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序章
01.守れない約束
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神仙獣の世界「テンシャン(天山)」(ランクSS)
煌陽の外れ 国境付近にて
*
ああ。失敗しちゃったなぁ。
どこか他人事のようにぼんやりと考える。
胸からはずっと血があふれて止まらない、これもう助からないなと思いながら自分の隣で叫ぶ彼を見ていた。
彼の後ろを見れば先程自分を撃った子供が頭無く横たわっている。
目線を移せば目の前に親友の顔がひろがる、ごめんね、そんなに悲しい顔をしないでよ。
僕の大切な友人であり家族の彼は、綺麗な顔を歪ませて苦しそうに息をする、きっと今の僕よりも苦しい顔をしているに違いない。
「っなんで、なんでだよ…」
嗚咽と共に紡がれる言葉に思わず苦笑いをしてしまった。
君のせいじゃないよ。僕が侮ったから悪いんだ。
あんなに弱弱しい生き物に引き金なんて引けないと思っていたから。
弱い癖に侮った自分が悪いんだ、君のせいじゃ決してない。
言葉をかけたくても上手く口が回らない、口からはシューシューと息だけが漏れる。
「ね、ラン…彼女を…」
やっと紡ぎだした言葉は脳裏に『映る』あの子の事。
ハッキリと鮮明に『映る』彼女の表情はとても綺麗で可愛くて、花のような良い香りがしてキラキラと輝いて見える。最後まで僕では笑顔にさせてあげられなかったな。
少しは振り向いて欲しかったなぁ、結構僕の割には頑張ったつもりだったのにな。
いつもは使わない能力だけれど、もう使うことはないだろうし今だけ使おう。
頭の割れるような痛みのおかげで少しだけ意識が保てる、でもきっともう長くはない。
「ら、げ…幸せ…」
「分かった、分かったよ、頼まれた。安心しろよ。」
いつものように彼が笑う、全部言わなくてもわかってくれる、心の底から信頼できる彼の笑顔。
ふと少しずつ意識が遠のいていく、ああ、そろそろなんだと覚悟した。
視界が歪む中、耐えるように僕を見つめる彼を見て、頭で考えるよりも先に勝手に口から言葉が溢れた。
「また…」
「…」
「また会おう…ランゲツ…」
眼を見開いた彼の目から数滴、暖かな雫がこぼれて僕の顔に落ちていく。
ごめんね違うんだ、泣かせたかったわけじゃないんだ。
こんなこと言うつもりは無かったのに、口が止まらなかった。
心からの願いだけれど、酷いことを言ってしまったな。出来もしない約束なんて口にしてはいけないよね。
「…ああ。」
「…」
「必ず、また、会おう…兄弟。」
「…約束…」
「ああ、約束だ。」
出来もしない約束なんて、口にしてはいけないよねお互いにさ。
武人のくせに嘘をつくなんてよくないはず、なのに心はとても温かかった。
どこか吹っ切れて悲壮感のない彼の笑顔、きっと今自分も笑っている。
暗くなっていく視界に合わせて、僕の意識は闇に溶け込んでいった。
・
・
・
ああ、でもやっぱり寂しいよ。
君たちを置いて逝くのも、一人で遠くに逝くのも。
だってまだ僕は何も出来ていない、夢だって叶えたかった。
結局未練しかない、それでも逝かなければならないなんて寂しいな。
もう一度、もし機会が望めるならば、きっときっと全て諦めたりしないのに。
煌陽の外れ 国境付近にて
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ああ。失敗しちゃったなぁ。
どこか他人事のようにぼんやりと考える。
胸からはずっと血があふれて止まらない、これもう助からないなと思いながら自分の隣で叫ぶ彼を見ていた。
彼の後ろを見れば先程自分を撃った子供が頭無く横たわっている。
目線を移せば目の前に親友の顔がひろがる、ごめんね、そんなに悲しい顔をしないでよ。
僕の大切な友人であり家族の彼は、綺麗な顔を歪ませて苦しそうに息をする、きっと今の僕よりも苦しい顔をしているに違いない。
「っなんで、なんでだよ…」
嗚咽と共に紡がれる言葉に思わず苦笑いをしてしまった。
君のせいじゃないよ。僕が侮ったから悪いんだ。
あんなに弱弱しい生き物に引き金なんて引けないと思っていたから。
弱い癖に侮った自分が悪いんだ、君のせいじゃ決してない。
言葉をかけたくても上手く口が回らない、口からはシューシューと息だけが漏れる。
「ね、ラン…彼女を…」
やっと紡ぎだした言葉は脳裏に『映る』あの子の事。
ハッキリと鮮明に『映る』彼女の表情はとても綺麗で可愛くて、花のような良い香りがしてキラキラと輝いて見える。最後まで僕では笑顔にさせてあげられなかったな。
少しは振り向いて欲しかったなぁ、結構僕の割には頑張ったつもりだったのにな。
いつもは使わない能力だけれど、もう使うことはないだろうし今だけ使おう。
頭の割れるような痛みのおかげで少しだけ意識が保てる、でもきっともう長くはない。
「ら、げ…幸せ…」
「分かった、分かったよ、頼まれた。安心しろよ。」
いつものように彼が笑う、全部言わなくてもわかってくれる、心の底から信頼できる彼の笑顔。
ふと少しずつ意識が遠のいていく、ああ、そろそろなんだと覚悟した。
視界が歪む中、耐えるように僕を見つめる彼を見て、頭で考えるよりも先に勝手に口から言葉が溢れた。
「また…」
「…」
「また会おう…ランゲツ…」
眼を見開いた彼の目から数滴、暖かな雫がこぼれて僕の顔に落ちていく。
ごめんね違うんだ、泣かせたかったわけじゃないんだ。
こんなこと言うつもりは無かったのに、口が止まらなかった。
心からの願いだけれど、酷いことを言ってしまったな。出来もしない約束なんて口にしてはいけないよね。
「…ああ。」
「…」
「必ず、また、会おう…兄弟。」
「…約束…」
「ああ、約束だ。」
出来もしない約束なんて、口にしてはいけないよねお互いにさ。
武人のくせに嘘をつくなんてよくないはず、なのに心はとても温かかった。
どこか吹っ切れて悲壮感のない彼の笑顔、きっと今自分も笑っている。
暗くなっていく視界に合わせて、僕の意識は闇に溶け込んでいった。
・
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・
ああ、でもやっぱり寂しいよ。
君たちを置いて逝くのも、一人で遠くに逝くのも。
だってまだ僕は何も出来ていない、夢だって叶えたかった。
結局未練しかない、それでも逝かなければならないなんて寂しいな。
もう一度、もし機会が望めるならば、きっときっと全て諦めたりしないのに。
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