手に入らないモノと満たされる愛

小池 月

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穏やかな生活と事件

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 キスって、たくさん種類があるって初めて知った。深く喉が鳴るくらい貪りあうキス、軽くソフトなキス、歯を舐めあうキス、舌を絡ませて吸いあうキス、唇を食まれるキス、口移しで何かを与えられるキス、唾液を飲まされるキス。ここ数日で知ったキスだけで、こんなにある。そして、キスは気持ちがいい。先輩のいやらしい顔も、ゾクゾクする。キスしたことなかったけれど、好きな人同士がキスする気持ちが理解できた。こんな恥ずかしくていやらしいの、好き同士じゃなきゃ出来ないよ。先輩は、僕が好きだという。僕は「はい」と応えているけれど、僕は先輩が好きなのかな? 自分で良くわからない。でも、こんな先輩の顔を知っているのは僕だけかもしれないと思うと、心が満たされる。

 先輩の家に来て、十日。喘息も落ち着いている。先輩と僕で内緒を共有しているから、急速に仲良くなった。この恵まれた先輩が僕を好きなんだって思うと、くすぐったくて心が温まる。明日は、先輩の登校日。
「半日で帰ってくるよ」と言われるけれど、「たまにはゆっくりしてきてください」と伝える。先輩だって友達や自分の時間が欲しいだろう。僕ばかりにかかりきりで申し訳ない。「じゃ、昼ごはんを作っておくね」優しいキスと共に言葉が注がれる。新婚さんみたい、と笑ってしまう。僕は、この温かい満たされる気持ちは、幸せ、という気持ちじゃないかと思っている。
「こんな笑顔を見たかったんだ」
両頬を包まれて、自分が微笑んでいることに気づいた。恥ずかしくて頬が熱くなる。
「表情に心がついてきたね。嬉しい」
先輩を見つめて、もうじき自宅に戻るのかと思うと、気持ちが陰った。

 「行ってきます。斗真、今日は採血だけだから診察開始過ぎたら病院の方に向かってね。結果受け取りは俺が帰ってからでもいいし」
すごく心配そうな先輩に、クスリと笑いが漏れる。
「大丈夫です。隣の行きなれた小児科です」
「そうだけど……」
「あはは。隆介は心配性だよな。何なら私の出勤と一緒に行くかい?」
先輩のお父さんが玄関で声をかける。
「父さん。ダメだよ。父さんは早く行くじゃんか。きっと待たせるのが可哀そうって早めに採血するよね。看護師さんと事務の人が来て、来院の確認と診察開始待ってからじゃないと、時間外診療したって医師会から注意されるよ。ルールは守らなきゃって母さんから怒られるよ?」
確かに、小掠院長先生は、すごく優しくてルール破りしてもいいよ~ってなる。だけど、患者の僕を預かるとか、それだけで指摘されたらマズイ事をしているのは分かる。先輩が心配するのも当然だ。助けてくれたこの方たちに、出来るだけ迷惑はかけたくない。
「大丈夫です。僕、子供じゃないし、時間になったらちゃんと外来に行きます。先輩、先生、行ってらっしゃい」
二人そろって出発。先輩の手を振る制服姿が光って見える。カッコいいよね。顔がにやける。
もう三十分すると、先輩のお母さんである副院長先生が出勤する。副院長先生は朝が弱く、ダイニングテーブルや居間のソファーで二十分はグデグデしてから支度する。だから出勤時間が院長先生とずれる。これも習慣らしい。
「いってくるね~~」
猫背で出勤する副院長先生は、診察時間になると姿勢がシャンとして微笑みが絶えない女神先生に大変身だ。今の出勤姿との格差に笑いが漏れてしまう。隆介先輩のお姉さんである保健室の先生は彼氏と同棲中で帰ってきていない。この穏やかな家庭になじんでしまい、離れることが辛いな、と思う。もともと僕の居場所じゃないんだけど、寂しいな。副院長先生のフラフラとした足取りを見送り、先輩の部屋に戻る。

 部屋に一人になると、静かさにこの先を考える。超音波吸入器も在宅貸し出しとして先輩の部屋に設置してくれた。僕に尽くしてくれた先輩や先生たちに何か僕がお返し出来る事ってあるのかな。状態もいいし、あと数日で帰宅すると思う。内服量も在宅管理できる量まで落ち着いている。家での苦しい発作や我慢を思い浮かべ、ため息をつく。考えても仕方ない。部屋で四六時中キスしていたから、キスできなくなるのも寂しいな。先輩、今日は友達と勉強したり話したりして来るかな。少し心が痛む。帰りは夕方かと考えながら支度をする。
ここに来てから、僕の服をとりに行くことがなかった。下着類は先輩がいつの間にか買ってきていたし、先輩が中学時代に来ていた服を出してくれている。今は百八十二センチの先輩も、中学時代は百六十センチくらいだったのか。きっと可愛かっただろうな、と考える。先輩の匂いがして、最近は服の匂いを吸い込むのが癖になっている。服、いくつかもらって帰りたいけれど、そんなの恥ずかしすぎだ。

 二階のダイニングで温かいお茶を入れる。その内に家政婦さんが到着する。信頼があり、鍵を預けていて、ゴミ出しやら、朝の一連の家事をして、夕食までを作り昼前には帰宅する。週に二回は午後まで滞在し家中の清掃もしてくれる。贅沢だな、と思う。小掠先生夫婦は、贅沢じゃなくて得意不得意によるんだと言っていた。先生夫婦は二人とも家庭の事が苦手。そこは、お金をかけて頼ろうと結婚の時から決めていた、と。無理をしないのも大切なんだと笑っていた。贅沢で家政婦さんを雇っているわけじゃないことに、親しみやすさを感じた。出来ないことも認め合って、優しい家族だ。自分の家庭しか知らなかった僕には、とても為になる事だった。ここに来れてよかったな、と感じている。先輩に会えて良かった。

斗真の弟
 九時過ぎ。家政婦さんに「いってきます」と声をかけて小児科に向かう。
「兄さん」
声がかかる。驚いて見ると、中学校に行っているはずの弟の嘉人がいた。
「え? 嘉人? 学校は?」
「待っていた。兄さんの様子が気になって」
もしかして、心配してくれていたのか? ずっと冷たい態度しか僕に見せなかった嘉人が、僕を正面から見つめている。これまで、こんな優しい目線で見られたこと、なかった、心臓が嬉しくてバクバク鳴る。
「兄さん、ちょっと家に来てよ。兄さんが居ないと、俺ダメなんだ」
僕を、頼っている? 父と母から溺愛されて完璧な存在の嘉人が。心がカーっと熱くなる。家族から初めて頼ってもらっている。先輩に今すぐにでも話したくなる出来事だ。
「嘉人、今すぐ帰った方がいい? 今日、採血があるんだ」
「今すぐだよ。兄さんに帰ってきて欲しい」
僕がこれまで欲しくても、もらえなかった言葉。喜びと興奮で、口が震える。僕は必要とされている。帰ってきて欲しいって。僕は、存在価値があったのか。家族に居場所がある。打ち震える喜びだった。
「いいよ。今から家に行こう」
笑いかけると、嬉しそうに僕の手を引く。嘉人が僕に笑いかけている。心がトクトクと温かく満たされた。

 嘉人に痛いくらいに手首を握られ、早足で久しぶりの家に向かう。小掠小児科医院から歩いて十分。早足だから息が切れる。久しぶりの外歩きに疲れるけれど、嘉人のためなら大丈夫。嘉人が、玄関をガチャリと開けて、家に入る。
「ただいま」
声をかけるが、返事はない。あぁ、父も母も仕事かな、とぼんやり思った。靴を脱ぐ間も、嘉人は腕を離してくれない。
「どうしたの?」
声をかけるが、さっきの優しい笑顔とは違い、見下してくる嘉人の目線に、背筋が凍るような恐怖を感じた。手首をつかむ力が強くなってくる。
「よ、嘉人……」
怖くなり、話しかけるが、靴を片足脱いだままの僕を引きずるように二階の階段に向かう。
「嘉人! まだ靴が脱げてない! 腕が痛い!」
声を上げるが、構わず引きずられた。あまりのことに、驚いて膝がガクガク笑っている。まともに歩けず、階段であちこちをぶつけながら二階の僕の部屋に連れ込まれた。パニックで、腰が抜けてしまい立てない。荒い呼吸を繰り返し、仁王立ちして僕を見下ろす嘉人を見上げていた。

