【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅳ 白の国と白魔術

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 美味しく甘いパンをいただいてから、アルとジリスは緑地公園に来た。

 部屋で白魔術を使えば、変な動きをした、とネモスに通報がされるため、城下街中に点在する公園のひとつに来ている。

 人気のない芝生の一角にアルと二人きりだ。

「さ、アル。教えて!」
 ジリスはヤル気満点だ。

「はい。では、ジリス様。この芝生の雑草取りをしましょう!」
 アルの楽しそうな声に、ジリスは静止した。

「はぁ? 雑草? なんで?」

 つい大声が出てしまった。広い芝生公園を見渡した。ジリスは一応、次期王妃なのだけれど。草取りとかする立場ではないのだけれど。

「ジリス様、白魔術は善行が糧になるのです。ジリス様は白の国に来てから、善行をしていらっしゃらないでしょう」

「あ、そういうことか。びっくりするよ。僕は時期王妃の座から従者にでも身分変更されたのかと思ったよ」

「あはは。それは勘違いをさせてしまい申し訳ありません。身近な公共への奉仕が白魔術の基礎なのです」

 白魔術のためと言われれば、草取りだろうがやってやる。ジリスのヤル気が再燃した。

「うん。やるよ。どのくらいやれば良いの?」
「そうですね。では、三十分ほどやりましょう。雑草を取る意味を考えて行うのが大切です。白魔術の成功のため、と打算があると善行にカウントされません」

「へぇ。じゃ、芝生が綺麗に保てるように、とか。あとは、訪れた人が気持ち良くすごせますようにって願えばいいのかな」
「その通りです。やってみましょう」

 アルがグイっと袖をまくった。現れた腕の筋肉にジリスの心がドキリとする。いやいや、ときめいている場合じゃない、と自分に言い聞かせて、ジリスもグイっと袖をまくった。

「じゃ、早速始めよう」
 ジリスは座り込んで雑草抜きに取りかかった。

(ここの芝生が健康に育つように。ここに来る人が快適に過ごせるように)
そう考えていると作業がはかどった。

 いつの間にかジリスは夢中になっていた。

 土に触れると気持ちが落ち着く。黒国では花を育てていた。土の香りに故郷を思い、悲しさを埋めるように必死で雑草を抜いた。

「ジリス様、汗を」
 タオルが差し出されてジリスは顔を上げた。受け取ったタオルで汗を拭う。

「そろそろ三十分です。一休憩しましょう」
 そんなに経ったのか、と腰を伸ばせば、コチコチに身体が固まっていた。

「いてて。やりすぎた」
 ヨタヨタと歩けば、すぐにアルが支えてくれる。

「頑張られていましたね」
「うん。善行って気持ちいいな」

「いいですね。善行を気持ちよく思えるのは白魔術の基本です。ジリス様は白魔術に向いていると思います」
「そっかな」

 頑張ったことを褒められて、ジリスは子どものように嬉しくなる。
(よし! イイ感じだ! 僕なら白魔術も楽勝だ!)

 妙な自信がジリスに湧いた。

 そのまま日陰の東屋で休憩を挟み、白魔術の実践に入った。楽しみで仕方なかった。
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