チート能力解放するにはヘタレを卒業しなきゃいけない

植木鉢たかはし

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闇夜に舞う者は

優先順位

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 朝、目が覚めると同時に、僕はとてつもない違和感を覚えた。……ずっとそこにあった、例えば、自分の右腕が、いつの間にか無くなっているかのようか違和感。
 ばっと飛び起きて眼鏡をかけ、部屋を見渡す。

 ……五人。
 ここにいるのは、五人だ。
 時計を見る。……まだ、四時だ。まだまだ、みんな寝ている時間だ。一番早いドラくんだって、五時だ。


「…………ドラ、くん?」


 ドラくんがいない。スラちゃんもいない。僕はベッドから飛び降り、着替えもせずに外に飛び出した。飛び出して、宿から一歩外に出たところ……そこに、スラちゃんはいた。


「スラちゃん……!」


 するとスラちゃんは、下手くそな笑顔をこちらに向け、なんとかといった感じで笑ってみせた。


「…………ウタ」

「スラちゃん、なにやってるの!? ……ドラくん、ドラくんは!?」

「……ぼく、止めようとしたんだ。でも……ドラくん、もう全部一人で決めてたから……止めきれなくて。
 …………ごめんなさい」

「……いいから、ね? いいから……」


 僕がその体を抱くと、スラちゃんは僕にしがみつき、堪えていたのか、一気に泣き始めた。
 ……なんとなく、状況は分かった。ドラくんの変化には、僕もそれとなく気づいていた。でも、知らないふりをして蓋をした。これは、僕の責任だ。


「スラちゃんは、わるくないから……」


 向かったとすれば……ニエルの場所。そこがわかるのかは分からないけれど、きっと、いるであろう場所に向かったはずだ。
 だって……もしそれで彼と会うことができて、倒せればすべてが解決する。倒せなかったとしても、僕らが襲われたとき、盾になることくらいは出来るはず。……そう、考えたに違いない。


「……とりあえず、悪いけどアリアさんたちを起こそう。それで、ドラくんを追いかけないと」

「……うん」


 僕はスラちゃんを抱き上げて、部屋へと戻る。そして、寝ているアリアさんたちを起こす――


「あっ、よかったウタ、スラちゃん!」

「なぁ、ドラくんがいねーんだよ!」

「今から探しにいきませんか!?」

「えっと、えっと、俺もいく!」

「……なんだ、みんな起きてたのか」


 思わず、くすりと笑ってしまった。本当……お互いのこと、大好きだよな、僕らは。それがUnfinishedの良いところであり……僕が負い目を感じる一番の部分でもあるのだけれど。


「スラちゃん、ドラくん、どこに行くって言ってた?」

「昔の住み処、だって。でも場所は教えてくれなくて」

「昔の住み処か……よし、それならある程度洗い出せるかもしれないぞ」

「本当ですか!?」


 驚く僕に、アリアさんはうなずく。


「まぁ、ざっくりだがな。……図書館だ。リード、この街にも図書館か資料館はあるだろう? 案内してくれ」

「わ、分かった。こっち!」


 駆け出したリードくんについていくと、5分もしないうちに図書館のような建物にたどり着いた。が、この時間だ。閉まっているらしい。


「くそ……やっぱりダメか」

「……アリア姉、何が見たくてここに来たの?」

「過去……5~3年前の、この街について記録してある手帳かなにかがあるんじゃないかと思ってな。ドラくんの話では手法は決まっているらしいし、特徴が当てはまる事件を洗えば、大体の場所が分かると思ったんだ。
 ……でも、まぁ仕方ない。待つか。ここが開くのはいつだ?」

「えっと、10時」

「5時間もなにもできないんですか……?」


 そんなことを話す僕らに、ポロンくんが自慢げに話す。


「な!」

「ん?」

「どうしたポロン」

「……おいら行ってくるよ、あの中」

「……え、なに言ってるの!? ダメだよ!」

「大丈夫、おいらだけ入って、見て覚えて帰ってくるだけだからさ」

「そういう問題じゃなくて……ポロンくん、大丈夫なの? その……」


 言いかけた僕に、にっとポロンくんは歯を見せて笑う。まるで……絶対に大丈夫だって言ってるみたいだった。


「おいら、結構凄腕だったんだぞ? 侵入する系」

「対人は下手だったけどな」

「それは言わなくていいだろアリア姉! ……おほん。とにかくまぁ、おいらに任せて見てよ。不安って言うか、引け目はあるけどさ、物事には優先順位ってのがあるだろ?
 盗んだりしてる訳じゃないし、何かあったとしても普通は罰金程度で済む話だよ。お金とドラくんだったら、おいらはドラくんを選ぶ」

「……どうするんだ、ウタ?」


 僕はポロンくんを見た。自慢げに僕をまっすぐに見て笑うその瞳に、迷いは微塵も感じなかった。
 僕がいくら止めても無駄だ。行くと決めたら、ポロンくんはいく。ならば僕は……それでいいんだと、最後に一押ししてやるしかない。


「……分かった。そこの路地に隠れてる。10分で帰っておいで。それまでに見つからなかったらすぐ戻ること。いい?」

「……おう。おいらに任せとけ!」


 そう嬉しそうに笑ったポロンくんは、すぐに『窃盗』を発動させ、ひっそりと図書館の中に入り込み……しばらくして、約束通り帰ってきた。


「場所、大体分かったぞ!」
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