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Ⅸ 平穏と衝突
⑦
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黒の煌めきが白国に向けて駆け抜ける。
はっとした。これは強大な黒魔術だ。
ジリスが後ろを振り向けば、いつの間にか黒国軍が陣取っていた。
「なに、何をしたぁ! 黒のオメガどもめぇ」
黒い風に驚いたネモスたちが慌てている。白国軍がどよめく。
しかし、何が起きたのか、見ているジリスには分からなかった。呆然としているジリスの隣に、カザルが立った。厳しい顔をして、黒の結界越しにネモスを睨んでいる。
「白国よ! 黒国は白国の奴隷になどならない! そのような暴言を吐き、俺の弟を苦しめ、軍を率いて黒国を威圧した報いを受けよ!」
カザルの強い声が響いた。
ネモスは自分の身体をしきりに触れて、青ざめている。
白国軍の声を良く聞けば、「伯爵公まで」「あぁ、中将までが!」と混乱が広がっている。
白国軍の中から数名が前に歩み出て来た。中心の人物を見て息を飲んだ。白国国王陛下だ。この場に来ていたのだ。
ジリスは飛び上がりたい気持ちになった。まだ、諦めなくてもいい。
「国王陛下……」
アルの呟きが聞こえた。アルの背をポンと叩く人がいて振り返れば、父である黒国国王も前に出てきている。
黒の結界を挟んで、白国国王と黒国国王が対峙する。
「白の国よ!」
先に口を開いたのは黒国だった。
「我らはオメガとして生を受ける黒国の民だ。それは決して虐げられることでない。オメガだからと苦しめられる事でもない! 白の国が、我が息子ジリスをオメガだからと虐げるのならば、それ相応の報復をするまで! 知らぬと思ったか! 黒は鏡になる! 闇は全てを映す。この度の進軍が和平を求めるものなら応じるつもりもあった。しかし! 和平どころか、我が国を奴隷とするなど、侵略行為は明らか! 黒国は防衛のために戦う!」
黒国軍が足を踏み鳴らして黒国国王に賛同の意を示した。地から伝わる迫力がジリスの心臓がバクバクと高鳴らせた。黒国の熱い想いがジリスの心を刺激する。
「くそう! 黒国め! ふざけるな! こうなれば黒の全てを潰してやる! 黒国など無くなればいいのだ!」
ネモスが大声で叫んだ。白国の国王は、ネモスと黒国をゆっくりと見た。
「ネモス、待て。黒の国王よ。どういうことか聞かせて欲しい。ネモスからは、ジリス妃殿下が護衛の侯爵家子息アルと不義を働き、ネモス殺害を企てた、と聞いている。オメガを虐げる、苦しめる、とは何だ?」
ネモスが慌てたように白国国王に縋り付いた。
「父王陛下、聞く必要などありません! オメガの言葉など信じてはいけません。黒国はおかしい奴らです。こんな黒国の王族など、殺せばいいのです! 全て我が白国とすれば良いのです!」
たまらずにジリスは声を上げた。
「白の国王陛下! 僕はネモス王太子と番になりましたが、発情期を共にしたのは番になったときの一度きり。それ以降は白の部屋に閉じ込められ、独りで過ごすことを強要されました! それがどれほどの苦痛かわかりますか? 僕が番にされた時には、ネモス殿下にはミーナという愛人女性がいました。不義を働いていたのはネモス殿下です! さらに黒魔術を使うことを強要され、白国での苦痛な日々に耐えられなくなり、僕はネモス殿下を刺しました。ですが! 僕は白国の次期王妃として立派に役目を果たそうとしたのです! 苦しめられる日々に何とか耐えたのです! 僕には、こうする以外に、もう……」
途中から悲鳴のような声になっていた。興奮して涙が流れていた。
あの白国の日々を思い、苦しさの全てを吐き出すように訴えた。ジリスを支えるアルの腕に力がこもる。
「国王陛下、アル・ダグリーです! 申し上げます! 俺はジリス様を逃がしました。ジリス様は、お傍で見ているのが耐えられないほどの苦しみを、味わっておられました。本来ならば、大切に愛されるはずの妃殿下です! 苦しめていいはずがありません! この場で最大の罪人は、ネモス殿下だ! ネモス! 恥を知れ!」
アルが驚くほどの大声を張り上げた。
「アル! 貴様、臣下の分際で、オレを侮辱するとは~~! 拷問の上、死刑だ!」
ネモスが怒りを顕わにするが、ジリスはおかしなことに気が付いた。
アルから発せられているようなアルファの圧が、ネモスに無い。白国軍を見渡して、先ほどまで感じていたアルファの圧が消え去っていることに気が付いた。
「何という事だ……」
白の国王がネモスとジリスを交互に見つめた。
「白の国王よ。ジリスとアルが申していることは事実だ。わが国には黒の鏡に残している証拠がある。起きたことを映像で残してある。言い逃れはできぬぞ」
