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決闘の終幕
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激しい剣戟の音が洞窟内に木霊する。辺りに散った音が反響して幾重もの音が俺の体を震わせる。お陰で傷が痛む。だが、この振動がなければ俺の身体はとうの昔に覚めない眠りについていただろうと思う。
目の前には笑いながら大剣を縦横無尽に大きく振るう黒衣の剣士と、その重撃を一つ一つ受けきる化け物の姿があった。
「ハハハハ楽しいなぁオイ!」
「グフフッ、マッタクダ!」
一つ大きく化け物が得物を低く横凪ぎに振るった。それを黒衣の剣士は跳躍して大きく後退しながら躱す。それをみた化け物は薙いだ得物をそのまま投げつける。
「!?うおっマジかよ!」
剣士は慌てた様子で、だが滑らかな動きで大剣を己の正面で盾にする。
ガィンッ
音と共に剣士の持つ大剣に重い衝撃が伝わる。手に残る痺れを感じながら素早く大剣を己の前からどけ、前方にいるであろう化け物を確認する。しかし──
「フンッ!」
唸りをあげながら迫り来る己の頭ほどある拳が腹部へとめり込む。
ズンッ
「ゴフゥッ」
打撃を受けた剣士は込み上げる胃液を何とか飲み込む。
剣士もある程度予想はついているだろうが、化け物は己の得物を投擲したあと、その影に隠れるようにして剣士の眼前まで迫っていたのだ。
「ご、ゴブリンの癖に中々やるじゃねぇか」
「フン、ニンゲンノクセニナカナカガンジョウダナ」
剣士には若干の苦悶の表情がみてとれる。が、化け物には苦悶の表情どころか己の一撃で沈まなかったのが嬉しかったのかその表情はどこか満足げに見える。
「ちっ、じゃあお返しだ!『雷よ、!自在の槍と成りて己の威を刻め!三叉雷槍!」
「ヌゥッ!」
剣士が何事か唱えると徐に腕を前につき出す。するとそこから紫電の稲妻が迸り、それはそのまま化け物を貫き風穴を開けた。
化け物はその痛みに耐えきれず、ガクンと方膝をついた。
「グゥゥ、キサママギモツカエルノカ!」
化け物は呻くようにそう呟いた。
「まぁな、ちょっとした奥の手みたいなもんだが─、あって困るもんじゃねぇだろ?」
ニヤッと剣士が笑う。
──マギ。マギって何だ?
「まさかあの方魔技を使えるなんて!」
そう女性が信じられないとでも言うような発言をする。
「っ、あ、あの…マギって何ですか?」
「!?気付いたのですか!?ああ良かった!お怪我は大丈夫ですか!?申し訳ございません、応急手当は多少施しているんですけれども何分この暗さゆえにあまり勝手が分からなくて、少々雑になってしまったんですけれども大丈夫ですか?痛みの具合はどうですか?」
矢継ぎ早に次々と言葉を繰り出してくる。俺は圧倒されながらも何とか──
「え、ええはい、大丈夫です、はい」
と返した。
──じゃなくて。
「あの、それよりマギって一体何ですか?」
すると女性は心底驚いた様子で、
「ええ!?魔技をご存じないんですか!?」
「ええ、ちょっと記憶が全くなくて何も思い出せないんですよ」
「え、記憶が…ですか?」
「はい、なので良ければ教えて頂けると嬉しいのですが」
「わっかりました!」
己の柔らかな胸部をトンと叩く。
──この人、初対面じゃおしとやかっぽかったんだけどなぁ。
何てことを女性の仕草を観察しながら考える。そんなことをしているうちに女性の説明が始まる。
「魔技というのはですね、この世のあらゆる現象を具現化する技です。例えばさっきの人の雷は〈発電〉、〈落雷〉等を具現した技を使いましたね。基本的に自らが出現させた魔技は言葉─つまり呪文を用いることである程度操ることができるんです。因みに操れる魔技の大きさや量はその人自身の魔力の量で決まります。
しかし、魔技は他の技とは違い、相性が合わなければ幾ら自身が望もうと使えないんです。要するに才能がなければ魔技は扱うことすらできないんですよ」
「なるほど…」
「なので基本魔技の適性がある人は魔技の修練しかしないので剣を扱う人が魔技が使えるというのはかなり珍しいんですよ」
「そういうことなんですか、だから皆驚いたんですね」
「そう言うことです!」
エッヘンと女性が誇らしげに胸を張る。その仕草がなんと言うか異様に保護欲を引き立てられる。
ガキィンッ!!
