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自分の声は聞こえますか?
ダークドラゴン
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『一に右足、二に左足、三四が腕で五に頭』
……過去。それを思い出すよりも前に、頭の中にはそんな言葉が響いた。ハッとして振り向けば彼が……ニエルが立っていた。
しかし、それは本人ではない。遣えていた過去がある、我が一番よくわかっている。目の前にいる彼は、あの彼よりも、ずっとずっと……からっぽに見えた。
『ダークドラゴン。……俺が、お前を使役する』
あぁこれは……我が彼に使役される、その直前の記憶だ。このあと我は出来るもんならやってみろと声をかけ……あっさりと使役されてしまった。そうして龍王の加護もそのままにニエルを倒し逃げ出すまで、人の死を見せつけられてきた。
「……ニエル、今ならわかるぞ。このときの我に、お前を倒すことは出来ない。その理由までしっかりとな」
『……へぇ? 言ってみれば? それが合っているかどうか、ジャッジしてあげるよ』
ニエルは、ニエルであって、そうでない。にやにやとした笑みを浮かべながら、我の答えを待っていた。
「……このときの我は、一人だった。一人で、お主に挑んだ。……お主は一人ではなかった。殺し続けてきた人の怨念、怨嗟の声でさえ、お主は力に変えていたのだな」
『一人? 仮にも西の王だというのに、一人か。笑わせてくれるな。他の方角のドラゴンもいた。仲間のドラゴンもいた。俺の方がずっと一人だった』
「お主は一人でも十分に生きぬく力を持っていた。しかし……我はそうではなかった」
本当に……愚かだった。今ならばそう思う。まだレベルが100に達していないあの時、周りに持ち上げられていい気になっていたのかもしれない。
「支えられていたことに気づかなかったのだ。我は、決して一人では生きていなかった。それを、一人で生きていけるのだと勘違いし、結果、お主に足元を掬われた。ただの馬鹿だった」
『ふーん……それが、答え?』
「そうだ」
『今は一人じゃないから勝てる、って解釈でいいのか?』
「……あぁ」
『……落第点だな』
ニエルは、我に向かって魔法を放つ。それを避け、ハッと顔をあげると、彼の手に、一人の人間がいた。
それは、ウタ殿だ。無論、それを偽物には違いないのだが、我を動揺させるのには十分な力があった。
「ウタ殿……!」
『お前は確かに、自分以外の力を手にいれたさ。……でも、その逆も然りだ』
「何が言いたい」
『自分以外の強さと共に、弱さも手に入れた』
ニエルは静かに笑うと、その体を床に叩きつけた。血が通っているのか分からないようなその体は、床に打ち付けられ、鈍い音と共に軋んだ。
駆け寄りたくなる気持ちを……ぐっと押さえつけた。あれは違う、本物じゃない。駆け寄ったところで返り討ちに遭うのがおちだろう。
『……無慈悲なやつだな』
ニエルがその体を蹴りあげた。偽物の『ウタ』がその顔を苦痛に歪ませる。
『結局、見ているだけなんじゃないか、お前は』
「……ちがう」
『何が違う? 現に今、お前はなにもしていないじゃないか? こうして……俺がこいつの腕を、腹を、踏みつけても』
鈍い音がする。目を逸らしたくて仕方がなかった。……偽物に、見えなくなっていた。
『……その体、人の体』
「…………」
『偽物はどっちだ? 人の柔い、仮初めの体を手に入れて、それで満足しているのか? それだけで、人の脆さを、痛みを、理解したつもりなのか? だとしたら、随分とおめでたい頭をしているんだな』
「……我は」
『お前にとっては何でもない攻撃でも、人にとっては「痛い」んだよ。それを俺は、よく分かっている。だからこそ――』
ニエルがスキルを発動させる。対象は……全て、ウタ殿だ。もう我は、我慢していることが出来なかった。支離滅裂がどれほどの威力があるのか良くわかっていた。でも、もう、見ているだけは出来なかった。それが偽物の作り物だとしても……壊されるのを見たくなかった。
ウタ殿の前に立ちふさがり、ガーディアを発動させた。どれくらい押さえられるかなんて分からない。でも、出来る限りやるしかない。
『……ドラくん』
「……勘違いするな、これは、自分のためだ。偽物の、お主のためではない」
……背後にいる彼が、仄かに微笑んだ気がした。そして、その指先が背に触れる。振り向くことは……出来なかった。
『分かってるよ。……僕も、自分のためだからね』
「ウ――」
背に触れた指から放たれた魔法は、我を容易に貫いた。こうなることは分かりきっていた。分かりきっていたのに……我は、結局、見過ごすだけの強さはなかったのだ。
「っはぁ…………ウタ殿……我は」
『ドラくん……ドラくんが、僕を守ってくれてるのは知ってるけど、本当に守られてるのは、ドラくんだよね?』
「…………」
言い返すことはできない。現にそうだ。我は、いつも、本当に助けるべき時に助けることが出来ない。いつも守りきれず、傷つけて、助けられる。……そんなことで、いいのだろうか。
『……お前に、今の主人に遣える資格は、あるのか? 足を引っ張ってばかりのゴミくずが』
……我に、ウタ殿を助けるだけの力も、勇気もない。何も出来ない存在だ。
助けることが出来ないのにも関わらず、ずっと傍にいる資格など……そんなもの、どこにもない。
