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番外編 ジリスが向き合うモノは
王妃として②
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「ジリス様、城下街外れの果樹園でございます。良ければ収穫体験もされますか?」
ルルドが馬車の扉を開けて案内してくれる。
前後に騎士が護衛でつき、侍女も三名ついている。仰々しくて申し訳なさを感じながら、ジリスは王妃だから、その全てを受け入れようと思った。
果樹園を見てジリスは驚いた。秋の洋ナシが実っているのだが、黒国の果樹園とはまるで違う。
洋ナシの木は枝が伸び放題で、雑草も多く、実り方もバラツキがある。これでは果樹園ではなく、野生状態だ。
「ルルドに聞いても良い?」
「はい、何なりと」
「果樹園は、手入れは誰がしている?」
「手入れ、といいますと、白魔術の術者でしょうか」
ルルドの答えにピンときた。白の国は、魔術が日常生活に溢れているから、食物を育てるための努力をしないのだ。果樹園も、木々を植えたら、収穫まで白魔術しかかけないのだろう。
きっと、田畑も十分な管理がされていないのかもしれない。
「では、例えば、余分な枝を取ることや、果実の糖度や出来を上げるために間引くこと、害虫対策などは、しないのかな?」
「は? えっと、人が自然の恵みに手を加えるのですか? 白魔術ではなく?」
「うん」
「いえ、白の国では聞いたことがございません」
それを聞いて、ジリスは自分のやるべきことが見えて来た。
「じゃ、果樹園の人を呼んでもらえる?」
果樹園の管理をしている者を呼び、ジリスは今の時期なら、熟した果実を鳥から守るための鳥よけの設置、実が多すぎる木は少し間引くことで甘みが増すことなど、簡単に説明した。
木々の周りの草取りや水やりなどの手入れも、善行として行って欲しいと伝えた。
管理者たちは驚いていたが、ジリスが実際に行って見せると、「王妃様がおっしゃるのなら」と手入れを約束してくれた。
果樹園の帰りに、ルルドに頼んで田畑を見せてもらった。
やはり、果樹園と同じで、放置されている状態であった。このように白魔術に任せっきりでは、アルの求める豊かな国とは程遠い。
ジリスには、白の国のためにできる事があるかもしれない。ジリスは花や果実の手入れは好きな分野だ。
やることが見えてくるとワクワクしてきた。貴族と茶を飲んでいるだけより良い。城に戻って早くアルに相談したかった。
その夜。夕食前に居室に戻ったアルに飛びつく勢いでジリスは出迎えた。
「アル! お疲れさま。聞いてほしいんだ!」
「ジリス様、お出かけの事ですか? 騎士たちがザワついていましたよ。全く、あなたは面白い」
アルの青い瞳が優しく細くなる。
「うん。だって、アルだって気が付いていただろ? 白国と黒国の違いだ」
「ですね。黒国で俺が感動した、生活の違いが分かっていただけましたか?」
「よく分かったよ。白国は、けっこう運まかせ、白魔術まかせなんだね」
「正解です。だから、俺の侯爵家領地は水害が多くても対処されてこなかった」
白魔術に頼るだけではなく、インフラ整備に着目したアルの侯爵家は、白国では異端だっただろう。
けれどジリスからすれば、アルの一家は、先駆者だ。やはり、アルは王になるべくして選ばれたアルファだと感じた。
「アルと一緒にさ、やりたいことが見えたんだ」
「ジリス様なら、そう言うと思っていました。ぜひ、聞かせてください」
アルがジリスをフワリと抱き上げた。ジリスはアルの首に抱き着いて、運ぶのが楽なようにする。
顔が密着する位置が嬉しい。
「僕が目指す事って、反発もあるかもしれないんだ。だからこそ、どうやって浸透させていくかをアルと考えたい」
首にしがみ付いたまま話せば、アルがクスッと笑うのが喉から伝わる。
「承知しました。ジリス様の望みを叶えるのは俺の役割です。公務より何より、胸が躍ります!」
楽しそうに破顔したアルが、ジリスを横抱きにしたまま、くるくると回った。
「わわ! アル、やめて!」
急な回転に驚いてジリスは足をバタつかせた。その拍子に、アルがバランスを崩して、ソファーに倒れ込むように座った。
思ったより勢いがついたのだろう。アルが驚いた顔をしている。ジリスだって転ぶかと思い、ヒヤッとした。二人で顔を見合わせた。徐々に笑いが湧き上がった。
笑いが落ち着いて、ジリスは今日の事を話した。アルは静かに聞いてくれた。
農政の部分で変えていけることを説明すると、教育部門からも意識の変化をもたらしましょう、とアルが提案してくれた。時間はかかるだろう。けれど、取り組む価値のあることだ。
