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Ⅸ 平穏と衝突
①
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黒の国に戻って一ヶ月が過ぎた。静かな幸せの中で、アルと楽しく過ごしている。
カザル夫夫とお茶をしたり出かけたりを楽しんでいる。心配した白国からの動きは無い。
アルはディンと剣術の訓練や体力作りを行っている。
アルは騎士として育ったが、ディンは剣や体術は嗜む程度だったらしい。その差は歴然だ。
それでもアルファ同士が模擬剣で対決すると目を引くほどに華やかだ。それが見たくてジリスは騎士団の訓練を見学しに来た。ジリスに気が付いた騎士が室内からクッションのある椅子を持って来ようとしたが、やんわりと断った。優しさは嬉しいが、アルのことをコッソリ見ていたいから目立ちたくない。
アルは王城騎士宿舎の庭にある訓練場にいた。土煙の立つ訓練場で、走り込みや剣技の型、武術の訓練を黒国騎士と行っている。黒国の人とは気が合うようで、時に笑い合い、楽しそうだ。常設の古いベンチに座ってその様子を眺めた。
アルを見ていると、黒国の騎士隊に入れるだろうと嬉しくなる。アルが黒国で生きる道が見つかりそうだ。アルなら何でも出来そうだけど。
「お、そろそろ始まるな」
ジリスが座っている隣にカザルが来た。古いベンチがギシっと鳴る。
カザルの登場に気づいた騎士たちが、慌てて豪華な椅子とテーブルを移動とするが、再びそれを断って、二人で並んで座った。こうしていると幼い頃みたいだ。カザルとジリスは城の庭を泥だらけになって走り回って育った。
「兄様、もう公務はいいの?」
「うん、終わり。今日はディンがアルと剣をするって言うから見たくて」
「それは分かるよ。ディン様は兄様にデレデレしてばかりのアルファだと思っていたから、こんなに腕が立つとは思わなくてビックリだよ」
「おい、所々失礼だな。ま、ジリスらしい、か」
ジリスとカザルが見守る先には、白い服のアルとディンがいる。白に包まれた二人はキラキラ目立っている。二人とも際立って体格がいい。さすがアルファ二人だ。
「アルは白国で騎士だったんだ。王室護衛隊長で、かっこよくて。僕の迎えに来てくれたのがアルだったんだ。初めて見たときのドキドキを思い出すなぁ」
「ふうん。一目で惹かれるなら、アルとジリスが運命の番だったんじゃないか?」
カザルの言葉が気になった。
「運命の、番?」
「そうだ。神が決めた二人だよ。俺とディンもそう。ただ、ジリスたちの場合、ネモスがオメガの横取りをしただけだ」
カザルはじっとディンを見ている。焦げ茶の瞳が光っている。
「俺はディンを見ただけで心奪われた。ディンの匂いに心臓が高鳴った。神の定めた相手ってこういうことか、と実感した。大げさじゃ無い。本当のことだ」
その言葉に、アルと出会った時のことを思い出す。
馬車の窓ガラス越しだけど、ジリスの目が一瞬で奪われた。王太子がこんな人だと良い、と思った。一緒の空間にいなかったから匂いは分からなかったが。
「俺は、神の決めた二人は、アルとジリスだと思っている。それを引き裂いたのは、掟を破ったのは、白の国だ」
いつも優しい兄が、離れていた一年の間に変わっている。厳しい強さを備えるようになっている。ジリスは圧倒された。
「兄様、なんだか、父様みたいだ」
「ま、将来は黒国国王になるつもりだからな。あ、それか、白国の国王にでもなろうかな。ネモスを処刑したいからな!」
あはは、と笑うカザルの言葉が頭に残る。ネモスが生きていることを、カザルは知っている。
そのとき、キン、と高い音が響いた。
「あ! 始まった」
「お、手合わせだ。これが見たかった。今日は踏ん張れよ、ディン」
頬を緩めてディンを見つめるカザルは、いつもの優しい兄の顔だった。
模擬剣のぶつかる音が響く。アルファ二人の対決に周囲が息を飲む。激しさに見惚れた。
数分の攻防の末、アルがディンの剣を吹き飛ばした。勝負はアルの勝ちだ。
周囲の黒国騎士が歓声を上げている。
二戦、三戦と繰り返されたが、結果は全て同じだった。
手合わせを終えて労をねぎらっている二人を遠くに見つめた。
