」
「はい。自分達から挑んだ勝負で負けて、冒険者としてのメンツもボロボロだったので、新しいことを始めるいいきっかけになればいいな、なんて」
なるほど、だからちょくちょく通って手伝ってるのか。……まぁ確かに、アイリーンさん一人じゃ危なそうだ。客が。
「他のメンバーって、なにしてるんですか?」
「塊のですか?」
「いや、あなたの」
「俺のですか? みんなここで働いてますよ」
「えっ?!」
「はい。ここで働いているのは、みんな、過去に個性の塊'sに負けた元冒険者です」
……ここ、すごいところだった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「ご飯おいしかったー?」
「すっごくおいしかったです!」
「朝なのに結構食べちゃったな」
「ですね!」
あの男性と話してから、やっとアイリーンさんが起きた。食事を終え、僕はアリアさんと顔を見合わせた。
「……じゃあ、僕らは行ってきます」
「色々ありがとうな」
「うん! 帰ってきたとき用に、ご馳走つくって待ってるー!」
僕はポケットの中にある小さな球体をぎゅっと握りしめた。……大丈夫、全部うまくいく。
「大丈夫か? ウタ」
ポロンくんとの待ち合わせ場所に向かいつつ、アリアさんが尋ねてきた。
「うーん……どうですかね。戦うって分かってて戦うのって、しかも、相手は人間ですからね」
今まで相手にしてきたのは魔物たち。それと、ドラくんと、手合わせでアリアさんだ。ちょっと躊躇ってしまうかもしれない。
「……いざというときは、私を呼べ。何とかしてやるよ」
「……アリアさん」
「ぷるっ! ぷるるっ!」
「スラちゃんも、ありがとう」
ラミリエを出て、ポロンくんと会う。昨日よりもどこか落ち着いたようなポロンくんは、僕らを見ると小さく笑った。
「……よっ」
「おはようポロン。準備はできてるか?」
「当たり前だい。おいらは、ちゃんと覚悟を決めてきたんだ」
だから、と呟いて、僕らのことを見上げ、言うのだった。
「……おいらのこと、信頼してくれよ?」
僕らの答えは、昨日のうちに決まっていた。
「もちろん!」
「あぁ、絶対だ」
「……本当か?」
「本当だよ。……絶対、信じるから」
ポロンくんが、柔らかく微笑んだのが分かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「よっ!」
「あー! 久しぶりー!」
場所を戻そう。ウタ達がラミリエの外へ出たあと、とある二人がホテル・チョコレートのカウンター越しに話している。一人はチョコレートをもぐもぐ食べつつ、もう一人は侍のような格好をしている。
「いやー、なんか面白い情報聞いたからさ! ちょーっとつけ回そうかなーなんて」
「わりと迷惑してたよー? 時計とかー、枕とかー?」
「でもちゃんと協力してるよ! 今回だって、順番教えてあげたし!」
「まぁねー。よく分かったねー、忘れてるんじゃないかなーって」
「人間は忘れる生き物だからね……」
「はいはい」
みたところ、二人は気のおけない仲のようだ。侍の方がカウンターにのりだし、もう一人に問いかける。
「てかさ? ほんっとーにヤバくなったらどうするの? 助太刀する?」
「んー……しようかなー、とは思ってるよー? 起きてたら」
「起きてたらかぁ……そっかそっか。
でもま、大丈夫そうだけどね」
「大丈夫だよー! 私も……ふぁぁ……寝ないしー…………多分」
「……きっと?」
「もしかしてー」
「不確かだ。これは寝るわ」
これはそう、そんな……他愛なくくだらない話。
「……おはよう、ウタ」
「おはようございます……眠そう、ですね」
「お前もな。……あー、くっそ。昨日夜中まで話してたからだよなぁ」
「ま、まぁ。仕方ないですよ。とりあえず、ごはん食べましょ」
そうして、服を着替え――一応言っておくが、僕は洗面所の方で着替えている。そしてアリアさんにちゃんと確認とってから中に入っているよ!――スラちゃんを連れて下の食堂におりてきた。
「…………」
「……寝てるな」
「寝てますね」
「ぷる……」
アイリーンさんは例のごとくカウンターですやすやと寝息をたてていた。
「気持ち良さそうで、いいな……」
「眠くなってきました……」
「あー! もう! またアイリーンが寝てる!」
僕らがうとうとし始めたその瞬間、前に聞いたことがある声がして振り向いた。
「あ、チョコレートの銀貨の人」
「えっ?! そ、それ、俺のことっすか?」
そう、始めてここに来たとき、アイリーンさんを必死にサポートしようとしていたが、結局振り回されるだけ振り回されていた、あの人だ。
