314 / 387
闇夜に舞う者は
優先順位
しおりを挟む
朝、目が覚めると同時に、僕はとてつもない違和感を覚えた。……ずっとそこにあった、例えば、自分の右腕が、いつの間にか無くなっているかのようか違和感。
ばっと飛び起きて眼鏡をかけ、部屋を見渡す。
……五人。
ここにいるのは、五人だ。
時計を見る。……まだ、四時だ。まだまだ、みんな寝ている時間だ。一番早いドラくんだって、五時だ。
「…………ドラ、くん?」
ドラくんがいない。スラちゃんもいない。僕はベッドから飛び降り、着替えもせずに外に飛び出した。飛び出して、宿から一歩外に出たところ……そこに、スラちゃんはいた。
「スラちゃん……!」
するとスラちゃんは、下手くそな笑顔をこちらに向け、なんとかといった感じで笑ってみせた。
「…………ウタ」
「スラちゃん、なにやってるの!? ……ドラくん、ドラくんは!?」
「……ぼく、止めようとしたんだ。でも……ドラくん、もう全部一人で決めてたから……止めきれなくて。
…………ごめんなさい」
「……いいから、ね? いいから……」
僕がその体を抱くと、スラちゃんは僕にしがみつき、堪えていたのか、一気に泣き始めた。
……なんとなく、状況は分かった。ドラくんの変化には、僕もそれとなく気づいていた。でも、知らないふりをして蓋をした。これは、僕の責任だ。
「スラちゃんは、わるくないから……」
向かったとすれば……ニエルの場所。そこがわかるのかは分からないけれど、きっと、いるであろう場所に向かったはずだ。
だって……もしそれで彼と会うことができて、倒せればすべてが解決する。倒せなかったとしても、僕らが襲われたとき、盾になることくらいは出来るはず。……そう、考えたに違いない。
「……とりあえず、悪いけどアリアさんたちを起こそう。それで、ドラくんを追いかけないと」
「……うん」
僕はスラちゃんを抱き上げて、部屋へと戻る。そして、寝ているアリアさんたちを起こす――
「あっ、よかったウタ、スラちゃん!」
「なぁ、ドラくんがいねーんだよ!」
「今から探しにいきませんか!?」
「えっと、えっと、俺もいく!」
「……なんだ、みんな起きてたのか」
思わず、くすりと笑ってしまった。本当……お互いのこと、大好きだよな、僕らは。それがUnfinishedの良いところであり……僕が負い目を感じる一番の部分でもあるのだけれど。
「スラちゃん、ドラくん、どこに行くって言ってた?」
「昔の住み処、だって。でも場所は教えてくれなくて」
「昔の住み処か……よし、それならある程度洗い出せるかもしれないぞ」
「本当ですか!?」
驚く僕に、アリアさんはうなずく。
「まぁ、ざっくりだがな。……図書館だ。リード、この街にも図書館か資料館はあるだろう? 案内してくれ」
「わ、分かった。こっち!」
駆け出したリードくんについていくと、5分もしないうちに図書館のような建物にたどり着いた。が、この時間だ。閉まっているらしい。
「くそ……やっぱりダメか」
「……アリア姉、何が見たくてここに来たの?」
「過去……5~3年前の、この街について記録してある手帳かなにかがあるんじゃないかと思ってな。ドラくんの話では手法は決まっているらしいし、特徴が当てはまる事件を洗えば、大体の場所が分かると思ったんだ。
……でも、まぁ仕方ない。待つか。ここが開くのはいつだ?」
「えっと、10時」
「5時間もなにもできないんですか……?」
そんなことを話す僕らに、ポロンくんが自慢げに話す。
「な!」
「ん?」
「どうしたポロン」
「……おいら行ってくるよ、あの中」
「……え、なに言ってるの!? ダメだよ!」
「大丈夫、おいらだけ入って、見て覚えて帰ってくるだけだからさ」
「そういう問題じゃなくて……ポロンくん、大丈夫なの? その……」
言いかけた僕に、にっとポロンくんは歯を見せて笑う。まるで……絶対に大丈夫だって言ってるみたいだった。
「おいら、結構凄腕だったんだぞ? 侵入する系」
「対人は下手だったけどな」
「それは言わなくていいだろアリア姉! ……おほん。とにかくまぁ、おいらに任せて見てよ。不安って言うか、引け目はあるけどさ、物事には優先順位ってのがあるだろ?
