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番外編 ジリスが向き合うモノは
元王太子との対面①
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ジリスは上流貴族の家柄、繋がり、立場を把握できるように手帳にまとめている。
白国の貴族については知識がないから覚えなくてはいけない。アルからもらった貴族一覧を見れば、線で消されている貴族がチラホラいることが分かる。きっと、これは、粛清された者たちだ。
消された部分を見て、ジリスはため息をついた。
――ネモスに加担した者たち。
その名前を指でなぞり、落ち込む気持ちをどうにも出来ずに目を閉じた。
「疲れていませんか? 最近は冷えますし」
いつの間にかアルが後ろにいた。
白国の農政に関わるのなら書斎がいるだろう、と専用の部屋をもらってから、ジリスは書斎に閉じこもりになることが増えている。今日も夢中になっていた。
ジリスの頭にキスが降りる。甘えるようなキスから、アルの疲れが伝わってくる。
「疲れているのはアルじゃないの?」
アルは毎日執務に追われている。今日も夕食を一緒に食べられなかった。
待っていたけれど、先に食べるように、とアルの言葉を伝えられて、渋々ジリスは独りで食事をした。こんなことが度々ある。
「俺はアルファですし、丈夫に出来ています。ジリス様こそ、農産物収穫までの指導書の作成、ご無理されていませんか?」
「僕は大丈夫だよ。黒国でやっていたことを書き記しているだけだし」
互いに心配して、互いに大丈夫だと言い合う面白さをアルと笑った。
「今は何を?」
ジリスのデスクをアルがのぞき込む。
「今日はチロ伯爵公のお茶会に招かれたから、手帳に書き記していたんだ」
「あぁ、こういうところがジリス様の勤勉が光るところですね」
「あはは。覚えられないだけだよ。チロ伯爵マダムは男爵家から嫁いだんだな。貴族の中では階級をまたいで結婚するって珍しいなって思って、アルのくれた貴族一覧見ていたんだ」
「あぁ、チロ伯爵家は、この国家権力家から少し外れていまして、下級貴族と付き合いが多いのですよ」
アルが真横に立ち、貴族表を一緒に見る。
「こうして一覧見ると、結構ネモス派閥がいたんだな」
「そうですね。粛正したせいで起きている政務的な人手不足は、どうしようもないですね」
「ネモス派って、末端まで全て粛清したんだよね?」
「はい」
「もし、末端貴族だけでも国政に復職させたら、ちょっとアルが楽になるんじゃない?」
ジリスの言葉にアルが顔をしかめた。
「許せ、と言われるのですか?」
「そうじゃないよ。戦争の陽動をしたんだ。許されるべきじゃない。けどさ、ネモスの夜会で見た時には、ネモスに仕方なく加担している様子の貴族もいたな、って思っただけ。アルだって、侯爵家のためにネモスに従っていただろう?」
アルは険しい顔のまま静止している。
「もし、仕方なく従って罰せられている人がいたら、だよ。優秀な人が禁固刑のままになっていたら、勿体ないなって。アルが楽になるかもなのに、さ」
爵位を落とされた貴族たちは一様に禁固刑として国政への参加は禁じられている。地方公務に関する仕事を細々と行うだけが現状だ。
「はぁ。また、ジリス様の聡明さには驚かされます。今は残った貴族で国務を回していますが、正直ギリギリです。新たに人を入れても、使えるようになるまでが大変ですし。どうにか案は無いかと頭が痛いところでした。気持ち的にネモス派と考えると嫌だったのですが。そうですね。言われてみれば、俺だってネモスに従っていた」
アルの顔がふわりと柔らかくなる。それを見てジリスは安堵した。
「アルは、アルファだからって頑張りすぎているんだよ。アルファだって人だよ。無理し過ぎないで。僕だってオメガだけど、特別何か変わったことがあるワケじゃない。あ、発情期くらいはあるけど」
アルがブハっと笑った。
「さすがジリス様です。発情期くらい、ですか。そうか。俺は頑張りすぎですか」
アルがジリスの頭に顔を埋めた。熱い息が頭に当たる。
「国王として、国のために頑張らないといけないと思っています。ですが、最近、時々とても身体が重く感じることがあって」
頭に声が注がれる。ジリスはアルの大きな身体をポンポンと叩いた。
「アル、こっちに」
ジリスの書斎には、お茶が出来る休憩スペースと、体を横にできる長椅子がある。ジリスはアルの腕を引っ張って長椅子に誘導した。
「アル、ほら、横になって。僕の太ももに頭を乗せて、と」
「はい? ジリス様、これは……」
「うん。膝枕で頭ナデナデ。ほら、目を閉じて。アルは、すごい男だ。何でも叶えてくれる神様みたいだ。優しくて、カッコよくて。僕から何もお礼が出来なくて、ごめんね。少し疲れが取れますように」