一際大きな鋼の音にお互い反応して慌てて視線を向ける。すると剣士と化け物はお互い息を切らしているようで、肩が上下しているのが見てとれる。
どちらも身体中から血を流し、辛うじて立っているような状態だった。
慎重な面持ちで剣士が武器を構える。
「そろそろ…フゥ、決着を、着けようか…!ハァ」
それに反応した化け物も同じく得物を構える。
「グッ、イイダロウ、ケッチャクヲ…ツケヨウ!」
そう言うなり化け物は最後の力を振り絞り剣士に肉薄する。それを確認した剣士は同じく化け物へと駆け出し武器を思い切り天に向かって振り抜く。
突然の奇行に化け物は僅かに動揺する。そしてその瞬間化け物は隙をつくってしまった。
剣士は振り抜いた勢いで跳躍し、大剣を上段に構える。
「うおおぉぉぉおおぉぉぉぉ!!」
咆哮と共に気合いを入れ天空から大剣を降り下ろす!
「『天空砕牙』ぁ!!」
「ヤラセン!」
それを受け止めんとして得物を打ち合わせようとする化け物。だが──
バキィンッ!!ズバン!バガァンッ!!
天から落ちる牙を受け止めようとした得物は甲高い音をたてて真っ二つに折れ、勢いは衰えることなく化け物をそのまま文字どおり一刀両断して、地面にめり込んだ。
支えることができなくなった化け物の骸が確かな質量を持って地面に音をたてて倒れこむ。
そして化け物と剣士の決闘は幕を閉じた。
目の前には笑いながら大剣を縦横無尽に大きく振るう黒衣の剣士と、その重撃を一つ一つ受けきる化け物の姿があった。
「ハハハハ楽しいなぁオイ!」
「グフフッ、マッタクダ!」
一つ大きく化け物が得物を低く横凪ぎに振るった。それを黒衣の剣士は跳躍して大きく後退しながら躱す。それをみた化け物は薙いだ得物をそのまま投げつける。
「!?うおっマジかよ!」
剣士は慌てた様子で、だが滑らかな動きで大剣を己の正面で盾にする。
ガィンッ
音と共に剣士の持つ大剣に重い衝撃が伝わる。手に残る痺れを感じながら素早く大剣を己の前からどけ、前方にいるであろう化け物を確認する。しかし──
「フンッ!」
唸りをあげながら迫り来る己の頭ほどある拳が腹部へとめり込む。
ズンッ
「ゴフゥッ」
打撃を受けた剣士は込み上げる胃液を何とか飲み込む。
剣士もある程度予想はついているだろうが、化け物は己の得物を投擲したあと、その影に隠れるようにして剣士の眼前まで迫っていたのだ。
「ご、ゴブリンの癖に中々やるじゃねぇか」
「フン、ニンゲンノクセニナカナカガンジョウダナ」
剣士には若干の苦悶の表情がみてとれる。が、化け物には苦悶の表情どころか己の一撃で沈まなかったのが嬉しかったのかその表情はどこか満足げに見える。
「ちっ、じゃあお返しだ!『雷よ、!自在の槍と成りて己の威を刻め!三叉雷槍!」
「ヌゥッ!」
剣士が何事か唱えると徐に腕を前につき出す。するとそこから紫電の稲妻が迸り、それはそのまま化け物を貫き風穴を開けた。
化け物はその痛みに耐えきれず、ガクンと方膝をついた。
「グゥゥ、キサママギモツカエルノカ!」
化け物は呻くようにそう呟いた。
「まぁな、ちょっとした奥の手みたいなもんだが─、あって困るもんじゃねぇだろ?」
ニヤッと剣士が笑う。
──マギ。マギって何だ?