盗んだりしてる訳じゃないし、何かあったとしても普通は罰金程度で済む話だよ。お金とドラくんだったら、おいらはドラくんを選ぶ」
「……どうするんだ、ウタ?」
僕はポロンくんを見た。自慢げに僕をまっすぐに見て笑うその瞳に、迷いは微塵も感じなかった。
僕がいくら止めても無駄だ。行くと決めたら、ポロンくんはいく。ならば僕は……それでいいんだと、最後に一押ししてやるしかない。
「……分かった。そこの路地に隠れてる。10分で帰っておいで。それまでに見つからなかったらすぐ戻ること。いい?」
「……おう。おいらに任せとけ!」
そう嬉しそうに笑ったポロンくんは、すぐに『窃盗』を発動させ、ひっそりと図書館の中に入り込み……しばらくして、約束通り帰ってきた。
「場所、大体分かったぞ!」
ばっと飛び起きて眼鏡をかけ、部屋を見渡す。
……五人。
ここにいるのは、五人だ。
時計を見る。……まだ、四時だ。まだまだ、みんな寝ている時間だ。一番早いドラくんだって、五時だ。
「…………ドラ、くん?」
ドラくんがいない。スラちゃんもいない。僕はベッドから飛び降り、着替えもせずに外に飛び出した。飛び出して、宿から一歩外に出たところ……そこに、スラちゃんはいた。
「スラちゃん……!」
するとスラちゃんは、下手くそな笑顔をこちらに向け、なんとかといった感じで笑ってみせた。
「…………ウタ」
「スラちゃん、なにやってるの!? ……ドラくん、ドラくんは!?」
「……ぼく、止めようとしたんだ。でも……ドラくん、もう全部一人で決めてたから……止めきれなくて。
…………ごめんなさい」
「……いいから、ね? いいから……」
僕がその体を抱くと、スラちゃんは僕にしがみつき、堪えていたのか、一気に泣き始めた。
……なんとなく、状況は分かった。ドラくんの変化には、僕もそれとなく気づいていた。でも、知らないふりをして蓋をした。これは、僕の責任だ。
「スラちゃんは、わるくないから……」
向かったとすれば……ニエルの場所。そこがわかるのかは分からないけれど、きっと、いるであろう場所に向かったはずだ。
だって……もしそれで彼と会うことができて、倒せればすべてが解決する。倒せなかったとしても、僕らが襲われたとき、盾になることくらいは出来るはず。……そう、考えたに違いない。
「……とりあえず、悪いけどアリアさんたちを起こそう。それで、ドラくんを追いかけないと」
「……うん」
僕はスラちゃんを抱き上げて、部屋へと戻る。そして、寝ているアリアさんたちを起こす――
「あっ、よかったウタ、スラちゃん!」
「なぁ、ドラくんがいねーんだよ!」
「今から探しにいきませんか!?」
「えっと、えっと、俺もいく!」
「……なんだ、みんな起きてたのか」
思わず、くすりと笑ってしまった。本当……お互いのこと、大好きだよな、僕らは。それがUnfinishedの良いところであり……僕が負い目を感じる一番の部分でもあるのだけれど。
「スラちゃん、ドラくん、どこに行くって言ってた?」
「昔の住み処、だって。でも場所は教えてくれなくて」
「昔の住み処か……よし、それならある程度洗い出せるかもしれないぞ」
「本当ですか!?」
驚く僕に、アリアさんはうなずく。
「まぁ、ざっくりだがな。……図書館だ。リード、この街にも図書館か資料館はあるだろう? 案内してくれ」
「わ、分かった。こっち!」
駆け出したリードくんについていくと、5分もしないうちに図書館のような建物にたどり着いた。が、この時間だ。閉まっているらしい。
「くそ……やっぱりダメか」
「……アリア姉、何が見たくてここに来たの?」
「過去……5~3年前の、この街について記録してある手帳かなにかがあるんじゃないかと思ってな。ドラくんの話では手法は決まっているらしいし、特徴が当てはまる事件を洗えば、大体の場所が分かると思ったんだ。
……でも、まぁ仕方ない。待つか。ここが開くのはいつだ?」
「えっと、10時」
「5時間もなにもできないんですか……?」
そんなことを話す僕らに、ポロンくんが自慢げに話す。
「な!」
「ん?」
「どうしたポロン」
「……おいら行ってくるよ、あの中」
「……え、なに言ってるの!? ダメだよ!」
「大丈夫、おいらだけ入って、見て覚えて帰ってくるだけだからさ」
「そういう問題じゃなくて……ポロンくん、大丈夫なの? その……」
言いかけた僕に、にっとポロンくんは歯を見せて笑う。まるで……絶対に大丈夫だって言ってるみたいだった。
「おいら、結構凄腕だったんだぞ? 侵入する系」
「対人は下手だったけどな」
「それは言わなくていいだろアリア姉! ……おほん。とにかくまぁ、おいらに任せて見てよ。不安って言うか、引け目はあるけどさ、物事には優先順位ってのがあるだろ?
盗んだりしてる訳じゃないし、何かあったとしても普通は罰金程度で済む話だよ。お金とドラくんだったら、おいらはドラくんを選ぶ」
「……どうするんだ、ウタ?」
僕はポロンくんを見た。自慢げに僕をまっすぐに見て笑うその瞳に、迷いは微塵も感じなかった。
僕がいくら止めても無駄だ。行くと決めたら、ポロンくんはいく。ならば僕は……それでいいんだと、最後に一押ししてやるしかない。
「……分かった。そこの路地に隠れてる。10分で帰っておいで。それまでに見つからなかったらすぐ戻ること。いい?」
「……おう。おいらに任せとけ!」
そう嬉しそうに笑ったポロンくんは、すぐに『窃盗』を発動させ、ひっそりと図書館の中に入り込み……しばらくして、約束通り帰ってきた。
「場所、大体分かったぞ!」
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる