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──うわあ。
重い鉄扉を開いた先にあった空間は──外から見た建物より遥かに大きかった。それだけではない。その広大なスペースは余すところなく、ここから見える範囲だけでも使われていることがわかる。
そしてもっと驚いたのが、その空間を支配するようなその空間の一辺を丸々用いた壁画だ。内容は、戦争の景色を切り取ってきたようなモノだった。
恐ろしく精密に出来ていて、今にも動き出しそうなほど躍動感が溢れていた。
そんな壁画に惚れたかのように、感嘆と恍惚の混じったような笑みを浮かべていると背後から、押し殺したような笑い声が聞こえてきた。
取り敢えず、こんな素晴らしい作品を見ている時に聞こえるなんとも無粋な輩には無言の鉄拳が飛んでいく。
ブンッ
「クック…え?グホゥッ!」
確かなクリーンヒットの感触を確認した俺は、背後で膝から崩れ落ちる物体を意識からはずし、再度鑑賞を続けた。
──ホント今にも動き出しそうだ。
どこをどう見ても絵だと感じさせる要因はなかった。それほどこの壁画は美しい。
どのくらいの時間をかけていたのだろう。唐突に時間が気になり、そこでようやく俺は壁画から視線を外して辺りを確認する。
「あれ、アリウスどうして寝ているんだ?」
俺の背後には恨めしげな視線をこちらにぶつける鳩尾を押さえたアリウスが倒れていた。
「お前にやられたんだよ!」
──……記憶にないな。
「人違いじゃないか?」
「どんな言い訳だよ!苦しいなんてもんじゃねぇぞその台詞!」
「いや、だってなぁ、ホントに記憶にないんだ」
「だからそんな言い訳……!…ホントに覚えてないって顔してるな…。マジか」
「マジだ」
「俺はお前のチラッと見た鬼の形相が忘れられないくらい頭に刻まれたんだが」
「知らないものは知らん」
「そ、そうかぁ…、いや、すまなk」
「拳で何かを殴った際、非常にウザイにやけた物体は見たんだが」
「っておおい!それだよそれ!物体っていうか俺だよこのやろう!」
「非常にウザイ顔をしてたっていう自覚はあったんだな」
「な、なにおう!?そ、そんな顔してねぇし!」
「ならやっぱり俺じゃないな」
「え?」
「だってウザイ顔してなかったんだろ?ってことは俺はアリウスは殴ってないことになるだろ」
「そ、そうか…」
──納得してるし。
我ながら結構穴だらけな言い訳だと思うのだが──。まぁ良いだろう。そんな俺の言い訳に打ち負かされたアリウスは目に見えて落ち込んでいた。だが知らん。それより──
「取り敢えず用事とやらを済ませないか?」
とアリウスに問い掛ける。するとハッと忘れ事を急に思い出したかのような仕草をした。
──当初の目的忘れてるよこの人。
慌てて立ち上がり服の乱れを直すアリウス。そして直した途端再び表情をキリッと引き締めると、カウンターへと足を運ぶ。
いい忘れていたが、この建物の入って右側と左側にはそれぞれ階段がついており、階層をつくるようにつけられている。因みに壁画があるのは正面の壁だ。カウンターがあるのはその空間のほぼ中心だ。
壁画の鑑賞を損なわないためなのか、それとも別の理由があるのか。疑問は尽きないが、まぁ後で誰かに聞けば自ずと分かることだろう。
そんな事を考えてるうちにカウンターの前へとやって来た。
「こんにちは、アリウスさん、本日はどのようなご用でしょうか?」
カウンターの受付嬢がアリウスに親しげに語りかける。
「ちょっとな。こいつの件で話をする約束をしていたんだ。警備隊長を呼んでくれないか?」
「はい、クリスさんですね、少々お待ちください」
「すまないね」
「いえいえ!お安いご用です!」
どうやらお互いの態度から察するにこの二人は親しいようだ。
──ぬぅ。片やちょいと若い、だがオッサン。片や明るく若々しい受付嬢。……うらやm
ガチャ
そこまで思考を進めたところで不意に扉を開ける音がした。音のする方へと目を向けると精悍な顔つきの青年がこちらへと歩いてくる。
やがて俺達の前まで来ると立ち止まり、話しかけてきた。
「お久しぶりです、アリウスさん」
「おお!久しぶり!」
「用件は聞いています。部屋に案内致しますのでこちらへどうぞ」
と、移動を促してきた。
アリウスが移動し始めたので、俺は黙ってその後ろをついていく。
階段を上り案内された部屋の扉の前へと辿り着いた。クリスが重厚そうな木製の扉を開く。そして、
「では、お入りください」
と、入室を促す。それに手を軽く掲げ肯定の意を示すとアリウスは堂々と入っていく。それを見届けるとこちらを見て、
「さぁ、君も入って」
と表情を崩さぬままに告げてくる。それに従い俺はアリウスの後を追うように入室した。
部屋には来客をもてなすために置かれたような椅子とテーブルが部屋の中央にある。床には高級そうな絨毯が敷かれており、まさに来賓室と呼ぶに相応しい部屋だった。
アリウスはそこにいることが当然のような顔で誰に憚るでもなく、ドカッと椅子に腰を落ち着けた。因みに俺はというと──
──何だこの部屋眩しっ!何でこんなに豪華な装飾品がわんさとあるんだ?……まぁいいや。
なんて事を考えていた。
やがてクリスも入室すると、クリスはアリウスとは反対の席に座る。そしてようやくここで済ます用事を果たすための話が始まった。