「ジリス様……」
アルの頭をゆっくり撫でた。頑張ってくれてありがとう、と気持ちが伝わるように願った。
静かな時間が流れた。
白国の貴族については知識がないから覚えなくてはいけない。アルからもらった貴族一覧を見れば、線で消されている貴族がチラホラいることが分かる。きっと、これは、粛清された者たちだ。
消された部分を見て、ジリスはため息をついた。
――ネモスに加担した者たち。
その名前を指でなぞり、落ち込む気持ちをどうにも出来ずに目を閉じた。
「疲れていませんか? 最近は冷えますし」
いつの間にかアルが後ろにいた。
白国の農政に関わるのなら書斎がいるだろう、と専用の部屋をもらってから、ジリスは書斎に閉じこもりになることが増えている。今日も夢中になっていた。
ジリスの頭にキスが降りる。甘えるようなキスから、アルの疲れが伝わってくる。
「疲れているのはアルじゃないの?」
アルは毎日執務に追われている。今日も夕食を一緒に食べられなかった。
待っていたけれど、先に食べるように、とアルの言葉を伝えられて、渋々ジリスは独りで食事をした。こんなことが度々ある。
「俺はアルファですし、丈夫に出来ています。ジリス様こそ、農産物収穫までの指導書の作成、ご無理されていませんか?」
「僕は大丈夫だよ。黒国でやっていたことを書き記しているだけだし」
互いに心配して、互いに大丈夫だと言い合う面白さをアルと笑った。
「今は何を?」
ジリスのデスクをアルがのぞき込む。
「今日はチロ伯爵公のお茶会に招かれたから、手帳に書き記していたんだ」
「あぁ、こういうところがジリス様の勤勉が光るところですね」
「あはは。覚えられないだけだよ。チロ伯爵マダムは男爵家から嫁いだんだな。貴族の中では階級をまたいで結婚するって珍しいなって思って、アルのくれた貴族一覧見ていたんだ」
「あぁ、チロ伯爵家は、この国家権力家から少し外れていまして、下級貴族と付き合いが多いのですよ」
アルが真横に立ち、貴族表を一緒に見る。
「こうして一覧見ると、結構ネモス派閥がいたんだな」
「そうですね。粛正したせいで起きている政務的な人手不足は、どうしようもないですね」
「ネモス派って、末端まで全て粛清したんだよね?」
「はい」
「もし、末端貴族だけでも国政に復職させたら、ちょっとアルが楽になるんじゃない?」
ジリスの言葉にアルが顔をしかめた。
「許せ、と言われるのですか?」
「そうじゃないよ。戦争の陽動をしたんだ。許されるべきじゃない。けどさ、ネモスの夜会で見た時には、ネモスに仕方なく加担している様子の貴族もいたな、って思っただけ。アルだって、侯爵家のためにネモスに従っていただろう?」
アルは険しい顔のまま静止している。
「もし、仕方なく従って罰せられている人がいたら、だよ。優秀な人が禁固刑のままになっていたら、勿体ないなって。アルが楽になるかもなのに、さ」
爵位を落とされた貴族たちは一様に禁固刑として国政への参加は禁じられている。地方公務に関する仕事を細々と行うだけが現状だ。
「はぁ。また、ジリス様の聡明さには驚かされます。今は残った貴族で国務を回していますが、正直ギリギリです。新たに人を入れても、使えるようになるまでが大変ですし。どうにか案は無いかと頭が痛いところでした。気持ち的にネモス派と考えると嫌だったのですが。そうですね。言われてみれば、俺だってネモスに従っていた」
アルの顔がふわりと柔らかくなる。それを見てジリスは安堵した。
「アルは、アルファだからって頑張りすぎているんだよ。アルファだって人だよ。無理し過ぎないで。僕だってオメガだけど、特別何か変わったことがあるワケじゃない。あ、発情期くらいはあるけど」
アルがブハっと笑った。
「さすがジリス様です。発情期くらい、ですか。そうか。俺は頑張りすぎですか」
アルがジリスの頭に顔を埋めた。熱い息が頭に当たる。
「国王として、国のために頑張らないといけないと思っています。ですが、最近、時々とても身体が重く感じることがあって」
頭に声が注がれる。ジリスはアルの大きな身体をポンポンと叩いた。
「アル、こっちに」
ジリスの書斎には、お茶が出来る休憩スペースと、体を横にできる長椅子がある。ジリスはアルの腕を引っ張って長椅子に誘導した。
「アル、ほら、横になって。僕の太ももに頭を乗せて、と」
「はい? ジリス様、これは……」
「うん。膝枕で頭ナデナデ。ほら、目を閉じて。アルは、すごい男だ。何でも叶えてくれる神様みたいだ。優しくて、カッコよくて。僕から何もお礼が出来なくて、ごめんね。少し疲れが取れますように」
「ジリス様……」
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