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神殿送りになった転生ヒロイン、隣国の皇太子のMっ気を開花させてしまったので責任を取ります

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「……ちょ、ま、俺!死んでない!?よかった……よかった!?」

俺が死なないと話が進まなくない!?俺というブレーンをなくして困ってるアルベルト様を知性派ヒロインが助け……でもいや待てここにいるのは一作目のヒロインだから、そもそも破綻してない?待って待って待って!待って!!とりあえず死にたくない!!

「あーもーうるさい!パニックにならないで?面倒だから」
「す、すみません」

心底煩わしそうに片手を振られて、真っ青な顔でどこかへとりあえず走り出そうとしていた俺は、浮かした腰をベッドに下ろした。

「この天才聖女の私が完璧に治してあげたから死んでないわよ?なんなら前より健康になってんじゃない?」
「へ!?」

あ!そうか、前作ヒロインのチート……!無尽蔵無制限の光魔法と聖魔法!?俺、それで治癒されたのか!まじか神よありがとうございます、二度目の人生も早死にしなくてよかった……!なんなら肩こりも腱鞘炎も剣胼胝もよくなってる気がする。前作ヒロインのスキルをこんな無茶苦茶特盛設定にしといてくれて、前世の俺もありがとう……!
そう内心感動していたら、バタバタバタッと今生で聞き覚えのある足音が耳に飛び込んできた。

「起きたかオリバー!準備は整った、行くぞ!」
「え!?どこに!?」

突如現れた雄々しいヒーローは、なんの説明もなく俺を引っ張り起こしながら駆け出そうとした。慌てて主人を引き留めた部下おれに、アルベルト様は輝くような笑顔で、とんでもないことを宣言する。

「我が帝位をこの手に掴みに行くのだ!」
「はぁあ!?急展開すぎません!?俺が寝ていたこの一週間で何が!?」

まだ病人用の薄いペラペラの下着みたいな服を着ているのだ。このまま連れ出されたら困る、騎士の威信が、と俺が必死に抵抗しているのを眺めながら、前作ヒロインが背後でうんざりとため息を吐いた。

「ヘナチョコ騎士くん、アンタが起きてくれて本当によかったわー。アルベルトがうるさくてうるさくて。私一人でこの猪を相手するのは限界だったのよ」
「はぁ!?」
「行くぞオリバー!いざやいざや!」
「まっ……待ってください殿下!」

前作ヒロインもとい命の恩人のユリア様が俺に向かって半眼で語る。その言葉の内容すらも脳内で整理が追いつかないうちに、笑顔のアルベルト様が嬉々として俺を担いだ。

「回復していないだろうからな!背負っていってやるぞ!お前を置いて行ったりしないから安心しろ!」
「は!?いや、え!?」

なんの話!?
全然ついていけてないんですけれど!?

そんな俺の戸惑いも気づかず、ましてや聞く気もなく、アルベルト様は俺に心ばかりのを被せて簀巻きにすると、荷物のように肩に担いで神殿の外に駆け出した。

「アルベルト様!?まず説明を……あ、二人とも、無事だったのだな!」

神殿の外に待っていた馬は四頭と、一緒に帝国から飛び出した忠義心の厚い護衛が二人。俺がうっかり安堵の息を吐いている間に、俺を担いだままアルベルト様が馬に跨った。

「さぁ、行くぞ!」
「いやいやお待ちを!?アルベルト様……そして、ユリア様!?」

状況は全然分からないが普通に考えたら、馬を走らせるのは男四人で、ユリア様はアルベルト様と相乗りでは!?なぜユリア様はお一人で騎馬してるの!?

「ユリア、乗ったか!?」
「ほーい」

その言葉とともに、ふわぁと広がる柔らかい光。ユリア様の乗る馬が、嬉しそうに嘶いた。
そして他の三馬も喜ぶように前脚を掲げる。

「みんな元気いっぱい、加護もばっちりよ。私とお馬さんは愛の絆で結ばれたから、もう人馬一体だしね」
「それもしや伝説級の聖魔法では!?」

びっくりしすぎて突っ込んでしまったが、ユリア様は気にした様子もなくあっさり答えた。

「よく分からないけどやったら出来たの」
「やったら出来たの!?」

獣を術によって使役するのではなく、心を繋いで一体になるって、……なんかで使えるかもと思って、聖典の一部に記載した伝説の聖女の仕業な気がする。どっかでサラッと出した小ネタの気がする。こんなところで効いてくるの!?

「細かいことは気にするなオリバー!ユリアは天才なんだ!」

俺が過去の自分がつけた適当設定が、あちらこちらで理不尽に煌めく世界に愕然としていると、俺を担いだままのアルベルト様が俺の真横で呵呵大笑と笑った。そして馬の腹に合図を与えて、高らかに叫んだ。

「さぁッ、いざ我らが帝国へ!!」
「うぎゃああああああただでさえ速いんですから身体強化しないでくださぁああああああいっ」
「あーはっはっはっはっはぁああああ!筋肉は正義だぁー!!」
「助けてぇえええええ」
「アルベルトまじで脳筋すぎるわ……」

新幹線の車窓並みの速さで疾走する世界と周囲を切る風の音。
気絶しそうになりながら絶叫する俺の耳に、ちっとも遅れず馬を走らせながらうんざりと呟くユリア様のため息だけは、なぜか聞こえてきた。

「ハァ……まったく、誰よこの男をにしたやつ」

キャラクター設定したの俺です、ごめんなさい。
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