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Ⅷ 消えない印
⑥
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黒国王家のティールームに案内された。家族が揃って利用できる広めのティールームで、音楽を奏でられる造りだ。
もう二度と、この城に戻らない覚悟だったのに。懐かしい部屋を眺め、優しい家族に触れると、自分のしてしまった罪が大きく心に圧し掛かる。
「ジリス、左腕を見せてもらえるかしら?」
母の言葉にジリスの身体がビクリとする。
ジリスの左手は手袋で隠してある。片方だけの手袋は不自然だろう。一見すると黒魔術で変色した肌は分からないはずだ。けれど、母が左腕を見たいと言う。
同席しているカザルと父は心配そうにジリスを見ている。
ジリスは一呼吸してから、左手の手袋を取った。火傷痕が茶黒く残る肌が現れた。綺麗ではない。ジリスはため息をついた。
「……ジリス」
母が悲痛な声を出す。
「くそう! 白のクソ王太子め!」
カザルが怒りの声を上げた。母がジリスの手を取り、労わるように撫でた。
「辛かったわね……」
「熱かっただろう。痛かっただろう。可哀そうに。こんなことならジリスを白国に行かせるのでは無かった」
父が悲痛な面持ちでジリスの頭を撫でた。母のような父の仕草に驚いた。
「父様も、母様も、兄様だって、僕に起きていたことを知ってるの?」
「あぁ。知っているとも。お前を『黒の鏡』で見守っていたのだ。白国に嫁ぐ者には内緒にされるが、嫁いだ者を、闇を使って見ることが出来るのだ。王家の魔法の鏡だよ。いくら白国がお前を白の部屋に閉じ込めようとも、闇は必ず訪れる。闇の中から見るジリスは……。言わなくても、分かるだろう?」
ジリスの瞳が潤んだ。
「何度、ネモスを殺したいと思ったか。白の王家に黒魔術をかけることが禁じられてなければ、俺が呪い殺してやったのに」
カザルは見たことも無い怖い顔をした。
「兄様……」
優しく明るいカザルしか知らないジリスは驚いた。
「ジリス様、『黒の鏡』の映像は証拠として保管してあります。あのような状況は、私も白の国の者として看過できません」
カザルの隣でディンが険しい顔をしている。
「アル様も、大変なご苦労をされました。私はアル様が王位を継ぐのを望んでおりましたが。やはりネモス殿下でしたか」
「俺は王位などどうでも良かったのですが、ジリス様を番に出来るのなら、王位を強く望めばよかったと後悔しています。俺が番になっていれば」
アルの腕が震えた。ジリスは周りの顔を見渡した。皆がジリスを大切に思ってくれている。それがひしひしと伝わってくる。嬉しくて目の奥がジンとする。
「ほら、皆。怖い顔はやめましょう。せっかく会えたのに、ジリスが困っているわ。ジリスを皆で守るって決めたでしょう?」
ジリスの左手を優しく母が包んだ。その上にカザルの手が重なる。
「ジリス、俺たちは白国とやり合う覚悟だってある」
ディンの手が重なり、父が手を重ねた。重なった手が、熱い。
「ジリスは可愛い息子なのだ。息子を傷つけられて怒らない親はいない。私は、王として、父として、ジリスを守ろう」
アルも手を重ねた。
「俺も、ジリス様を護ると誓います」
優しさに包み込まれてジリスは泣いた。泣いてばかりだと思う。けれど、涙は止まらなかった。
もう二度と、この城に戻らない覚悟だったのに。懐かしい部屋を眺め、優しい家族に触れると、自分のしてしまった罪が大きく心に圧し掛かる。
「ジリス、左腕を見せてもらえるかしら?」
母の言葉にジリスの身体がビクリとする。
ジリスの左手は手袋で隠してある。片方だけの手袋は不自然だろう。一見すると黒魔術で変色した肌は分からないはずだ。けれど、母が左腕を見たいと言う。
同席しているカザルと父は心配そうにジリスを見ている。
ジリスは一呼吸してから、左手の手袋を取った。火傷痕が茶黒く残る肌が現れた。綺麗ではない。ジリスはため息をついた。
「……ジリス」
母が悲痛な声を出す。
「くそう! 白のクソ王太子め!」
カザルが怒りの声を上げた。母がジリスの手を取り、労わるように撫でた。
「辛かったわね……」
「熱かっただろう。痛かっただろう。可哀そうに。こんなことならジリスを白国に行かせるのでは無かった」
父が悲痛な面持ちでジリスの頭を撫でた。母のような父の仕草に驚いた。
「父様も、母様も、兄様だって、僕に起きていたことを知ってるの?」
「あぁ。知っているとも。お前を『黒の鏡』で見守っていたのだ。白国に嫁ぐ者には内緒にされるが、嫁いだ者を、闇を使って見ることが出来るのだ。王家の魔法の鏡だよ。いくら白国がお前を白の部屋に閉じ込めようとも、闇は必ず訪れる。闇の中から見るジリスは……。言わなくても、分かるだろう?」
ジリスの瞳が潤んだ。
「何度、ネモスを殺したいと思ったか。白の王家に黒魔術をかけることが禁じられてなければ、俺が呪い殺してやったのに」
カザルは見たことも無い怖い顔をした。
「兄様……」
優しく明るいカザルしか知らないジリスは驚いた。
「ジリス様、『黒の鏡』の映像は証拠として保管してあります。あのような状況は、私も白の国の者として看過できません」
カザルの隣でディンが険しい顔をしている。
「アル様も、大変なご苦労をされました。私はアル様が王位を継ぐのを望んでおりましたが。やはりネモス殿下でしたか」
「俺は王位などどうでも良かったのですが、ジリス様を番に出来るのなら、王位を強く望めばよかったと後悔しています。俺が番になっていれば」
アルの腕が震えた。ジリスは周りの顔を見渡した。皆がジリスを大切に思ってくれている。それがひしひしと伝わってくる。嬉しくて目の奥がジンとする。
「ほら、皆。怖い顔はやめましょう。せっかく会えたのに、ジリスが困っているわ。ジリスを皆で守るって決めたでしょう?」
ジリスの左手を優しく母が包んだ。その上にカザルの手が重なる。
「ジリス、俺たちは白国とやり合う覚悟だってある」
ディンの手が重なり、父が手を重ねた。重なった手が、熱い。
「ジリスは可愛い息子なのだ。息子を傷つけられて怒らない親はいない。私は、王として、父として、ジリスを守ろう」
アルも手を重ねた。
「俺も、ジリス様を護ると誓います」
優しさに包み込まれてジリスは泣いた。泣いてばかりだと思う。けれど、涙は止まらなかった。
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