【本編完結】番殺しの黒オメガが背負う愛は

小池 月

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番外編 ジリスが向き合うモノは

元王太子との対面②

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 翌日。ジリスは意を決して、ある場所に来た。

 心に蓋をして、見ないようにしていたことに向き合う必要があるから。

「本当に、アル陛下にお知らせしなくて良かったのでしょうか」
 付き添ってくれる侍女の質問にジリスはコクリと頷いた。

「うん。きっとアルはダメって言いそうだから。あなたたちの罪にはしないから、大丈夫です」

 微笑んで伝えるが、侍女は不安そうに下を向く。ジリスは到着した建物を見上げた。
 護衛でついている騎士たちも動揺しているのが分かる。

「ジリス妃殿下、王都の洋菓子店に行かれるのではないのですか?」
 騎士の一人が声を上げた。

「はい。これは僕の独断です。もし、ご迷惑でしたら、ここで待っていてもらって構いません」
 ジリスはキュッと口を結んで答えた。

「いえ! そんなわけには行きません。我々はジリス妃殿下の護衛です」
「私たちも中にお供します」
「わかりました。ありがとう」

 ジリスの登場に幽閉棟の監視兵たちが驚き慌てる。彼らに簡単に挨拶をして中に通してもらった。

 ――ネモスのいるところに。


 幽閉棟は王都の北外れにある。
 もっと郊外にネモスを収容する予定であったが、やはり前国王と前王妃にとっては息子であり、目が届く場所に置きたいと切望し、ここになった。

 幽閉棟と言うが、もともと王家の別邸を軟禁用に作り変えただけの建物。
 敷地周囲は鉄柵と塀で囲まれ、外部との接触は禁止。門には鍵が付けられ、建物の窓枠にも鉄柵が付けられている。小さな監獄だ。

「王妃殿下、本当に会われるのですか?」
 幽閉棟の監視兵から声を掛けられて、ジリスは微笑みを向けた。

「会います。僕は大丈夫です」
 兵士に案内されて、三階に上がった。

 一階と二階には、ネモス用に使用人が数名いた。驚いたようにジリスに頭を下げている。

 ネモスは元王太子だから使用人は必要だろうな、と感じた。
 三階は牢獄らしく廊下が鉄檻で仕切られていた。その鉄檻の前でジリスは待った。

 監視兵が鉄檻の中に入り、ネモスを連れて来た。その姿にジリスの心臓がドキリとした。

 肩まででた金髪は背中に伸びている。しかし、それ以外は以前と変わらない。
 白国の簡易服を着ているが、質の良さそうなものだ。生活状況は悪くなさそうだ。
 きっと元国王が施しをしているのだろう。

 ネモスが堂々と檻の前に立つから、ジリスは少し怖気づいた。

「黒オメガ、何の用だ。笑いにでも来たか?」
 上から睨みつける様にされて、ジリスは唇を噛みしめた。

「あなたに聞きたいことがあります」
 出来るだけ感情を殺して、ジリスは問いかけた。

「あなたが、本当にしたかったことは、何でしょう?」

「ほう。なぜだ?」

「王になって、独裁国家でも作りたかったのですか?」

 ジリスはずっと気になっていた。なぜ、ネモスは王になる事にこだわったのか。

 アルを意識していたのは明らかだ。しかし、あのままではネモスは悪王となるだけだ。

 白国の権力者貴族たちは、悪王を許す者ばかりではない。永く王であり続けることは不可能だったはず。
 少し考えれば、ジリスでも分かることだ。

 ネモスはただの欲で動いていたのか、それとも、何か考えがあったのか。ジリスはネモスの嫌な面ばかり見ていたが、何を考えていたのかさっぱり分からないままだ。

 ネモスを理解しなければ、ネモスに加担して処罰された貴族たちの本心が見えない。

「いいところを突くじゃないか、黒オメガ。なぁ、ミーナは元気か?」

 ネモスは相変わらずイライラする。ジリスが質問しているのに、ネモスは自分のペースでしか話をしない。

「ミーナ嬢については、僕は知りません」
「おいおい、冷たいなぁ。一度は番った仲だろうが」

 ははは、と檻の向こうで笑うネモスを一瞥して、続く言葉を待った。
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