【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅲ 世話係のアルファ

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「よく、わからないんだ。初めて会った時から、黒オメガって呼ばれて嫌悪されている。僕に否があったとは思えない。僕に対する嫌がらせは、普通じゃない」

 正直な気持ちを伝えた。アルだから言おうと思えた。白国の王太子を否定するような発言が不敬罪ととられたら、ジリスは謹慎程度の処罰が下される。けれど、アルには正直に話してみたかった。

「はい。その通りです。ジリス様は、白国の事情と、ネモス殿下の権力欲に巻き込まれただけなのです」
 アルが大きく息を吐いて、ジリスに向き合った。

「改めて、黒国王子殿下であり、白国の王妃となられるジリス様に、大変なご負担をおかけして、申し訳ありません」
 アルが席を立ち、床に膝をついて頭を垂れる。

「や、やめてよ。これは、アルのせいじゃないのは分かるから。席に戻ってください」
 アルがゆっくりと頭を上げて、着座した。

「まず、白国の事情からお伝えします。白国では、王位継承は上流貴族か王家に生まれたアルファが継承します。王家が優先的に王位を継ぎます。現在、王家の王位継承ができるアルファはネモス殿下のみです。そして、貴族のアルファは、俺一人です」

 聞いていてジリスは何となくネモスの立ち位置が分かってしまった。

「もしかして、ネモス殿下は、アルファとして出来が悪かった?」
 ジリスの言葉にアルが苦笑する。

「ご想像にお任せします。王維継承の教育において、少し問題があったというか。それでも王子という立場上、ネモス様が王位継承権第一位です。しかし、成長とともに俺に対する敵意が大きくなりました」

 ジリスは納得してしまった。どう考えても、ネモスよりアルの方が上に立つ器量がある。

「そして、ネモス殿下は、とにかく王位を継ぐことに執着しました。俺を臣下として王室護衛隊長に置いたのも、自己顕示欲からです。ネモス殿下は、あなた様を何としてでも番にしたかったのでしょう。ですが、ネモス様は女性遊びが大好きな方です」

 ミーナを傍に置いていたネモスを思い出し、ジリスはコクリと同意の頷きを返した。

「番のオメガは欲しいけれど、女遊びはしていたい。これは、正直アルファ性が弱いから考えつくことでしょう。そして、ネモス様は思いついたのだと思います。あなた様を番にして、王妃の座を与えるが、王妃として扱わなければいいと」

「あぁ、そんなこと、考えそうだよね」
 アルが大げさに肩をすくませるから、少し笑ってしまった。

「ネモス殿下の作戦は、オメガの番を得る事、そして、番を管理下に置く事。つまり、あなた様が、例えば、俺と不貞行為を行い、神に背く行為をするとします。すると、ネモス様は堂々とジリス様を処罰でき、一生涯監禁しておくことができるのです」

 ジリスは愕然とした。想像もしていなかった事に手が震えて、カップがガチャリと音をたてた。
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