チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

文字の大きさ
255 / 387
信じるべきは君か悪魔か

「なにか」

しおりを挟む
「…………」

「……なんだ、ウタ。大丈夫か?」

「あ……大丈夫です」

「絶対、無理はするなよ」

「はい」


 無理なんか全くしていない。なのにどうしてこうぎこちない反応をしてしまうかと言えば、何か……うん。アリアさんの手を握っていると、ふわふわとして、あたたかい気持ちが胸の中で渦巻いて、変な気分になるのだ。
 ……無論、嫌な気持ちではないから、無理をしているとは違うのだが、それでも何か……変な気持ち、というのには変わりない。


「……あの、アリアさん」

「なんだ?」

「やっぱり手……離しちゃダメですかね?」

「だーめーだ! ぶっ倒れるだろ、お前」

「そんなぁ」


 ずっとこのままじゃ……それこそぶっ倒れそう。そう思ってため息をつくと、手を握るアリアさんの力が、ほんの少し和らぐ。


「……そんなに嫌か?」

「い、嫌じゃないです! 嫌っていうか……嫌じゃないからこそ困ってるというか……」

「なに言ってんだ?」

「ごめんなさい、僕も分からないです」

「この先に開けた空間があります。その空間の奥に、下へと続く階段があるはずです。そこを下に行きましょう」


 ブリスさんが僕らに声をかけ、先へと進む。ふとその時、ドラくんとスラちゃんの会話が聞こえてきた。


「……あえて聞くのだが、スライムとは、いわゆる、最弱の魔物だろう?
 しかしお主は人の姿をとっている」

「うん……それで?」

「単刀直入に聞くと……どこまで戦える?」

「ウタを、守れるくらいには……かな」

「ではもう一つ聞こうか。……『なに』が見える? あの向こうに」


 『なに』が見える……?
 目の前にあるのは、壁だ。その端の辺りに人一人やっと通れるほどの、小さな入り口がある。
 この奥に……『なにか』いるのか?


「……見えるものは、あるよ。でもね……どう考えても、おかしいんだよ、あれ。だって、入れるはずないもん、あの入り口から」

「そうすると……あるいは、」

「かもしれないね。……ブリスー!」


 スラちゃんが呼び止めると、ブリスさんは入り口に入るのをやめた。


「どうかしましたか?」

「我らが先にいく。お主らはあとからついてこい」

「待て、何があるんだ、向こうに」

「……もしかして、魔力が薄い原因になってる、『なにか』とか、いるの?」


 僕が訊ねるとスラちゃんは大きく首を振り、いつになく真剣な表情で僕を見ていた。


「……違うよ。だって…………『あれ』も、正気を無くしてるんだもん」

「お、おいらちょっとよく分からないんだけど……どういうこと? 『あれ』ってなに? あっちに何がいるんだ!?」

「あのねポロ…………ちょっと待って」


 スラちゃんが目線を入り口に向ける。……僕も気がついた。ドラくんは即座にブリスさんを押し退け、一番前へと進む。スラちゃんは、僕とアリアさんの前に。アリアさんは、左手で、動けないレイナさんの手を引いて、無理矢理下がらせる。
 遺跡を揺るがすような、大きな振動……。入り口の方からだ。見れば原因はすぐにわかる。

 ――手、だ。

 巨大な手。それも、ごつごつとした、灰色の、岩のような、手。いや、手の形をした岩、の方が正しいのかもしれない。
 大きさは僕の体半分くらい……だろうか? 少なくとも1メートル弱はありそうだ。

 手は、何かを探すように地面を触っていたが、やがて、すごすごと中へと戻っていく。


「……下がっていろ。決して、我より前に出るでないぞ」


 ドラくんがそう言い、グッと足に力を込めたのが分かった。そのつぎの瞬間、再び大きな地響きが起こる。地震のようにぐらぐらと揺れ、思わずよろける。


「ウタっ……」

「だ、大丈夫ですよ。僕は……」

「お前の『大丈夫』は、高確率で大丈夫じゃないだろ」

「そんなことは」

「ある」


 再び、大きな衝撃。そして、それと同時に、目の前の巨大な分厚い壁が、崩れ去る。


「……このサイズは、何年ぶりだろうな」


 ふと、ドラくんが呟く。少なくとも『普通の状態』ではない魔物が、そこにはいた。
 姿を現したのは巨大な岩の塊。いくつもの大きな岩が積み重なり、一つの魔物となっているのだ。ごつごつとした輪郭、顔の部分の、少し穴が開いているところは、目……なのだろうか?
 まぁそんなことより、サイズだ。ドラゴンになったドラくんと、たいして変わらないほどの大きさだった。5メートル……いや、7メートルくらいあるのだろうか? 小さな遺跡の一室を陣取り、威厳のある顔つきで、まるで、自分は門番だとでも言いたいかのように僕らを見下ろしてくる。

 何もかもが異常すぎて、訳がわからない。


「ゴーレム……?! でも、ゴーレムって普通、身長1、2mくらいですよね?!」


 ゴーレム……聞いたことは、ある。岩の魔物として、RPGゲームやラノベでよく出てくる魔物。
 しかし……やはり、大きすぎる。大きくても普通描写されるのは、人間よりも大きいくらいとか、少し見上げるくらい、とか。


「……ダメだな。これはかなり厄介な相手だ。創造者の指示を受けていないのか……?」


 ドラくんが呟く。それを聞いて改めて見てみると、確かにまともではなさそうだ。もともとよく見えないであろう目は、そこにあるのかすらわからない。
 ……どこか操り人形のように動くゴーレム。酷い違和感を感じていた。


『勝ち目は、あるんですか?』

「無いことはないが……」


 ドラくんが言葉に詰まる。……きっと、倒すことはできるのだろうが、僕らに負担がかかるのだ。


「……まぁ、とにかくやってみよう。お主ら、後ろを頼んだぞ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...