チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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魔王だよ! 全員集合!

起死回生

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「っ…………」


 いつかと同じだ。ミーレスと戦った、あのときと同じだ。まさに敗北。圧倒的な力の差。それを見せつけられた。
 ほんの少し……ほんの少しだけ、希望を持った。このメンバーでなら、勝てるかもしれないと思った。


「……容易いものだな」


 しかし、結果はこの通りだ。僕らはこの通りボロボロで、地に伏したまま、一歩も動けないでいた。
 さっきのスキル……の、せいなのだろうか。バフもすべて解除された。『勇気』も含めて全部だ。いや、それはそもそも3分しかもたないから勝手に効果切れなのだけれど。


「ずいぶんと弄んでくれたな……。しかし、俺も魔王としてのプライドというものがある。ただの冒険者ごときに負けるわけにはいかないのさ」


 僕は、横目で仲間を見る。……ポロンくんとフローラとスラちゃん。三人は動かない。気を失っているようだ。
 アリアさんは僅かに体を起こそうとしているのが分かる。意識はあるけれど、動くのは厳しい。……そんな状態だ。だとすると、


「……ん? なんだ、まだ動けたのか?」


 今、動けるのは僕だけだ。
 バフは全て解除された。しかしそれは、後付けのものだけだった。

 『女神の加護』それだけが、僕に、今、立ち上がる力を与えていた。
 とはいえ、足はふらっふらで立っていることすらままならないし、視界もぐるぐる回っている。HPだって、徐々に回復しているとはいえ、1000ちょっとしかない。だから、ここは最善で、最速の方法をとろう。


「……ドラゴン、召喚」


 現れたドラゴンは、いつものように黒く美しく、この状況を見て、僕と魔王の間に割って入る。
 思わず……というよりは力がもたず、僕はそのドラくんの背中に倒れ込む。


「ウタ殿! これは……塊'sはどうした。何をすればいい!?」

「ドラゴンか……。まぁ、ドラゴンの一匹程度、俺にかかればどうということじゃないな」

「魔王……、我が主と、その仲間を痛めつけた代償は大きい。今ウタ殿がそう望めば、我は例え死んでも、貴様を殺すぞ」

「ふん、大切なときに呼ばれなかった存在が、何を言っているんだ。力不足と判断されたんじゃないか?」

「…………ドラくん……」

「分かっている、そういう意味で呼ばなかったのではないと、分かっている。だからあまり無理を」


 違う。そう言いたくて、僕はドラくんの背中に、出来る限り強くしがみついた。


「――――」

「聞いて、ほしいんだ」

「なんでもいえ。なんでもやろう」

「…………」

「……ウ、タ…………」


 僕はドラくんの背を支えにして、アイテムボックスから万能薬を取り出すと、一気に飲み干した。……ぅ、酸っぱい……。でも、体は楽になった。動ける。
 しっかりと立ち上がって、僕は、ドラくんの前に出た。


「ドラくんは、いざってときの切り札だったんだ」

「……は?」

「……僕がここで食い止めるから、ドラくんは、みんなを連れてクラーミルに戻ってほしい」

「なっ……何を言うかと思えばお主、正気か!?」

「正気だよ。……可能性があるのは、僕しかいない」


 『勇気』がもう一度発動する可能性。発動しなくて負けて死んだとしても、もう一度挑むことが出来るチャンス。……塊'sを頼ることが出来ないのなら、やっぱり僕が、みんなを守るしかないんだ。


「ウタっ! ……ふざけるな、お前……ふざ、けるなよ……」


 振り向くと、アリアさんは必死に、ふらふらと立ち上がり、僕と同じように回復薬を飲んだ。


「……街に戻れば、魔王を倒す手段、結界を壊す手段……見つかるかもしれません。だから」

「それならっ……私も残って」

「アリアさんは、命が一つしかありませんから」


 不意に、魔王が笑い出す。崩れた天井から覗いていた青空が、一気に積乱雲に覆われ、雷と雨を降らせ始めた。


「逃げられると思うなよ? ここは魔王城。城の中はもちろん、この島全体、俺のテリトリーだ。逃がしはしない。全員殺してやる」


 魔王が手を前に突き出す。そこから、数えきれないほどの槍が生まれ、僕らに襲いかかる。守りきれない……! あー、もう!


「全部僕にこいってば!」

「――威勢がいいな、そうしてやろう」

「ウタ殿!」


 魔王は僕がいった通り、全ての槍の矛先を僕に向けた。ドラくんやアリアさんがガーディアかなにかで少し数を減らしてくれたけど、それ以外のものは、全部僕に突き刺さり、僕はなすすべなく、血を吐きながら地面に倒れる。


「ウタっ!」

「アリアさ……逃げ」

「逃げるものか! お前だって逃げなかったじゃないか!」

「……おい、あれはなんだ」


 ドラくんの声。おぞましい気配にハッとして魔王の方へ目を向けると、目の前には、さっき見たのと同じ魔方陣があった。


「……あの呪文を、もう一回……?!」

「そんな――」


 僕らの淡い願いもむなしく、魔法は意図も簡単に放たれ


「……終わりだ。『堕天使』」


 そして、


「――Ag、銀鏡反応」

「は――」


 意図も簡単に、弾き返された。いや、反射したというのが正しいのか? 魔王が放った魔法は、そのまま魔王に。僕らにはなんのダメージも入らなかった。
 ……なんだ、今のは。意味が分からないままその方向を見ていると、頭上から、5つの影が跳び降りてきた。


「……なぜだ」


 魔王の、そんな声が聞こえた気がした。五人の中の、一人が呟く。


「私たちが、結界ごときから出てこれないとでも思った?」

「別に、出てくるくらい簡単なんだよねー。ジュノンが言ったから出ていかなかっただけで」

「あれくらい出てこれないと、最強パーティー名乗れませんって」


 五人――個性の塊'sは、そう言って笑っていた。
 不意に、ジュノンさんが振り向き、僕に笑いかける。


「ごめーん、ちょっと様子見すぎた。ま、とりあえず休んでなよ。あいつ倒すからさ」


 そして、全員が臨戦態勢に入った。刀に手をそえ、その状態のまま、おさくさんが僕らに言う。


「首と四肢だけつなげておきな。そしたら何とかしてやるからさ!」


 そして、


「さて、起死回生の時ですよ。みなさん。
 ――殺るよ」


 それを合図に、僕らは、個性の塊'sの本気を見ることになった。
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