「まさかあの方魔技を使えるなんて!」
そう女性が信じられないとでも言うような発言をする。
「っ、あ、あの…マギって何ですか?」
「!?気付いたのですか!?ああ良かった!お怪我は大丈夫ですか!?申し訳ございません、応急手当は多少施しているんですけれども何分この暗さゆえにあまり勝手が分からなくて、少々雑になってしまったんですけれども大丈夫ですか?痛みの具合はどうですか?」
矢継ぎ早に次々と言葉を繰り出してくる。俺は圧倒されながらも何とか──
「え、ええはい、大丈夫です、はい」
と返した。
──じゃなくて。
「あの、それよりマギって一体何ですか?」
すると女性は心底驚いた様子で、
「ええ!?魔技をご存じないんですか!?」
「ええ、ちょっと記憶が全くなくて何も思い出せないんですよ」
「え、記憶が…ですか?」
「はい、なので良ければ教えて頂けると嬉しいのですが」
「わっかりました!」
己の柔らかな胸部をトンと叩く。
──この人、初対面じゃおしとやかっぽかったんだけどなぁ。
何てことを女性の仕草を観察しながら考える。そんなことをしているうちに女性の説明が始まる。
「魔技というのはですね、この世のあらゆる現象を具現化する技です。例えばさっきの人の雷は〈発電〉、〈落雷〉等を具現した技を使いましたね。基本的に自らが出現させた魔技は言葉─つまり呪文を用いることである程度操ることができるんです。因みに操れる魔技の大きさや量はその人自身の魔力の量で決まります。
しかし、魔技は他の技とは違い、相性が合わなければ幾ら自身が望もうと使えないんです。要するに才能がなければ魔技は扱うことすらできないんですよ」
「なるほど…」
「なので基本魔技の適性がある人は魔技の修練しかしないので剣を扱う人が魔技が使えるというのはかなり珍しいんですよ」
「そういうことなんですか、だから皆驚いたんですね」
「そう言うことです!」
エッヘンと女性が誇らしげに胸を張る。その仕草がなんと言うか異様に保護欲を引き立てられる。
ガキィンッ!!
一際大きな鋼の音にお互い反応して慌てて視線を向ける。すると剣士と化け物はお互い息を切らしているようで、肩が上下しているのが見てとれる。
どちらも身体中から血を流し、辛うじて立っているような状態だった。
慎重な面持ちで剣士が武器を構える。
「そろそろ…フゥ、決着を、着けようか…!ハァ」
それに反応した化け物も同じく得物を構える。
「グッ、イイダロウ、ケッチャクヲ…ツケヨウ!」
そう言うなり化け物は最後の力を振り絞り剣士に肉薄する。それを確認した剣士は同じく化け物へと駆け出し武器を思い切り天に向かって振り抜く。
突然の奇行に化け物は僅かに動揺する。そしてその瞬間化け物は隙をつくってしまった。
剣士は振り抜いた勢いで跳躍し、大剣を上段に構える。
「うおおぉぉぉおおぉぉぉぉ!!」
咆哮と共に気合いを入れ天空から大剣を降り下ろす!
「『天空砕牙』ぁ!!」
「ヤラセン!」
それを受け止めんとして得物を打ち合わせようとする化け物。だが──
バキィンッ!!ズバン!バガァンッ!!
天から落ちる牙を受け止めようとした得物は甲高い音をたてて真っ二つに折れ、勢いは衰えることなく化け物をそのまま文字どおり一刀両断して、地面にめり込んだ。
支えることができなくなった化け物の骸が確かな質量を持って地面に音をたてて倒れこむ。
そして化け物と剣士の決闘は幕を閉じた。
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