チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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信じるべきは君か悪魔か

悪魔

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 あのとき……あの日の、あの景色は、紛れもなく『地獄』だった。

 人が人を殺す……。それも、酷く惨く、残酷に……。ドラゴンであり、人の死を見飽きているくらいだった我であったとしても、目を逸らしたくなるくらいには異常だった。

 マルティネスの国民も、クラーミルの国民も、惨殺を好むようなお国柄ではなかったはずだ。
 どちらかといえば温厚なマルティネスと、気高く上品なクラーミル。どう考えたとしても、おかしかった。

 しかしそれは目の前で起こっていて、ドラゴンの我が出ていったところで、状況が悪化するだけだった。
 それでも、その時なにが起こっていたのか知りたくて、色んなつてを使い、調べた。

 まず一つ、この戦争の原因は分からないと言うこと。
 なぜ分からないか? あまりにも突発的だったからだ。どちらからと言うわけでもなく、ほぼ同時に、二つの国は攻めいった。そして、標的を見つけては原型がなくなるまで叩き潰すのだ。

 二つ、この戦争に関わっていたのは、王族ではなかった。
 なぜか? 理由がわからない……つまり、王族や政府からの指示はなく、兵士や騎士、その他大勢の一般人が自ら武器を取り、魔法を放ち、人を殺しに行ったというのだ。
 マルティネスもクラーミルも大混乱だった。王族は何かの気まぐれなのか、正気を保ったままでいた。しかし、納めることもできなかった。

 三つ、市民の力が異常に高かった。騎士や兵士など、普段から戦っている者も、その力が高まっていた。だからこそ、被害が大きくなった。
 なぜ市民が強かったのか? なぜ力が高まったのか? ……さっぱり分からない。が、一つ思い当たることがある。それは、四つ目の分かったことでもある。

 四つ……。戦い、殺し、争っている人間は、誰一人としてまともな目をしていなかった。具体的にはどういうことかと言えば、『生きることを全く考えていない』ということだ。
 普通人間は、『生きること』を第一に考えるだろう? しかし、違った。死を全く恐れていなかった。だからこそ、普段では決して出せないような力を発揮したのだ。

 『生きること』を放棄すれば、『殺すこと』だけに集中できるからな。だからこそ、戦闘能力が高かったのかもしれない。しかし、その代償に正気を失った。

 ……そして、五つ目は――――。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈


 食事を終え僕らはドラくんの話に聞き入っていた。
 ……生きることを、放棄する……。それは、どれだけの覚悟をもって、どれだけの悲しみを背負って、やったことなのだろうか?

 もし、まさに人を殺しているというその最中に、ふと、正気が戻ったとしたら……その人は、いったいどうしたのだろうか?

 自殺……? それとも、今度こそ本当に正気を失ってしまうのか。


「……大丈夫か? お主ら……、あまりいい話ではないと前置きはしたが、それにしてもだろう?」

「……そうだな」


 アリアさんはその気持ちも一緒に飲み込むように、カップに半分ほど残ったブラックのコーヒーを一気に飲み干した。僕も、すっかり湯気が消え、さめてしまった紅茶を一口すすった。


「レイナも、大丈夫か?」

『私は大丈夫。ポロンくんと、フローラちゃんは? スラちゃんは、以外と大丈夫そうだけど』

「お、おいら大丈夫だい!」

「私も大丈夫ですよ。ポロンは無理しないの」

「うぅ……」

「ポロンだっさーい!」

「うっさいな!」


 ……僕としては、スラちゃんが平気なのは以外だった。もっと怯えていても不自然じゃないのに…………。


『ぼくがしっかりしてなきゃ、ウタたちに心配かけちゃう』

「え?」

「ん? なに、ウタ?」

「スラちゃん、今なにかいった……?」

「え? 何も言ってないよ?」


 ……そういえば、あのとき聞こえた声。レイナさんの声を聞いて確信した。あれは、レイナさんの声をだった。
 ……なんかへんだ。最近、誰も喋っていないのに、その声が聞こえることがある。


「……話してよいか?」

「あ、うん、ごめん」


 ドラくんは、僕を見る。出会ったときから、人になった今も一緒の金色の瞳……。それは、店の照明に反射して、鈍く輝いていた。


「……本当に大丈夫か? お主、最近ボーッとしてることが多いぞ?」

「そうかな?」

「……まぁいい。
 今まで話したことを総合した上で、一つ、仮説ができる。この一件には――悪魔が、関わっているのではないかと」

「悪魔……?」


 いまいちピンと来ない僕に、ドラくんは補足する。


「ものの例えではない。本物の悪魔だ。悪魔は、人の心を操り、疑心暗鬼にさせ、コントロール出来る存在だと言われている。
 そして、それに混乱しあわてふためく人間を見るのが大好きな存在だ、ともな」

「……つまり、あの戦争は、悪魔のお遊びだったかもしれない……そういう、ことか?」


 ……なんだ、それ。そんなことで、人は殺しあったのか? ただ、退屈しのぎとでもいうように? そんなの……。


「……あんまりじゃ、ないですか」

「…………」

「当時、マルティネスとクラーミルは、ミネドールという特殊な国を除いて、お互いに一番親交があったんじゃないか? 人ではないが、我はそう思った。だからこそ……」


 悪魔はそれが崩れるのを見たかった。
 ……いやだ。納得がいかない。

 しかし、きっとそれが真実だ。
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