【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅷ 消えない印

③※

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 アルが欲望の目でジリスを見つめている。恥ずかしいのにジリスの腰が揺れる。

「こんなに可愛いジリス様を、愛することができるなんて。もう、世界が終わっても、いい」

 アルの興奮が痛いほどに伝わってくる。そして、これまで白国では直接の愛撫を避けていたアルが、雄の瞳でジリスに触れている。胸がキュンキュンする。

「アルぅ、舐め、て。こっちぃ。こっちが、ほしい」
 勃ちあがっている部分をアピールする様に腰を動かした。ピュッと漏れてしまう感覚が震えるほどの快感を呼ぶ。

「あぁ、ここ、ですね。俺が全て、可愛がります! ジリス様!」
 アルがジリスのペニスにしゃぶりついた。

「ひゃぅぅ!」
 悲鳴のような嬌声が口から漏れた。

 初めての強すぎる刺激で目の前に星が飛ぶ。ビクビク震える腰を抱き込まれる。粘膜の艶めかしい感覚がペニスに響く。

 たまらずにジリスは吐精した。アルが名残惜しそうに口を離し、先端にチュッと音を立ててキスをした。ビクリとジリスの腹筋が震えた。そのままペニスを舌でなぞられた。

「はぁ! もう、出たぁ、出たから!」
 驚いて身体が逃げを打つ。

「ジリス様。もう少しだけ、お願いします。何度直接舐めたいと、触れたいと思ったか。やっと愛することができるのです」

 あまりに恥ずかしいセリフに顔が熱くなる。アルがこれほどジリスに欲望を抱いていたことが嬉しい。
 ジリスはコクリと頷いて、手足の力を抜いた。壮絶な色気をまとってアルがニコリと微笑んだ。

(アルに全てを、捧げたい。僕の全部を)
 熱くたぎる体と高鳴る心を、隠さずに託したいと思った。

「いい、よ。好きにして。アルになら何されても、嬉しい、から」

 言ってみて、なんて恥ずかしいことを言ったのだろう、と顔を背けた。心臓がドキドキとうるさい。

「そんな誘い文句……。俺が、優しく出来なかったら、どうするんですか」
 それでも良いと思う自分がいる。「うん、いい、よ」と言葉を返した。


「あぁ……んっ、アルぅ、気持ちいぃ」
 ジリスは高まる体の熱と与えられる快楽に涙を流した。何度もアルを呼んだ。

「あぁ、素敵だ。いやらしくて、美しい」
その度にジリスを欲するアルの声が聞こえた。
「んぅっ」

 ジリスの後腔に入り込んだアルの指が、ナカを確認するように動く。
 すでに三本の指が入り込み、グポグポとおかしな音を生じさせている。その度にジリスの腰が揺らめいて快感を訴える。ペニスも擦られていて、熱が高まる一方だ。

「ア、アルぅ、もう、はやくぅ」
 吐精しても腹の奥の熱が引かない。ペニスはドロリと液を垂らしている。熱い呼吸に脳が溶けるような錯覚がする。

 その時、ジリスを愛撫していた手が去った。どうして、と思う間もなく、ジリスの身体を俯せにされた。

「この姿勢の方が、噛めますから」
 ジリスの耳に低い声が届く。アルの番になれるかもしれない。成功すれば、ネモスから解放される。ジリスはホロリと涙を流した。

「いいですか?」
 欲を孕んでいるのに静かな声音だ。ジリスはコクリと頷いた。次の瞬間。

 ズンっとジリスの中にアルが埋まった、のだが。

「やぁぁ! いや、だめ! 苦しいぃ」

 叫びながらジリスは全身でアルを拒絶した。身体の熱は引かないのに、全身に冷や水をかぶったような寒気が走る。

「え? ジリス様?」

 すぐにアルがジリスから抜け出た。その刺激にも気持ち悪さが込み上げて、ジリスは嘔吐した。息が苦しい。

「ちが、ちがうぅ! ネモスが、ネモス殿下じゃ、なきゃ」

 嘔吐して苦しいのに、ジリスの口からはネモスを求める声が出ていた。

「ジリス、様……」
 悲痛な声が聞こえる。けれど、混乱と不快感と、ネモスを求めるおかしな自分が受け入れられず、ジリスはパニックになった。

「ジリス様! 落ち着いて、ゆっくり呼吸を」
 優しくて大好きなアルだ。なのに、身体が違うと悲鳴を上げる。

「アル! 苦しい! ネモス殿下を、連れて来てぇ」
 番のアルファに満たされたい。ジリスのオメガの部分がネモスを欲する。

「もしかして、これは……。ネモス様が生きている?」

 ネモスが生きている、その言葉がジリスの心に突き刺さる。

 もし生きていたら、ジリスは死ぬまで苦しむ事になる。今後、アルと愛し合うことは出来ない。

 荒い呼吸を繰り返しながら、ジリスとアルは絶望の思いで見つめ合った。
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