【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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Ⅹ 白の国王と王妃

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 アルが白の国に行き、三か月が過ぎた。すっかり冬だ。黒の国に白い雪が降る。
 冬だけは黒国が白に染まって不思議な感じだ。

 ジリスは雪かきの手を止めて、空を見上げた。

(白国でも、雪は降るのかな。白国で過ごした冬の記憶があまりないや。発情期が来なくなって、ネモスに静養していろ、と閉じ込められてたからなぁ)

 ジリスの顔に雪が触れる。ぼんやりと雪を見上げていると、侍女の声が聞こえた。

「ジリス様! 白の国王よりお手紙が届いたようです」
「本当? すぐ行くよ! ここ、任せてもいいかな?」

「もちろんでございます。もともと我々の仕事ですから! ジリス殿下に感謝申し上げたいくらいです」
 一緒に王城通路の雪かきをしていた侍従たちがニコリと笑ってくれる。

「また戻るから、くしゅんっ!」
 顔で雪を受け止めたせいか、クシャミがでた。ズっと鼻をすすれば、侍従たちが大騒ぎした。

「ジリス様がお風邪を召されてしまう!」
「誰か! 早く室内に! 温かいものを」
 ワイワイ騒ぐ皆に「大丈夫だよ」と笑ってジリスは王城内に戻った。

 城内に戻って、ガタガタ震える身体を自覚して、冷えすぎたと反省した。
「ジリス様、大丈夫でしょうか? お顔色がよろしくないです」
 付き添う侍女が心配そうにジリスを見る。

「うん。ちょっと、外に居すぎたかも」
「お部屋は暖めてあります。温かい黒ココアもご用意してあります。その、しばらく、善行は控えたら、どうでしょうか」
 意見することをためらいながらの侍女の言葉に微笑みを返した。

 ジリスはアルに「僕も頑張っているし、諦めていないんだ」とアピールできたらいいと思う。そのために手紙には必ず返事を出すようにしている。
 返事が遅くならないように善行を沢山している。そうすればジリスの想いがアルに伝わるはずだ。

 ジリスができる事なら、何でもしなくてはいけない。アルに恥じないためにも。

「ありがとう。でも、僕には、やるべき、こと、が……」

 会話をしているつもりだった。けれど、目の前が揺れて、急に視界が暗転した。ドサッと大きな音がした。

「きゃーー! ジリス様! 誰かぁ!」
 悲鳴のような侍女の声が響いた。

(え? どうかした?)
 ジリスは侍女にたずねたつもりだったが、意識がプツリと途切れてしまった。


 はっとジリスが目覚めると温かいベッドの中だった。
「目覚めた? ジリス」
 枕元にはカザルがいた。
「あれ? 兄様? 公務は?」
「バカ。ジリスが倒れたって聞いて、全部放置してきた」

「え? 僕、倒れたの?」
「ああ。ジリス、しばらく白魔術禁止だからな」

 カザルの言葉にぎょっとする。アルへの返事が書けないと困る。
「兄様、大丈夫だって。たまたまフラついただけだから」

「フラついただけで熱が出るワケないだろ」
 コツンと額を突かれた。イテテ、と頭を押さえて首を傾げた。

「僕、熱があるの?」
「そ。医者に診てもらったよ。疲れだって。ジリスが無理したらアルが悲しむぞ。ということで、白国へ伝達で、ジリスが熱を出して倒れたことを伝えた。こうでもしないとジリスは善行とやらをしそうだからな」

「え? アルに言ったの? 兄様、意地悪だぁ」
 アルに情けないところは知られたくなかった。ジリスは肩を落とした。

「アルから伝言だ。とにかく休んで、静養させてくださいって。アルが傍に居られないことが悔しくて仕方ないってさ。体調が戻るまで毎日状態の報告伝達お願いします、と言われているよ。伝達使者が国境近くに滞在しているぞ」
 ジリスの脳裏には、ジリスに無理をさせまいとするアルの必死な顔が浮かんだ。

「そっか。お手上げだよ。ゆっくり休養します」
「そうだ。温かくして寝るんだ。ジリスは頑張りすぎる感があるからな」

 上掛けをかけなおしてくれて、カザルが布団をトントンと叩く。まるで子供の寝かしつけだ。可笑しくてクスッと笑った。
「ジリスが寝るまで、付き添うぞ」
「あはは。じゃ、ずっと起きていよう」
「熱が出てもジリスらしい。ほら、目を閉じろ」

 カザルの言う通りに目を閉じれば、確かに頭がズンズンと痛んでいるのが分かった。トントンと優しいリズムが心地いい。

「ジリス、俺はお前が心配だよ。いつか、倒れて、消えてしまうような気がして……。頑張れってけしかけてゴメン。ジリスに生きる希望をあげたかったんだ。追いつめるつもりは、なくて……。兄らしく助けてあげられなくて、ゴメン」

 なぜカザルが謝っているのか分からないけれど、重くなる瞼を開けることが出来ずに、ジリスは眠りの世界に入り込んだ。
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