今夜カフェの片隅で

1章

才能と言う名の運

「まじ、なんなの、これ」

「お、お気に召しませんでしたか？」

莉愛は出されたものを見て驚愕した。
好み通りのミルクカフェオレに、程良くマッチングした味。
素晴らしい。の一言に尽きる。
悠人は不安そうに顔をしかめていた。

「悠人。私の好み通りよ。
それに、とても、とても美味しいわ」

「ありがとうございます！」

「あなた何者？才能があるのかしら？
それとも運を持ってるのかしら？」

「オーナー、いつものを頼む。
なんだ、居たのか。ギャル女」

「あんったねぇ･･･！」

莉愛は金髪を揺らして、来店した男に怒り始めた。
悠人は何が何だか分からず、オーナーの顔色を見ていた。
オーナーの顔は穏やかで、騒がしいのにどこか平凡な日常を味わっている顔をしていた。

「悠人、この礼儀知らずの男に腕前を見せてやりなさい！」

「えぇ？！」

「お前オーナーの何だ。
俺は知らない奴に作ってもらう趣味はない」

「ほんっと無愛想な男！
そんなんだから彼女できないのよ！」

「お前だって同じだろう」

「お二人とも、佐々木さんのお茶ティーを味わってから、お話しされては？」

「そーよ！飲んでみなさいよ！
ほら！悠人！」

「か、かしこまりました！」

悠人はカタカタと震える手で作っていく。
その手を、オーナーが止めた。

「大丈夫です。彼はとても穏やかな方なので」

「･･･っ、はい」

オーナーの一言で、悠人は自分を取り戻し、さっそく作業に戻った。
彼のイメージはこれだ。
堅物の彼の奥に秘められた、優しさと平凡さ。
さぁ、彼はどんな反応をしてくれるのだろうか。