ふと、迫りくる光の槍を見た。
……過去。それを思い出すよりも前に、頭の中にはそんな言葉が響いた。ハッとして振り向けば彼が……ニエルが立っていた。
しかし、それは本人ではない。遣えていた過去がある、我が一番よくわかっている。目の前にいる彼は、あの彼よりも、ずっとずっと……からっぽに見えた。
『ダークドラゴン。……俺が、お前を使役する』
あぁこれは……我が彼に使役される、その直前の記憶だ。このあと我は出来るもんならやってみろと声をかけ……あっさりと使役されてしまった。そうして龍王の加護もそのままにニエルを倒し逃げ出すまで、人の死を見せつけられてきた。
「……ニエル、今ならわかるぞ。このときの我に、お前を倒すことは出来ない。その理由までしっかりとな」
『……へぇ? 言ってみれば? それが合っているかどうか、ジャッジしてあげるよ』
ニエルは、ニエルであって、そうでない。にやにやとした笑みを浮かべながら、我の答えを待っていた。
「……このときの我は、一人だった。一人で、お主に挑んだ。……お主は一人ではなかった。殺し続けてきた人の怨念、怨嗟の声でさえ、お主は力に変えていたのだな」
『一人? 仮にも西の王だというのに、一人か。笑わせてくれるな。他の方角のドラゴンもいた。仲間のドラゴンもいた。俺の方がずっと一人だった』
「お主は一人でも十分に生きぬく力を持っていた。しかし……我はそうではなかった」
本当に……愚かだった。今ならばそう思う。まだレベルが100に達していないあの時、周りに持ち上げられていい気になっていたのかもしれない。
「支えられていたことに気づかなかったのだ。我は、決して一人では生きていなかった。それを、一人で生きていけるのだと勘違いし、結果、お主に足元を掬われた。ただの馬鹿だった」
『ふーん……それが、答え?』
「そうだ」
『今は一人じゃないから勝てる、って解釈でいいのか?』
「……あぁ」
『……落第点だな』
ニエルは、我に向かって魔法を放つ。それを避け、ハッと顔をあげると、彼の手に、一人の人間がいた。
それは、ウタ殿だ。無論、それを偽物には違いないのだが、我を動揺させるのには十分な力があった。
「ウタ殿……!」
『お前は確かに、自分以外の力を手にいれたさ。……でも、その逆も然りだ』
「何が言いたい」
『自分以外の強さと共に、弱さも手に入れた』
ニエルは静かに笑うと、その体を床に叩きつけた。血が通っているのか分からないようなその体は、床に打ち付けられ、鈍い音と共に軋んだ。
駆け寄りたくなる気持ちを……ぐっと押さえつけた。あれは違う、本物じゃない。駆け寄ったところで返り討ちに遭うのがおちだろう。
『……無慈悲なやつだな』
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『結局、見ているだけなんじゃないか、お前は』
「……ちがう」
『何が違う? 現に今、お前はなにもしていないじゃないか? こうして……俺がこいつの腕を、腹を、踏みつけても』
鈍い音がする。目を逸らしたくて仕方がなかった。……偽物に、見えなくなっていた。
『……その体、人の体』
「…………」
『偽物はどっちだ? 人の柔い、仮初めの体を手に入れて、それで満足しているのか? それだけで、人の脆さを、痛みを、理解したつもりなのか? だとしたら、随分とおめでたい頭をしているんだな』
「……我は」
『お前にとっては何でもない攻撃でも、人にとっては「痛い」んだよ。それを俺は、よく分かっている。だからこそ――』
ニエルがスキルを発動させる。対象は……全て、ウタ殿だ。もう我は、我慢していることが出来なかった。支離滅裂がどれほどの威力があるのか良くわかっていた。でも、もう、見ているだけは出来なかった。それが偽物の作り物だとしても……壊されるのを見たくなかった。
ウタ殿の前に立ちふさがり、ガーディアを発動させた。どれくらい押さえられるかなんて分からない。でも、出来る限りやるしかない。
『……ドラくん』
「……勘違いするな、これは、自分のためだ。偽物の、お主のためではない」
……背後にいる彼が、仄かに微笑んだ気がした。そして、その指先が背に触れる。振り向くことは……出来なかった。
『分かってるよ。……僕も、自分のためだからね』
「ウ――」
背に触れた指から放たれた魔法は、我を容易に貫いた。こうなることは分かりきっていた。分かりきっていたのに……我は、結局、見過ごすだけの強さはなかったのだ。
「っはぁ…………ウタ殿……我は」
『ドラくん……ドラくんが、僕を守ってくれてるのは知ってるけど、本当に守られてるのは、ドラくんだよね?』
「…………」
言い返すことはできない。現にそうだ。我は、いつも、本当に助けるべき時に助けることが出来ない。いつも守りきれず、傷つけて、助けられる。……そんなことで、いいのだろうか。
『……お前に、今の主人に遣える資格は、あるのか? 足を引っ張ってばかりのゴミくずが』
……我に、ウタ殿を助けるだけの力も、勇気もない。何も出来ない存在だ。
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ふと、迫りくる光の槍を見た。
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