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しおりを挟む僕らの自粛は、一週間足らずで強制終了となった。
ナガヤの関連グループから、次々と依頼が来るのだ。
断れるはずもない、依頼が。
僕らが断ったら、きっと矛先は事務所へ向かう。
これまでお世話になってきた社長や、スタッフ、タレントの仲間たちを、僕らのせいで苦しませるわけにはいかなかった。
僕らの、冗談のような短さの活動自粛は、ますます世間を笑わせた。
「悠と瞬って活動自粛するんじゃなかったっけ?」
「なんか新しいCMやってるけど、どういうこと?」
「自粛って、一週間だけなの?短すぎてビビる」
「てか一貫性なさすぎてウケる」
「言ったことには責任もとーよー」
「お子様すぎるでしょ」
聞きたくもないのに、あちらこちらからそんな声が聞こえて来る。
周りが敵だらけに思えて、救いを求めてファンの声を探しにネットの海に飛び込めば、当然のように更なる毒が僕を蝕むことになった。
「……うそ」
僕は息を呑んで奥歯を食いしばる。
「な、んで……」
そこでは、とうとう僕だけではなく、僕ら二人に対しての批判と侮蔑、憎悪と怒りが煮えたぎるようになってしまっていたのだ。
SNSの閲覧をするなと、社長が厳命していた理由を理解するしかなかった。
「悠だけじゃなくて、瞬もなんか、ダメダメだよね」
「わがまま放題のオニイチャンを黙らせることもできず、切り捨てることも出来ないんだもんね」
「一人でやっていく自信ないんじゃない?」
「昔のインタビューで良く言ってたもんね。二人で一つ、一緒じゃないと無理ぃって」
「うわキモ」
「もう十八じゃなかった?大人じゃん」
「いいトシして引くわ」
「天使チャンたちの我儘に振り回される周りの人かわいそー」
「需要なんてもうないのに、なんでこんなゴリ押しされてんの?」
「必死にマクラでもしてんじゃない?」
「ありうるわー、顔が綺麗な分、やることはえげつなさそう」
「もう飽きられてるんだし、早く消えればいいのに」
「あはは……ボロクソ……」
読んでいると、いっそ笑いが込み上げる。
どうして彼らは、他人のはずの僕らに、これほど悪感情を抱けるのだろう。
僕は顔を覆って項垂れた。
「ひどい、せかい」
悪意が禍々しく渦を巻いていて、世界は全て敵だらけだ。
多分瞬だけが、本心から、こんな僕を守ろうと戦ってくれている。
こんな僕を。
瞬にとっては、お荷物にしかならない僕を。
僕は、僕こそが瞬を苦しめてばかりいるのではないかと、気づき始めた。
形のない悪意の集合体に加えて、もうひとつ。
僕らをひどく苦しめたものがあった。
「まだ降参しないのか?」とでも言うように、予告なく現れる雪那だ。
「やぁ、お仕事は順調?」
僕らの……いや、瞬の前に現れた雪那は、いつもひどく楽しそうに、瞬に声をかける。
僕の存在は見えていないかのように、華麗にスルーだ。
「しぶとい瞬くんも、そろそろ根を上げる頃かなと思ったんだけど、どうだい?」
わざとらしく振りまかれる、濃厚なフェロモン。
僕ですらフラリと鼻を焼かれるそれを、瞬は血の滲むほどに唇を噛み締めて振り切り、背を向ける。
「降参なんて、するわけがない」
振り絞るように吐き捨てて、歩き去るのだ。
真っ赤に火照った顔で、カタカタと震えながら。
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