笑い合って、白国を豊かな国にしよう、と誓った。
白魔術は大切に、そして生きる努力も大切に出来る国に、そう願って。
ルルドが馬車の扉を開けて案内してくれる。
前後に騎士が護衛でつき、侍女も三名ついている。仰々しくて申し訳なさを感じながら、ジリスは王妃だから、その全てを受け入れようと思った。
果樹園を見てジリスは驚いた。秋の洋ナシが実っているのだが、黒国の果樹園とはまるで違う。
洋ナシの木は枝が伸び放題で、雑草も多く、実り方もバラツキがある。これでは果樹園ではなく、野生状態だ。
「ルルドに聞いても良い?」
「はい、何なりと」
「果樹園は、手入れは誰がしている?」
「手入れ、といいますと、白魔術の術者でしょうか」
ルルドの答えにピンときた。白の国は、魔術が日常生活に溢れているから、食物を育てるための努力をしないのだ。果樹園も、木々を植えたら、収穫まで白魔術しかかけないのだろう。
きっと、田畑も十分な管理がされていないのかもしれない。
「では、例えば、余分な枝を取ることや、果実の糖度や出来を上げるために間引くこと、害虫対策などは、しないのかな?」
「は? えっと、人が自然の恵みに手を加えるのですか? 白魔術ではなく?」
「うん」
「いえ、白の国では聞いたことがございません」
それを聞いて、ジリスは自分のやるべきことが見えて来た。
「じゃ、果樹園の人を呼んでもらえる?」
果樹園の管理をしている者を呼び、ジリスは今の時期なら、熟した果実を鳥から守るための鳥よけの設置、実が多すぎる木は少し間引くことで甘みが増すことなど、簡単に説明した。
木々の周りの草取りや水やりなどの手入れも、善行として行って欲しいと伝えた。
管理者たちは驚いていたが、ジリスが実際に行って見せると、「王妃様がおっしゃるのなら」と手入れを約束してくれた。
果樹園の帰りに、ルルドに頼んで田畑を見せてもらった。
やはり、果樹園と同じで、放置されている状態であった。このように白魔術に任せっきりでは、アルの求める豊かな国とは程遠い。
ジリスには、白の国のためにできる事があるかもしれない。ジリスは花や果実の手入れは好きな分野だ。
やることが見えてくるとワクワクしてきた。貴族と茶を飲んでいるだけより良い。城に戻って早くアルに相談したかった。
その夜。夕食前に居室に戻ったアルに飛びつく勢いでジリスは出迎えた。
「アル! お疲れさま。聞いてほしいんだ!」
「ジリス様、お出かけの事ですか? 騎士たちがザワついていましたよ。全く、あなたは面白い」
アルの青い瞳が優しく細くなる。
「うん。だって、アルだって気が付いていただろ? 白国と黒国の違いだ」
「ですね。黒国で俺が感動した、生活の違いが分かっていただけましたか?」
「よく分かったよ。白国は、けっこう運まかせ、白魔術まかせなんだね」
「正解です。だから、俺の侯爵家領地は水害が多くても対処されてこなかった」
白魔術に頼るだけではなく、インフラ整備に着目したアルの侯爵家は、白国では異端だっただろう。
けれどジリスからすれば、アルの一家は、先駆者だ。やはり、アルは王になるべくして選ばれたアルファだと感じた。
「アルと一緒にさ、やりたいことが見えたんだ」
「ジリス様なら、そう言うと思っていました。ぜひ、聞かせてください」
アルがジリスをフワリと抱き上げた。ジリスはアルの首に抱き着いて、運ぶのが楽なようにする。
顔が密着する位置が嬉しい。
「僕が目指す事って、反発もあるかもしれないんだ。だからこそ、どうやって浸透させていくかをアルと考えたい」
首にしがみ付いたまま話せば、アルがクスッと笑うのが喉から伝わる。
「承知しました。ジリス様の望みを叶えるのは俺の役割です。公務より何より、胸が躍ります!」
楽しそうに破顔したアルが、ジリスを横抱きにしたまま、くるくると回った。
「わわ! アル、やめて!」
急な回転に驚いてジリスは足をバタつかせた。その拍子に、アルがバランスを崩して、ソファーに倒れ込むように座った。
思ったより勢いがついたのだろう。アルが驚いた顔をしている。ジリスだって転ぶかと思い、ヒヤッとした。二人で顔を見合わせた。徐々に笑いが湧き上がった。
笑いが落ち着いて、ジリスは今日の事を話した。アルは静かに聞いてくれた。
農政の部分で変えていけることを説明すると、教育部門からも意識の変化をもたらしましょう、とアルが提案してくれた。時間はかかるだろう。けれど、取り組む価値のあることだ。
笑い合って、白国を豊かな国にしよう、と誓った。
白魔術は大切に、そして生きる努力も大切に出来る国に、そう願って。
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