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Ⅲ 世話係のアルファ
⑧
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数日でジリスの体調は回復した。その間、アルと沢山話をした。アルの侯爵家領地の話は楽しかった。
アルの父は勤勉で、領地の水害についての調査と地形の調査を行い、時間を掛けて河川の整備に成功したようだ。その父の偉業を継いでいきたい、というアルの思いには感動した。
アルが幼い頃に川遊びや山遊びをして育ったのは、河川調査で父が連れまわしてくれたおかげだと聞いた。アルが民に心を向けるのは、領地の民に触れることが多かったからだと分かった。
知れば知るほど、アルは魅力的な人だとジリスは思った。アルといると心がホワっと温かくなった。
「ジリス様、街に出てみますか?」
「え? いいの、かな?」
「はい。体調的に良ければ、ですが。ひとつ、作戦を提案です」
「作戦? なになに? 気になる!」
ジリスはワクワクして身を乗り出した。アルがクスッと笑う。
「だますのですよ。ネモス殿下は我々が不義をすれば良いと思っていますから、仲の良い姿を見れば安心するはずです。計画が上手くいっていると思わせるのです」
「そっか。じゃ、ついでに国王陛下と王妃殿下に挨拶に行くって言って、全て話しちゃえばいいんじゃない?」
「そうですね、と言いたいところですが。外出は限られています。主城への立ち入りや上流貴族に会うことは禁じられています」
「コッソリでも、会えばバレるってこと?」
「はい。出かけるときは、白魔術のかけられた追跡機に、行き先を告げて持ち歩きます。目的からズレたところに行くと、警報が鳴ります。室外に出るときには、この追跡機を必ず持たなくてはいけません」
「うん。ネモス殿下め。なかなかに用意周到だ」
「そうですね。さすがアルファと褒めるべきでしょうか」
「まったく、他に頭を使ってほしいよ」
ジリスのつぶやきに、アルが「ははは」と笑った。
「楽しんじゃいましょう。城下街は賑やかですよ。白の国を知っていただきたいです。白の国は、良い国なのですよ」
ジリスは苦笑いした。
「良い国、か。確かに、アルの領地の話をきけば、良い国と思えるよ。けど、ネモス殿下が王になると考えると、げんなりするよ」
ネモスのことを考えるとズキリと噛み傷が主張してくる。傷は表面上塞がり、ガーゼを外している。
だが、こんな傷跡を晒したくなくて、ジリスは首にストールを巻いている。このストールはアルがくれた。ジリスに用意された服はどれも白ばかりだが、アルがくれたストールは深い藍色だ。
黒に近いその色がジリスは嬉しかった。「白じゃなくていいの?」と聞けば、「俺たちが仲良くしているアピールにもなっていいでしょう」とアルが言った。
アルにとっては、ネモスに向けたアピールだろうが、ジリスにとっては、唯一の縋れるものだ。首元に暗い色があるだけで呼吸が楽になる。こんなクソみたいな白の国で、アルに出会えて良かった。そこだけはネモスに感謝する。
――自分一人で立ち向かうんじゃない。僕には、アルという味方がいる。
そう思うだけでジリスの心が楽になった。
アルの父は勤勉で、領地の水害についての調査と地形の調査を行い、時間を掛けて河川の整備に成功したようだ。その父の偉業を継いでいきたい、というアルの思いには感動した。
アルが幼い頃に川遊びや山遊びをして育ったのは、河川調査で父が連れまわしてくれたおかげだと聞いた。アルが民に心を向けるのは、領地の民に触れることが多かったからだと分かった。
知れば知るほど、アルは魅力的な人だとジリスは思った。アルといると心がホワっと温かくなった。
「ジリス様、街に出てみますか?」
「え? いいの、かな?」
「はい。体調的に良ければ、ですが。ひとつ、作戦を提案です」
「作戦? なになに? 気になる!」
ジリスはワクワクして身を乗り出した。アルがクスッと笑う。
「だますのですよ。ネモス殿下は我々が不義をすれば良いと思っていますから、仲の良い姿を見れば安心するはずです。計画が上手くいっていると思わせるのです」
「そっか。じゃ、ついでに国王陛下と王妃殿下に挨拶に行くって言って、全て話しちゃえばいいんじゃない?」
「そうですね、と言いたいところですが。外出は限られています。主城への立ち入りや上流貴族に会うことは禁じられています」
「コッソリでも、会えばバレるってこと?」
「はい。出かけるときは、白魔術のかけられた追跡機に、行き先を告げて持ち歩きます。目的からズレたところに行くと、警報が鳴ります。室外に出るときには、この追跡機を必ず持たなくてはいけません」
「うん。ネモス殿下め。なかなかに用意周到だ」
「そうですね。さすがアルファと褒めるべきでしょうか」
「まったく、他に頭を使ってほしいよ」
ジリスのつぶやきに、アルが「ははは」と笑った。
「楽しんじゃいましょう。城下街は賑やかですよ。白の国を知っていただきたいです。白の国は、良い国なのですよ」
ジリスは苦笑いした。
「良い国、か。確かに、アルの領地の話をきけば、良い国と思えるよ。けど、ネモス殿下が王になると考えると、げんなりするよ」
ネモスのことを考えるとズキリと噛み傷が主張してくる。傷は表面上塞がり、ガーゼを外している。
だが、こんな傷跡を晒したくなくて、ジリスは首にストールを巻いている。このストールはアルがくれた。ジリスに用意された服はどれも白ばかりだが、アルがくれたストールは深い藍色だ。
黒に近いその色がジリスは嬉しかった。「白じゃなくていいの?」と聞けば、「俺たちが仲良くしているアピールにもなっていいでしょう」とアルが言った。
アルにとっては、ネモスに向けたアピールだろうが、ジリスにとっては、唯一の縋れるものだ。首元に暗い色があるだけで呼吸が楽になる。こんなクソみたいな白の国で、アルに出会えて良かった。そこだけはネモスに感謝する。
――自分一人で立ち向かうんじゃない。僕には、アルという味方がいる。
そう思うだけでジリスの心が楽になった。
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