「あーーー……あのときのお客さん! 聞きましたよー、アリア様だったんですね! うちのアイリーンがとんだ無礼を……」
「い、いや、気にしていない、大丈夫だ。な?」
「は、はい」
というかそのあとめちゃくちゃ助けられてるしね。
「というか、あなたは一体……アイリーンさんの兄弟とか、旦那さんとか?」
「いや、俺はただの隣人Aです」
「……はい?」
意味がわかりません。
「いやー、わりと前のことなんですけど、パーティーで個性の塊'sに戦い挑んで、ボコボコにされまして」
「なんてことを」
勝てると思ったのか?! アイリーンさん一人倒すにもどれだけ人手がいるか……。
「その後、塊'sが解散して、アイリーンが『宿屋開きたいから手伝ってー』って」
「……それで、手伝ってるのか?」
「はい。自分達から挑んだ勝負で負けて、冒険者としてのメンツもボロボロだったので、新しいことを始めるいいきっかけになればいいな、なんて」
なるほど、だからちょくちょく通って手伝ってるのか。……まぁ確かに、アイリーンさん一人じゃ危なそうだ。客が。
「他のメンバーって、なにしてるんですか?」
「塊のですか?」
「いや、あなたの」
「俺のですか? みんなここで働いてますよ」
「えっ?!」
「はい。ここで働いているのは、みんな、過去に個性の塊'sに負けた元冒険者です」
……ここ、すごいところだった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「ご飯おいしかったー?」
「すっごくおいしかったです!」
「朝なのに結構食べちゃったな」
「ですね!」
あの男性と話してから、やっとアイリーンさんが起きた。食事を終え、僕はアリアさんと顔を見合わせた。
「……じゃあ、僕らは行ってきます」
「色々ありがとうな」
「うん! 帰ってきたとき用に、ご馳走つくって待ってるー!」
僕はポケットの中にある小さな球体をぎゅっと握りしめた。……大丈夫、全部うまくいく。
「大丈夫か? ウタ」
ポロンくんとの待ち合わせ場所に向かいつつ、アリアさんが尋ねてきた。
「うーん……どうですかね。戦うって分かってて戦うのって、しかも、相手は人間ですからね」
今まで相手にしてきたのは魔物たち。それと、ドラくんと、手合わせでアリアさんだ。ちょっと躊躇ってしまうかもしれない。
「……いざというときは、私を呼べ。何とかしてやるよ」
「……アリアさん」
「ぷるっ! ぷるるっ!」
「スラちゃんも、ありがとう」
ラミリエを出て、ポロンくんと会う。昨日よりもどこか落ち着いたようなポロンくんは、僕らを見ると小さく笑った。
「……よっ」
「おはようポロン。準備はできてるか?」
「当たり前だい。おいらは、ちゃんと覚悟を決めてきたんだ」
だから、と呟いて、僕らのことを見上げ、言うのだった。
「……おいらのこと、信頼してくれよ?」
僕らの答えは、昨日のうちに決まっていた。
「もちろん!」
「あぁ、絶対だ」
「……本当か?」
「本当だよ。……絶対、信じるから」
ポロンくんが、柔らかく微笑んだのが分かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
「よっ!」
「あー! 久しぶりー!」
場所を戻そう。ウタ達がラミリエの外へ出たあと、とある二人がホテル・チョコレートのカウンター越しに話している。一人はチョコレートをもぐもぐ食べつつ、もう一人は侍のような格好をしている。
「いやー、なんか面白い情報聞いたからさ! ちょーっとつけ回そうかなーなんて」
「わりと迷惑してたよー? 時計とかー、枕とかー?」
「でもちゃんと協力してるよ! 今回だって、順番教えてあげたし!」
「まぁねー。よく分かったねー、忘れてるんじゃないかなーって」
「人間は忘れる生き物だからね……」
「はいはい」
みたところ、二人は気のおけない仲のようだ。侍の方がカウンターにのりだし、もう一人に問いかける。
「てかさ? ほんっとーにヤバくなったらどうするの? 助太刀する?」
「んー……しようかなー、とは思ってるよー? 起きてたら」
「起きてたらかぁ……そっかそっか。
でもま、大丈夫そうだけどね」
「大丈夫だよー! 私も……ふぁぁ……寝ないしー…………多分」
「……きっと?」
「もしかしてー」
「不確かだ。これは寝るわ」
これはそう、そんな……他愛なくくだらない話。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる