お嬢様の“専属”

ユウキ

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お嬢様、論破する③

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「セジュール、さがっててくれ」

「す…すまない…ダリウス」

「いいさ。気にすんな」


セジュール様がロティ嬢の側へと戻ると、立ち位置を代わるように一歩進み出た伯爵家令息のダリウス様は、鍛えられたであろう太い腕を組むと、厳つい形相をいっそ鬼のように歪めてリリアンナ様を睥睨した。


「ライバッハ侯爵令嬢、俺はコソコソと陰湿に人を傷つけるやり方は気に入らない。
ロティの良くない噂を故意に流し、女子の集まりにもロティだけ誘わず孤立させ、教科書を破損させ持ち物を壊すなど…
その腐った性根、実に許し難い。潔くロティへ謝罪せよ!!」


ビリビリと鼓膜に響く声を張り上げたダリウス様にも、臆さず真っ直ぐに見返したリリアンナ様は、一呼吸置いてから口を開いた。


「はぁ…物を壊す…ですか?
席は自由で、必ず寮の自室で管理をするように徹底しているこの学園で、どうやって持ち物を破損すると仰るのかしら?」

「………移動教室で、ロティが忘れた教科書を破損させたのだろう?!
彼女は涙を流していたのだぞ!」

「どの移動教室か存じませんが、基本授業後はその教科の教諭補佐が、生徒を見送った後に次の授業のために点検と軽い清掃を行いますのよ?
忘れたのでしたら直ぐ後を追って返却されるか、学園事務室に報告され、担当教諭へ。そして生徒へ返却されます。
……それで、もう一度訪ねますが、私が、いつ、どうやって破損させるのです?」

「…それは…身分に物を言わせて…」


「はぁ…っ」と扇子で口元を隠しながらもあからさまにため息を漏らしたリリアンナ様は、勢いの削がれたダリウス様に冷たい視線を浴びせた。


「私も暇ではございませんのよ。
皆様と一緒に次の授業のために移動しますでしょう?態々わざわざ他の方の忘れ物に目を光らせて、教諭補佐の方と問答して身分で押し切るなど、どこにそんな暇があるのです?
私、王族の婚約者として全ての授業に、公務や陛下や王妃様からの呼び出し以外で遅れた事はございませんのよ?
それから女子の集まりってお茶会のことですの?
ちゃんと紹介も名乗りも受けていない、最初の交流会を断ったさして興味の無い方に、一々招待状を送るような無駄な事は致しませんわ。

それとも何かしら、貴方のお家では交流のないどんな方にでも招待状をお送り致しますの?」
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