「なぁ、ジリス。黒国と白国が戦ったら、どちらが勝つと思う?」
ぽつりと呟くカザルの言葉がジリスの心臓をビクリと震わせた。
カザル夫夫とお茶をしたり出かけたりを楽しんでいる。心配した白国からの動きは無い。
アルはディンと剣術の訓練や体力作りを行っている。
アルは騎士として育ったが、ディンは剣や体術は嗜む程度だったらしい。その差は歴然だ。
それでもアルファ同士が模擬剣で対決すると目を引くほどに華やかだ。それが見たくてジリスは騎士団の訓練を見学しに来た。ジリスに気が付いた騎士が室内からクッションのある椅子を持って来ようとしたが、やんわりと断った。優しさは嬉しいが、アルのことをコッソリ見ていたいから目立ちたくない。
アルは王城騎士宿舎の庭にある訓練場にいた。土煙の立つ訓練場で、走り込みや剣技の型、武術の訓練を黒国騎士と行っている。黒国の人とは気が合うようで、時に笑い合い、楽しそうだ。常設の古いベンチに座ってその様子を眺めた。
アルを見ていると、黒国の騎士隊に入れるだろうと嬉しくなる。アルが黒国で生きる道が見つかりそうだ。アルなら何でも出来そうだけど。
「お、そろそろ始まるな」
ジリスが座っている隣にカザルが来た。古いベンチがギシっと鳴る。
カザルの登場に気づいた騎士たちが、慌てて豪華な椅子とテーブルを移動とするが、再びそれを断って、二人で並んで座った。こうしていると幼い頃みたいだ。カザルとジリスは城の庭を泥だらけになって走り回って育った。
「兄様、もう公務はいいの?」
「うん、終わり。今日はディンがアルと剣をするって言うから見たくて」
「それは分かるよ。ディン様は兄様にデレデレしてばかりのアルファだと思っていたから、こんなに腕が立つとは思わなくてビックリだよ」
「おい、所々失礼だな。ま、ジリスらしい、か」
ジリスとカザルが見守る先には、白い服のアルとディンがいる。白に包まれた二人はキラキラ目立っている。二人とも際立って体格がいい。さすがアルファ二人だ。
「アルは白国で騎士だったんだ。王室護衛隊長で、かっこよくて。僕の迎えに来てくれたのがアルだったんだ。初めて見たときのドキドキを思い出すなぁ」
「ふうん。一目で惹かれるなら、アルとジリスが運命の番だったんじゃないか?」
カザルの言葉が気になった。
「運命の、番?」
「そうだ。神が決めた二人だよ。俺とディンもそう。ただ、ジリスたちの場合、ネモスがオメガの横取りをしただけだ」
カザルはじっとディンを見ている。焦げ茶の瞳が光っている。
「俺はディンを見ただけで心奪われた。ディンの匂いに心臓が高鳴った。神の定めた相手ってこういうことか、と実感した。大げさじゃ無い。本当のことだ」
その言葉に、アルと出会った時のことを思い出す。
馬車の窓ガラス越しだけど、ジリスの目が一瞬で奪われた。王太子がこんな人だと良い、と思った。一緒の空間にいなかったから匂いは分からなかったが。
「俺は、神の決めた二人は、アルとジリスだと思っている。それを引き裂いたのは、掟を破ったのは、白の国だ」
いつも優しい兄が、離れていた一年の間に変わっている。厳しい強さを備えるようになっている。ジリスは圧倒された。
「兄様、なんだか、父様みたいだ」
「ま、将来は黒国国王になるつもりだからな。あ、それか、白国の国王にでもなろうかな。ネモスを処刑したいからな!」
あはは、と笑うカザルの言葉が頭に残る。ネモスが生きていることを、カザルは知っている。
そのとき、キン、と高い音が響いた。
「あ! 始まった」
「お、手合わせだ。これが見たかった。今日は踏ん張れよ、ディン」
頬を緩めてディンを見つめるカザルは、いつもの優しい兄の顔だった。
模擬剣のぶつかる音が響く。アルファ二人の対決に周囲が息を飲む。激しさに見惚れた。
数分の攻防の末、アルがディンの剣を吹き飛ばした。勝負はアルの勝ちだ。
周囲の黒国騎士が歓声を上げている。
二戦、三戦と繰り返されたが、結果は全て同じだった。
手合わせを終えて労をねぎらっている二人を遠くに見つめた。
「なぁ、ジリス。黒国と白国が戦ったら、どちらが勝つと思う?」
ぽつりと呟くカザルの言葉がジリスの心臓をビクリと震わせた。
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