「お前、何勘違いしてんだ。俺がお前なんか頼るはずないだろうが」

「‥‥え?」

呆然と嘉人を見る、可笑しそうに笑う嘉人。
「てめぇが勝手に逃げようとしてんのが、ムカつくんだよ!」
胸倉をつかまれて、左頬を思いっきり叩かれる。あまりの衝撃に、目がチカチカ揺れた。続けて二度三度と打たれて、耳鳴りと定まらない目線。
「やめて、い、痛い!」
小さな訴えをするが、声が震える。頭がガンガン揺れる。怖い。這いずって逃げようとすると、腕を掴まれて床に押さえつけられる。背中でひとまとめに腕を縛られる。この状況で自由が奪われる恐怖。嘉人から、目が離せない。息が荒くなる。自然と溢れる涙を拭くことが出来ない。
「ムカつくんだよ。てめぇだけがココから自由になるなんて、許されるはずがないだろう。いつも弱者ぶりやがって。良いこと教えてやろうか? お前さぁ、喘息、なんで起きるんだっけ? アレルギーあるよなぁ」
どうゆうこと? 心臓が恐怖で限界まで拍動している。叩かれた左頬が痛くて熱い。
「猫。俺、苦労してんだぜ? お前が猫アレルギーって知って、喘息起こしてもらうために猫の毛集めてお前の枕に仕込んでさ。気づかなかっただろ? 朝方、ヒューヒューいう呼吸。あれ聞くとスゲースッキリすんの。お前の死んだような顔、最高だよな。俺はさ、両親の期待一心に受けて苦労してんだよ。お前だけ楽できると思うな!」
嘉人が、ハンカチを取り出す。
「これな~んだ。お前のために、猫飼ってる友達と仲良くして、毛を集めてんだぜ。最近お前いないから溜まっちゃったじゃん。全部まとめてプレゼントしてやるよ」
怖い笑みを浮かべて、嘉人が何かを包んだハンカチを僕の口に押し込む。抵抗しようとしても、身体の大きな嘉人に馬乗りにされて、両手は後ろで縛られて拒否できず、口に布が押し込まれる。怖い。口がガムテープで覆われる。苦しい! 泣いていて鼻水が出ている。息が出来ない!
「あぁ、これじゃすぐ死ぬか。もうちょっと楽しみたいからな」
一度口を覆っていたガムテープをバリっとはがされ、細くしたガムテープで口をバツの字に止められる。口の中の布は出せないが、息が通るくらいの固定。それでも十分な呼吸が確保できなくて涙が溢れる。その内、口の中がビリビリしてきて、呼吸が、喉が締まる独特の感覚。首を振って、苦しい、と訴える。声が出せない。「う~」とうなる声に、胸の奥からヒューっと音が混じる。
「お、これこれ。やっぱ盗聴器で聞くより、生だよね」
何を言っている? もう、心が疲れ切ってよくわからない。先輩の服が引き裂かれる。上半身を裸にされ、僕の薄い胸や喉元に耳をつけて呼吸音を聞いている嘉人。狭窄音が身体に響いている。今、何が起こっているんだっけ? 恐怖が過ぎると思考が停止するらしい。苦しさに喘ぎながら、嘉人を見る。
「何見てんだ! てめぇが逃げなきゃ良かったんだ!」
急に激怒して、また数回僕の頬を殴った後、腹部を蹴り上げる嘉人。喘息発作も起きていて、痛くて苦しい。僕の呼吸音を聞いたり、暴力をふるったりをしばらく繰り返す。助けて。身体が震える。髪を掴んで起こされて、ベッドに投げられる。冷汗が出て、全身が痛くて、呼吸が苦しくて。
「てめぇが悪いんだ!」
嘉人の声がワンワン響く。いつの間にか、下半身も裸にされていた。もう抵抗する気もなかった。うつ伏せに押さえつけられて、お尻に熱いものが当てられる。メリッと身体が中まで裂ける音がした。
「ン~~~!!」
悲鳴が、布に阻まれる。「てめぇなんか……」と何処かで嘉人の声がする。涙が止まらない。身体が硬直したまま痙攣して、揺すられて、息が出来ない。苦しい!! 助けて!! 意識が飛ぶ前に、「斗真!」と先輩の声が、聞こえた気がした。

