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Ⅳ 白の国と白魔術
①
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アルと城下街に行ってみようと話が上がった翌日。本当に外出許可が出て、侍女たちが外出用の服を準備して去った。
「白、かぁ」
侍女が持ち込んだ白のセットアップに白ガウンを眺めて、ジリスは小さなため息をついた。
朝食は侍女が準備するが、相変わらず嫌味のような白い食事だ。
「ほんと、徹底した態度だな。ある意味、その従順さを尊敬するよ」
ははは、と笑ってジリスは席に着いた。一人の食事は前ほど辛くない。この後アルに会えると思えば気持ちが楽だった。いつも朝食後にアルが部屋に来る。
白ソーセージをフォークでブッ刺して、ジリスはネモスの顔を思い浮かべた。
ネモスは発情期以降、一度もジリスのもとに来ていない。放置だ。ジリスは悔しくて、ネモスが憎らしくて、フォークを持つ手が震えた。
気がついたらソーセージは原型を留めずグチャグチャだった。
(はぁ、僕は子どもか。食事に当たるなんて)
とても食事を食べ続ける気にならず、ジリスは席を立った。
もそもそと着替えて、最近は髪の手入れをしていなかった事に気づく。今日はアルとの外出だ。部屋にいるだけなら長い髪を一つにまとめればいいが、外出ならば髪を結い上げた方がいいだろう。
「はぁ、まぁネモスのために整えるワケじゃないのが救いだ。あいつのために綺麗にするなんてゴメンだからな」
鏡の前に座りジリスは大きな独り言を呟いた。そして、よしっと気合いを入れて香料オイルを手にとった。鏡の自分を見れば、前髪が伸びている。白国に来てから手入れなどしていないから当然だ。
少し考えて、ジリスはハサミを手に取った。
「うん。さっぱりだ」
前髪を自分で整え、鏡に向けてニッコリした。
黒魔術を使う者にとって髪は大切だ。髪は魔術の代償になるから。だから、黒の国では髪を伸ばす。代償が綺麗であることは神への敬意でもある。少し前まで自分磨きを大切にしていたのに。それが出来ないほどジリスは疲弊していたのだ。
「あぁ、もう最悪だ!ネモスも白国も、全部最悪!」
悪態をつきながらも、ジリスは長い髪にオイルを付けてサラサラに梳かしあげ、慣れた手つきで三つ編みを作った。その三つ編みをアップにまとめれば、見た目は華やかだし、バラバラ落ちてくることもない。お出かけには最適の髪型のできあがりだ。
こうすれば、黒国にいた頃のような自分が鏡の中にいる。服は真っ白だけど、懐かしさに鏡の自分に触れようとして、冷たいガラス面に阻まれる。
「帰りたい、よな。こんなの、嫌だよ」
鏡に語りかけると、鏡の自分は泣きそうな顔をしている。
「ね、ジリス。これが、一生涯続くんだって。僕は、耐えられるのかな……。この先、一生なんだ……」
泣きそうな自分に弱音を吐くと、鏡の自分がハラハラと涙を流す。かわいそうに、と手を伸ばしても、鏡に映る自分の涙は拭えない。
―――誰も、助けてくれないんだ。僕自身でさえ、助けてあげられないんだ。
悲しみに心が沈み込みそうになったとき。フワリと頬に柔らかい布が当てられた。
はっと見上げれば、アルが側に立っていた。
「白、かぁ」
侍女が持ち込んだ白のセットアップに白ガウンを眺めて、ジリスは小さなため息をついた。
朝食は侍女が準備するが、相変わらず嫌味のような白い食事だ。
「ほんと、徹底した態度だな。ある意味、その従順さを尊敬するよ」
ははは、と笑ってジリスは席に着いた。一人の食事は前ほど辛くない。この後アルに会えると思えば気持ちが楽だった。いつも朝食後にアルが部屋に来る。
白ソーセージをフォークでブッ刺して、ジリスはネモスの顔を思い浮かべた。
ネモスは発情期以降、一度もジリスのもとに来ていない。放置だ。ジリスは悔しくて、ネモスが憎らしくて、フォークを持つ手が震えた。
気がついたらソーセージは原型を留めずグチャグチャだった。
(はぁ、僕は子どもか。食事に当たるなんて)
とても食事を食べ続ける気にならず、ジリスは席を立った。
もそもそと着替えて、最近は髪の手入れをしていなかった事に気づく。今日はアルとの外出だ。部屋にいるだけなら長い髪を一つにまとめればいいが、外出ならば髪を結い上げた方がいいだろう。
「はぁ、まぁネモスのために整えるワケじゃないのが救いだ。あいつのために綺麗にするなんてゴメンだからな」
鏡の前に座りジリスは大きな独り言を呟いた。そして、よしっと気合いを入れて香料オイルを手にとった。鏡の自分を見れば、前髪が伸びている。白国に来てから手入れなどしていないから当然だ。
少し考えて、ジリスはハサミを手に取った。
「うん。さっぱりだ」
前髪を自分で整え、鏡に向けてニッコリした。
黒魔術を使う者にとって髪は大切だ。髪は魔術の代償になるから。だから、黒の国では髪を伸ばす。代償が綺麗であることは神への敬意でもある。少し前まで自分磨きを大切にしていたのに。それが出来ないほどジリスは疲弊していたのだ。
「あぁ、もう最悪だ!ネモスも白国も、全部最悪!」
悪態をつきながらも、ジリスは長い髪にオイルを付けてサラサラに梳かしあげ、慣れた手つきで三つ編みを作った。その三つ編みをアップにまとめれば、見た目は華やかだし、バラバラ落ちてくることもない。お出かけには最適の髪型のできあがりだ。
こうすれば、黒国にいた頃のような自分が鏡の中にいる。服は真っ白だけど、懐かしさに鏡の自分に触れようとして、冷たいガラス面に阻まれる。
「帰りたい、よな。こんなの、嫌だよ」
鏡に語りかけると、鏡の自分は泣きそうな顔をしている。
「ね、ジリス。これが、一生涯続くんだって。僕は、耐えられるのかな……。この先、一生なんだ……」
泣きそうな自分に弱音を吐くと、鏡の自分がハラハラと涙を流す。かわいそうに、と手を伸ばしても、鏡に映る自分の涙は拭えない。
―――誰も、助けてくれないんだ。僕自身でさえ、助けてあげられないんだ。
悲しみに心が沈み込みそうになったとき。フワリと頬に柔らかい布が当てられた。
はっと見上げれば、アルが側に立っていた。
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