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14話 筋肉隆々の腕に宿る繊細さ
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「じゃあ、次は食器だな。」
そう叔母さんは言うと、今度は道を挟んで反対側の建物に向かう。建物の横から裏へと回ると先ほどの金属音とは違うコーンコーンといった音が聞こえてきた。
裏手は作業場になっていて、大柄な男が切り株に腰かけて、木の塊にノミを突き立てていた。周りにはまだ形になっていない木の塊が転がっている。
袖のない上着から見える両肩は筋肉隆々としていて、職人と言うより重量挙げの選手みたいだ。
「お~い。シュミット。」
叔母さんが声を掛けると手を止めて顔をあげる。太い首には愛嬌のある優しげな顔が乗っていた。
何というか、優しい熊みたいだ。
「...。」
返事はなかったが叔母さんは気にせず話し掛ける。
「今度、バルトの宿屋の向かいに甥が引っ越してくるから食器類を揃えたいんだかな。見せてもらっていいか?」
男は無言でこくんと頷くとまた作業に戻る。
「家具職人だが木工製品も得意なんだ。ほら、棚に並んでいる皿や、碗から好きなのを選んで後は枚数を伝えれば作ってもらえる。どれにする?」
「うん。」
そう返事をして、棚に並んでいる小さめの皿を一枚手に取ってみる。
「うわ~、細かい細工だね。」
土台は木製の素朴な皿なのに、皿の縁取りに細かい植物の柄がびっしりと彫られていた。
「もっとシンプルな方がいいんじゃないか?」
叔母さんは眉をしかめて皿を覗き込んだ。
まあ、叔母さんの趣味ではないかも。
「シュミットの作る食器は、質のいい木材を使っていて軽くて丈夫だし、仕上げも悪くないんだ。」
そう言って叔母さんは近くにあった大皿の表面を手で撫でた。
「ただ、装飾が懲りすぎるっていうか、普段使いの食器にこんな模様は要らないんじゃないか?見た目に反してあいつのデザインは細かすぎるぞ。」
本人には聞こえていないからと言って見た目に反してというのは失礼なんじゃないかと思う。確かにそれに関しては僕も同じように思ったけど、口に出しては言ってないぞ。
叔母さんの手にある大皿には中央に鳥の模様が彫られていて、周りには先ほどの皿とは少し違うけどやはり植物の葉の模様がびっしりと彫られている。
どうやら、自然をモチーフにした柄が多いようだ。
「あ、コップもあるんだ。」
木製のワイングラスのような形の物から、丸いコロンとした形のコップ、取っ手が付いたマグカップ型のものと色々なバリエーションのコップが並んでいる。
「ガラスとか陶器はあまり使われていないの?」
宿で使っていた食器も木製だった。
「そうだな。貴族階級の家なら使われているけど、庶民が使うのは丈夫で壊れにくい木製品が一般的だなぁ。」
なるほど、ガラスや陶磁器は高級品なのか。
じゃあ、日本から持ってこれば良いのだが、それは叔母さんと相談してなるべく不必要にあちらの世界の物を持ち込まないようにしようと決めたのだ。
調味料程度なら大丈夫だろうけど、あまりこの国に無いようなものや材質の物は人目も引く。プラスチック製品とか、まあ電気製品は持ってきても使い物にならないけど。とにかく、不審に思われないためにもあまり目立たないことが大事だ。
「それに、あっちの世界でこれだけのもの一気にそろえる金ないし。」と元の世界では死んだことになっている叔母さんは言った。僕も自分の小遣いでは絶対に無理だ。
クローディアが全部揃えると言っていたが叔母さんはそれを断った。そのかわり食材のほとんどは叔母さんの職場であるバルトさんの宿から分けてもらい、支払いはクローディアにお願いすることにした。何と言っても食べる量のほとんどは彼女が消費することになりそうだったから。
できるかぎり必要なものはこちらの世界で調達すること、これを叔母さんと僕、二人のルールにした。僕もせっかくならこの世界の食材を色々試してみたい。
できるだけ目立たないこと。昨日、宿で会った人たちには制服姿を見られてしまっているけど、今後は気を付けるに越したことはない。なので、今僕が来ている服はバルトさんが子供の頃に着ていた服と靴を譲ってもらったものだった。
素材はさらっとした綿で着物のように前合わせになっていて腰ひもで結んである。その上に袖のないベスト状の物を着ている。ベストは、ボタンはなくてスニーカーのようにひもを通して結ぶタイプだ。
下は動きやすい少し太めのズボンになっていた。何と言うか、あれだ、少しお洒落で柔らかい素材の柔道着のような感じだ。色も生成りだし。
シュミットさんの工房では叔母さんの意見を取り入れて、シンプルな中小の皿やお椀、コップ、調味料を入れるケースなどをお願いしたが、大皿だけはせっかくなので綺麗な模様が入った物を購入することにした。一応4人分揃えたのだけど、またかなりの量になってしまった。
クローディアと叔母さんと自分。もし、叔父さんが来ることがあったらと考えて4人分だ。
「あと、まな板もお願いできますか?」
木製品の工房なのだから、まな板もお願いできるだろうと思い聞いてみる。
シュミットさんはこくんと頷くと大きな板を一枚持ってきた。
どうやら、この板から切り出してくれるらしい。
大きさをこれくらいと指示すると、板に印をつけてくれてその場ですぐにガリガリと切ってくれる。
筋肉隆々の腕が、物凄いスピードであっという間に板を切り出すと今度は切り口を滑らかに削っていく。