 ぼんやりと、目が覚めた。白い、病室。あぁ、僕入院していたのか。全部夢か。
「斗真」
優しい手。大きな熱い手。途端にゾワリと、悪寒が走る。嘉人の大きな、怖い手が頭をよぎる。身体がビクリと大きく震える。心臓がドクドクはやる。どうなった、夢なのか。身体を動かすとあちこちが痛い。顔をしかめると、左顔面が痛む。左耳奥の音がおかしい。そうか。嘉人のアレ、現実だ。
 僕は、バカだ。嘉人に優しく頼られて、張り切っちゃって。弟の本心も見抜けなかったなんて。心がずんと重くなり、目からジワリと涙が流れる。悲しい顔で、僕を見つめる先輩。視線が合わせられなくて、先輩に背を向ける。お互いに一言も会話がない。静寂。

 「点滴見ますね~。あ、気づいたかな。先生呼びますね」
周りを見る。総合病院救急外来の、カーテンで仕切るベッドだ。男の先生が入ってくる。
「大丈夫かな? ここに来る前に受けた、暴力について覚えている?」
小さな声で問われる。すごくストレートに質問する人だと思った。先生を見ずに、コクリと頷く。
「隠しても仕方ないから、現状を言うよ。君は、色々な暴力を受けて救急外来に運ばれた。家族からの暴力について、児童相談所に通報したよ。自宅には戻らなくていい。君はしばらく入院することも出来る。または、小児科医院の小掠先生が保護することも提案してくれている。どちらがいい?希望があれば聞くよ」
先輩を見る。その横には、小掠小児科の先生。僕をじっと静かに見つめる先輩。どちらが、いいか。そんなの、決まっている。先輩に手を伸ばす。それを見ていた救急の先生が声をかける。
「小掠先生のところでいいかな?」
コクリと頷く。伸ばした手を先輩が握りしめてくれる。強い力は、怖い。びっくりして、手を引っ込めたくなる。すぐに、手を離す先輩。手首にも、湿布貼ってくれてある。嘉人、強く引っ張ったからなぁ。他人事のように考える。
「左耳、鼓膜が破れているから一か月くらいは音の聞こえが悪いよ。気を付けて。あと、暴行を受けた打撲も二週間は痛むかな。骨折はなかったよ。局部は裂傷があるから軟膏と湿布は処方するよ。状況によって、欲しければ診断書を取りに来てね。小掠先生への患者紹介状にそのあたりも書いとくね。早く良くなると良いね」
分かりやすい説明の若い救急の先生。抗アレルギー薬の点滴が終われば小掠家に行くこととなった。口に入れた猫の毛を、飲み込んでしまったようで胃洗浄もしてくれたと聞いた。時間を見たら夜七時。痛み止めも処方してもらい、車いすで外に向かう。振動が痛くて、背中を丸めてやり過ごす。
「痛いよね。ごめんね」
先輩が気にする。先輩のせいじゃないのに。小掠先生が車を横付けしてくれて、無言で小掠家に帰宅する。自力で歩けなくて、先輩が抱き上げて部屋に運んでくれる。玄関には、副院長先生と先輩のお姉さんもいた。「心配かけてすみません」と言おうとしたのに、言葉が出なかった。二人が目で僕を追う。先輩の部屋のベッドに寝かしてもらうと、安心した。知っている匂いに、ほろりと涙がこぼれた。ティッシュで優しく涙を拭いてくれる。少し表情を動かすだけで、腫れている左頬が痛む。顔をしかめて、現実なのか、と沈み込む。嘉人、どうなったのかな。聞きたいことが言葉にならない。無言で先輩を見つめて、眠気に身を任せた。
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