重い鉄扉を開いた先にあった空間は──外から見た建物より遥かに大きかった。それだけではない。その広大なスペースは余すところなく、ここから見える範囲だけでも使われていることがわかる。
そしてもっと驚いたのが、その空間を支配するようなその空間の一辺を丸々用いた壁画だ。内容は、戦争の景色を切り取ってきたようなモノだった。
恐ろしく精密に出来ていて、今にも動き出しそうなほど躍動感が溢れていた。
そんな壁画に惚れたかのように、感嘆と恍惚の混じったような笑みを浮かべていると背後から、押し殺したような笑い声が聞こえてきた。
取り敢えず、こんな素晴らしい作品を見ている時に聞こえるなんとも無粋な輩には無言の鉄拳が飛んでいく。
ブンッ
「クック…え?グホゥッ!」
確かなクリーンヒットの感触を確認した俺は、背後で膝から崩れ落ちる物体を意識からはずし、再度鑑賞を続けた。
──ホント今にも動き出しそうだ。
どこをどう見ても絵だと感じさせる要因はなかった。それほどこの壁画は美しい。
どのくらいの時間をかけていたのだろう。唐突に時間が気になり、そこでようやく俺は壁画から視線を外して辺りを確認する。
「あれ、アリウスどうして寝ているんだ?」
俺の背後には恨めしげな視線をこちらにぶつける鳩尾を押さえたアリウスが倒れていた。
「お前にやられたんだよ!」
──……記憶にないな。
「人違いじゃないか?」
「どんな言い訳だよ!苦しいなんてもんじゃねぇぞその台詞!」
「いや、だってなぁ、ホントに記憶にないんだ」
「だからそんな言い訳……!…ホントに覚えてないって顔してるな…。マジか」
「マジだ」
「俺はお前のチラッと見た鬼の形相が忘れられないくらい頭に刻まれたんだが」
「知らないものは知らん」
「そ、そうかぁ…、いや、すまなk」
「拳で何かを殴った際、非常にウザイにやけた物体は見たんだが」
「っておおい!それだよそれ!物体っていうか俺だよこのやろう!」
「非常にウザイ顔をしてたっていう自覚はあったんだな」
「な、なにおう!?そ、そんな顔してねぇし!」
「ならやっぱり俺じゃないな」
「え?」
「だってウザイ顔してなかったんだろ?ってことは俺はアリウスは殴ってないことになるだろ」
「そ、そうか…」
──納得してるし。
我ながら結構穴だらけな言い訳だと思うのだが──。まぁ良いだろう。そんな俺の言い訳に打ち負かされたアリウスは目に見えて落ち込んでいた。だが知らん。それより──
「取り敢えず用事とやらを済ませないか?」
とアリウスに問い掛ける。するとハッと忘れ事を急に思い出したかのような仕草をした。
──当初の目的忘れてるよこの人。
慌てて立ち上がり服の乱れを直すアリウス。そして直した途端再び表情をキリッと引き締めると、カウンターへと足を運ぶ。
いい忘れていたが、この建物の入って右側と左側にはそれぞれ階段がついており、階層をつくるようにつけられている。因みに壁画があるのは正面の壁だ。カウンターがあるのはその空間のほぼ中心だ。
壁画の鑑賞を損なわないためなのか、それとも別の理由があるのか。疑問は尽きないが、まぁ後で誰かに聞けば自ずと分かることだろう。
そんな事を考えてるうちにカウンターの前へとやって来た。
「こんにちは、アリウスさん、本日はどのようなご用でしょうか?」
カウンターの受付嬢がアリウスに親しげに語りかける。
「ちょっとな。こいつの件で話をする約束をしていたんだ。警備隊長を呼んでくれないか?」
「はい、クリスさんですね、少々お待ちください」
「すまないね」
「いえいえ!お安いご用です!」
どうやらお互いの態度から察するにこの二人は親しいようだ。
──ぬぅ。片やちょいと若い、だがオッサン。片や明るく若々しい受付嬢。……うらやm
ガチャ
そこまで思考を進めたところで不意に扉を開ける音がした。音のする方へと目を向けると精悍な顔つきの青年がこちらへと歩いてくる。
やがて俺達の前まで来ると立ち止まり、話しかけてきた。
「お久しぶりです、アリウスさん」
「おお!久しぶり!」
「用件は聞いています。部屋に案内致しますのでこちらへどうぞ」
と、移動を促してきた。
アリウスが移動し始めたので、俺は黙ってその後ろをついていく。
階段を上り案内された部屋の扉の前へと辿り着いた。クリスが重厚そうな木製の扉を開く。そして、
「では、お入りください」
と、入室を促す。それに手を軽く掲げ肯定の意を示すとアリウスは堂々と入っていく。それを見届けるとこちらを見て、
「さぁ、君も入って」
と表情を崩さぬままに告げてくる。それに従い俺はアリウスの後を追うように入室した。
部屋には来客をもてなすために置かれたような椅子とテーブルが部屋の中央にある。床には高級そうな絨毯が敷かれており、まさに来賓室と呼ぶに相応しい部屋だった。
アリウスはそこにいることが当然のような顔で誰に憚るでもなく、ドカッと椅子に腰を落ち着けた。因みに俺はというと──
──何だこの部屋眩しっ!何でこんなに豪華な装飾品がわんさとあるんだ?……まぁいいや。
なんて事を考えていた。
やがてクリスも入室すると、クリスはアリウスとは反対の席に座る。そしてようやくここで済ます用事を果たすための話が始まった。
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