「じゃあ、あとでまとめて配達をお願いできるか?」
叔母さんが言うとやはり無言で頷いてまた作業へ戻っていった。
結局一言もしゃべらなかった。寡黙な人だ。
そう叔母さんは言うと、今度は道を挟んで反対側の建物に向かう。建物の横から裏へと回ると先ほどの金属音とは違うコーンコーンといった音が聞こえてきた。
裏手は作業場になっていて、大柄な男が切り株に腰かけて、木の塊にノミを突き立てていた。周りにはまだ形になっていない木の塊が転がっている。
袖のない上着から見える両肩は筋肉隆々としていて、職人と言うより重量挙げの選手みたいだ。
「お~い。シュミット。」
叔母さんが声を掛けると手を止めて顔をあげる。太い首には愛嬌のある優しげな顔が乗っていた。
何というか、優しい熊みたいだ。
「...。」
返事はなかったが叔母さんは気にせず話し掛ける。
「今度、バルトの宿屋の向かいに甥が引っ越してくるから食器類を揃えたいんだかな。見せてもらっていいか?」
男は無言でこくんと頷くとまた作業に戻る。
「家具職人だが木工製品も得意なんだ。ほら、棚に並んでいる皿や、碗から好きなのを選んで後は枚数を伝えれば作ってもらえる。どれにする?」
「うん。」
そう返事をして、棚に並んでいる小さめの皿を一枚手に取ってみる。
「うわ~、細かい細工だね。」
土台は木製の素朴な皿なのに、皿の縁取りに細かい植物の柄がびっしりと彫られていた。
「もっとシンプルな方がいいんじゃないか?」
叔母さんは眉をしかめて皿を覗き込んだ。
まあ、叔母さんの趣味ではないかも。
「シュミットの作る食器は、質のいい木材を使っていて軽くて丈夫だし、仕上げも悪くないんだ。」
そう言って叔母さんは近くにあった大皿の表面を手で撫でた。
「ただ、装飾が懲りすぎるっていうか、普段使いの食器にこんな模様は要らないんじゃないか?見た目に反してあいつのデザインは細かすぎるぞ。」
本人には聞こえていないからと言って見た目に反してというのは失礼なんじゃないかと思う。確かにそれに関しては僕も同じように思ったけど、口に出しては言ってないぞ。
叔母さんの手にある大皿には中央に鳥の模様が彫られていて、周りには先ほどの皿とは少し違うけどやはり植物の葉の模様がびっしりと彫られている。
どうやら、自然をモチーフにした柄が多いようだ。
「あ、コップもあるんだ。」
木製のワイングラスのような形の物から、丸いコロンとした形のコップ、取っ手が付いたマグカップ型のものと色々なバリエーションのコップが並んでいる。
「ガラスとか陶器はあまり使われていないの?」
宿で使っていた食器も木製だった。
「そうだな。貴族階級の家なら使われているけど、庶民が使うのは丈夫で壊れにくい木製品が一般的だなぁ。」
なるほど、ガラスや陶磁器は高級品なのか。
じゃあ、日本から持ってこれば良いのだが、それは叔母さんと相談してなるべく不必要にあちらの世界の物を持ち込まないようにしようと決めたのだ。
調味料程度なら大丈夫だろうけど、あまりこの国に無いようなものや材質の物は人目も引く。プラスチック製品とか、まあ電気製品は持ってきても使い物にならないけど。とにかく、不審に思われないためにもあまり目立たないことが大事だ。
「それに、あっちの世界でこれだけのもの一気にそろえる金ないし。」と元の世界では死んだことになっている叔母さんは言った。僕も自分の小遣いでは絶対に無理だ。
クローディアが全部揃えると言っていたが叔母さんはそれを断った。そのかわり食材のほとんどは叔母さんの職場であるバルトさんの宿から分けてもらい、支払いはクローディアにお願いすることにした。何と言っても食べる量のほとんどは彼女が消費することになりそうだったから。
できるかぎり必要なものはこちらの世界で調達すること、これを叔母さんと僕、二人のルールにした。僕もせっかくならこの世界の食材を色々試してみたい。
できるだけ目立たないこと。昨日、宿で会った人たちには制服姿を見られてしまっているけど、今後は気を付けるに越したことはない。なので、今僕が来ている服はバルトさんが子供の頃に着ていた服と靴を譲ってもらったものだった。
素材はさらっとした綿で着物のように前合わせになっていて腰ひもで結んである。その上に袖のないベスト状の物を着ている。ベストは、ボタンはなくてスニーカーのようにひもを通して結ぶタイプだ。
下は動きやすい少し太めのズボンになっていた。何と言うか、あれだ、少しお洒落で柔らかい素材の柔道着のような感じだ。色も生成りだし。
シュミットさんの工房では叔母さんの意見を取り入れて、シンプルな中小の皿やお椀、コップ、調味料を入れるケースなどをお願いしたが、大皿だけはせっかくなので綺麗な模様が入った物を購入することにした。一応4人分揃えたのだけど、またかなりの量になってしまった。
クローディアと叔母さんと自分。もし、叔父さんが来ることがあったらと考えて4人分だ。
「あと、まな板もお願いできますか?」
木製品の工房なのだから、まな板もお願いできるだろうと思い聞いてみる。
シュミットさんはこくんと頷くと大きな板を一枚持ってきた。
どうやら、この板から切り出してくれるらしい。
大きさをこれくらいと指示すると、板に印をつけてくれてその場ですぐにガリガリと切ってくれる。
筋肉隆々の腕が、物凄いスピードであっという間に板を切り出すと今度は切り口を滑らかに削っていく。
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