チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
179 / 387
迷子の迷子の冒険者捜索!

閑話 ホワイトデー

しおりを挟む
「どーしよっかなぁ……」


 こんにちは、柳原羽汰です。今日は一人で街に買い物に来ています。
 というのも、今日はホワイトデー。三人からチョコレート貰ったし、お返しを買おうと思っているのだ。当日まで買えなかったのは、なかなかタイミングが掴めなかったからで。

 今日はというと、どうやら隣街のカフェで、女性子供の料金が半額になるというのをアリアさんが見つけてきたのだ。僕は男だし、対象の子供の年齢でもない。
 丁度ホワイトデーの買えてなかったし、先帝からお茶に誘われたことにした。もちろん、本人の許可はその後取った。

 ……それにしても、だ。


「いっぱいあるなぁ……」


 デパートにはホワイトデー限定の売り場みたいのがやはりできていて、お返し用のものがずらっと並んでいる。泊まっている宿に小さなキッチンはあるけれど、僕は手先が不器用だから作るのは最初から却下だ。ここで何かを買うしかない。

 並んでいるのは、王道のマシュマロ、キャンディ、チョコレート、クッキー、バームクーヘンなどなど……。お菓子の種類だけで10は越えている。さらに味だとか数だとか見た目だとかを考えていると、本当にきりがない。
 しかし、当日だからなのか、種類のわりに量が少ない。人も多いし、早く決めないと売り切れてしまう。

 売り場を何周かぐるぐる歩き回り、うーんと唸っていると、ふと、一つのラッピングされた袋が目に入ってきた。

 中身はカラフルなマシュマロ。中身自体はシンプルだけど、ラッピングがとにかく可愛らしい。ツリーみたいな見た目で、一つ一つ包装されたマシュマロには顔が描かれている。ちっちゃなキャンディも一緒に数個入っているようだ。


(これかわいいな……よし、迷いすぎてもしょうがない! これにしよう!)


 僕はそれ三つと、それとは別に、小さなチョコレートの包みを持ってレジに向かった。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「……あれ? ウタくんじゃないですか!」

「ら、ライアンさん!?」


 お会計を終え、宿に戻ろうとすると、そこには大量のバームクーヘンをかごにいれたライアンさんが立っていた。


「その量……っていうか、普通に出歩いてていいんですか?」

「いーのいーの。意外とバレないの僕。
 これはね、侍女とかがみんなバレンタインにくれるから、そのお返しね! 予約してたの。これからお会計。僕はいつもバームクーヘンにしてるよ!」

「へぇ、何か理由があるんですか」


 するとライアンさんは、僕にとってはとんでもないことを話し始めた。


「ホワイトデーのお返しって、お菓子によって意味が違うんだよ」

「え、そうなんですか?」

「そうそう! 一般的には、バームクーヘンはその人との長い付き合いを願うことを意味するから、僕は毎年それを送ってるんだ!
 他にも、クッキーは『あなたは友達』とか、キャンディは『あなたが好き』とか、そういう意味になるんだよ」

「へぇー、知らなかった! ちなみに、マシュマロは?」

「マシュマロはダメだよ! それは『あなたが嫌い』って意味になっちゃうから」

「…………え」

「あっ、レジ空きそう。じゃあね!」

「ま、待って! その、お返しの意味って、アリアさん知ってるかな?」

「知ってるもなにも、それ教えてくれたの、アリア姫だよ! じゃ!」


 …………。
 ……………………。

 やってもうたぁぁぁぁぁぁ!!!

 ど、どうする!? さすがにここまで知った上でマシュマロ渡せないぞ!?
 買い直す? ……そ、そうだ。そうしよう!

 急いで売り場に戻る……が、


「うっそ……」


 僕がここを離れた後、ほとんど売れてしまっていて、残っているのはマシュマロと手作り用の材料ばかり……。こ、これは……ピンチだ! ヤバイ!
 と、僕がパニックになりかけたところで、後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこにいたのは、


「ウタくん、大丈夫?」

「テラーさん……?」

「なんか、スッゴい負のオーラ漂ってたけ」

「テラーさぁぁぁぁん!!!」

「え!? ちょ、タンマタンマ!」

「たすけてくださぁぁぁい……」


 僕が今までのことを手短に話すと、テラーさんはうんうんとうなずいて、手作り用コーナーから板チョコとグラノーラを手に取った。


「キッチン貸して? 手伝ってあげるよ」

「どうにか出来ますか!?」

「これでもカフェを経営していてね」

「たっ、たたた、助かります! 本当に助かります!」

「いいから、これと、あと牛乳、買ってきて。はい」


 僕は言われるがままにチョコとグラノーラと牛乳を買うと、テラーさんと宿へ向かった。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


「お返しするのはウタくんだから、頑張って作ってね」

「が、頑張ります!」


 どうやらマシュマロを、違う何かに作り替えるらしい。材料を新たに買ってもよかったが「もったいないから」と。


「まずチョコをきざんでくださいな」

「はいっ!」


 う、チョコって案外固いな……これ、アリアさんとか大量にきざんでるのか。すごいな。


「きざんだチョコ、牛乳、マシュマロをボウルにいれて、良く混ぜて、レンジでチン」

「いかほどで」

「1分くらいかな?」

「はい! ……レンジあるっていいですね」

「電子レンジは100%グッドオーシャンフィールド製」

「ありがとうGOF」


 チンと音がしたのでボウルを取り出す。あっついなぁ。


「よーくかき混ぜて、マシュマロを溶かすように」


 ぐるぐるぐるぐるかき混ぜる。テラーさんはそれをちらっと見て、レンジを指差した。


「マシュマロ残っちゃってるね。じゃあもう30秒くらいチンしよう!」

「これ、テラーさん作ったことあるんですか?」


 レンジにボウルを入れながら聞くと、テラーさんはうなずく。


「遠い昔、中学時代にね。ネットで見たんだけど、なんのやつだったか忘れちゃった」


 レンジが再び鳴る。取り出して混ぜていると、テラーさんがグラノーラをざばっと入れた。


「ほーい、混ぜて混ぜて!」


 そして、混ぜたものをパットに移し、ラップをかけ、上からぎゅっと押して、冷蔵庫で冷えるのを待つ。


「あれ、冷えたらスティック状に切ればチョコバーになるから」


 そして、アイテムボックスからラッピング用の紙を取り出す。


「私の余りでよければ使ってくださいな」

「本当にありがとうございます!」

「アリアさんたちなら気にしないと思うけどね。……あとまぁ、折角だから」

「…………?」


 その2時間後、


「おおおお! すげぇウタ兄!」

「ウタさん、いつの間にこんな隠し芸が……!」

「……いや、実はテラーさんに手伝ってもらってて」


 僕らが作ったチョコバーはかなり好評だった。ペーパーのおかげで見た目もかわいい。
 さらにテラーさんは、一緒に入ってた飴で簡単な飴細工まで一緒に作ってくれたのだ。オーブンで加熱したのを手で形にする面倒で地味な作業だけど、綺麗なバラになった。


「この花見たことないなぁ」

「あ、それは僕の住んでたところに咲いてた花です」


 ……バラにしたいと言ったのは僕だ。一人五個ずつ。ピンクと黄色とオレンジのバラ。
 そのバラの意味は……なんて、ちょっと女々しいかな。これは僕だけの秘密にしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...