黒の国王の言葉の後に、ジリスは白の国王に向けて左腕を出した。黒魔術を使った代償であることは、白国国王なら分かるはずだ。
はっとした。これは強大な黒魔術だ。
ジリスが後ろを振り向けば、いつの間にか黒国軍が陣取っていた。
「なに、何をしたぁ! 黒のオメガどもめぇ」
黒い風に驚いたネモスたちが慌てている。白国軍がどよめく。
しかし、何が起きたのか、見ているジリスには分からなかった。呆然としているジリスの隣に、カザルが立った。厳しい顔をして、黒の結界越しにネモスを睨んでいる。
「白国よ! 黒国は白国の奴隷になどならない! そのような暴言を吐き、俺の弟を苦しめ、軍を率いて黒国を威圧した報いを受けよ!」
カザルの強い声が響いた。
ネモスは自分の身体をしきりに触れて、青ざめている。
白国軍の声を良く聞けば、「伯爵公まで」「あぁ、中将までが!」と混乱が広がっている。
白国軍の中から数名が前に歩み出て来た。中心の人物を見て息を飲んだ。白国国王陛下だ。この場に来ていたのだ。
ジリスは飛び上がりたい気持ちになった。まだ、諦めなくてもいい。
「国王陛下……」
アルの呟きが聞こえた。アルの背をポンと叩く人がいて振り返れば、父である黒国国王も前に出てきている。
黒の結界を挟んで、白国国王と黒国国王が対峙する。
「白の国よ!」
先に口を開いたのは黒国だった。
「我らはオメガとして生を受ける黒国の民だ。それは決して虐げられることでない。オメガだからと苦しめられる事でもない! 白の国が、我が息子ジリスをオメガだからと虐げるのならば、それ相応の報復をするまで! 知らぬと思ったか! 黒は鏡になる! 闇は全てを映す。この度の進軍が和平を求めるものなら応じるつもりもあった。しかし! 和平どころか、我が国を奴隷とするなど、侵略行為は明らか! 黒国は防衛のために戦う!」
黒国軍が足を踏み鳴らして黒国国王に賛同の意を示した。地から伝わる迫力がジリスの心臓がバクバクと高鳴らせた。黒国の熱い想いがジリスの心を刺激する。
「くそう! 黒国め! ふざけるな! こうなれば黒の全てを潰してやる! 黒国など無くなればいいのだ!」
ネモスが大声で叫んだ。白国の国王は、ネモスと黒国をゆっくりと見た。
「ネモス、待て。黒の国王よ。どういうことか聞かせて欲しい。ネモスからは、ジリス妃殿下が護衛の侯爵家子息アルと不義を働き、ネモス殺害を企てた、と聞いている。オメガを虐げる、苦しめる、とは何だ?」
ネモスが慌てたように白国国王に縋り付いた。
「父王陛下、聞く必要などありません! オメガの言葉など信じてはいけません。黒国はおかしい奴らです。こんな黒国の王族など、殺せばいいのです! 全て我が白国とすれば良いのです!」
たまらずにジリスは声を上げた。
「白の国王陛下! 僕はネモス王太子と番になりましたが、発情期を共にしたのは番になったときの一度きり。それ以降は白の部屋に閉じ込められ、独りで過ごすことを強要されました! それがどれほどの苦痛かわかりますか? 僕が番にされた時には、ネモス殿下にはミーナという愛人女性がいました。不義を働いていたのはネモス殿下です! さらに黒魔術を使うことを強要され、白国での苦痛な日々に耐えられなくなり、僕はネモス殿下を刺しました。ですが! 僕は白国の次期王妃として立派に役目を果たそうとしたのです! 苦しめられる日々に何とか耐えたのです! 僕には、こうする以外に、もう……」
途中から悲鳴のような声になっていた。興奮して涙が流れていた。
あの白国の日々を思い、苦しさの全てを吐き出すように訴えた。ジリスを支えるアルの腕に力がこもる。
「国王陛下、アル・ダグリーです! 申し上げます! 俺はジリス様を逃がしました。ジリス様は、お傍で見ているのが耐えられないほどの苦しみを、味わっておられました。本来ならば、大切に愛されるはずの妃殿下です! 苦しめていいはずがありません! この場で最大の罪人は、ネモス殿下だ! ネモス! 恥を知れ!」
アルが驚くほどの大声を張り上げた。
「アル! 貴様、臣下の分際で、オレを侮辱するとは~~! 拷問の上、死刑だ!」
ネモスが怒りを顕わにするが、ジリスはおかしなことに気が付いた。
アルから発せられているようなアルファの圧が、ネモスに無い。白国軍を見渡して、先ほどまで感じていたアルファの圧が消え去っていることに気が付いた。
「何という事だ……」
白の国王がネモスとジリスを交互に見つめた。
「白の国王よ。ジリスとアルが申していることは事実だ。わが国には黒の鏡に残している証拠がある。起きたことを映像で残してある。言い逃れはできぬぞ」
黒の国王の言葉の後に、ジリスは白の国王に向けて左腕を出した。黒魔術を使った代償であることは、白国国王なら分かるはずだ。
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