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しおりを挟む王城は年末に向けて目が回るほどの忙しさで、誰も彼も足早に行き来していた。
と言うのも、以前までは毎年年末に行われていた恒例の夜会が久方ぶりに盛大に行われるからである。
前国王、前王妃の死去という暗い報せが続いていたので、夜会が取り止められていたり去年は控えめだったが、まだ年若い国王が後妻を無事娶り、初めての正式に貴族への披露目となる。
「王妃の我儘で大量に解雇された」「国王の権力を使って好き放題している」「ユイマール家の変わり者の醜女」と言う解雇された一部の者の悪意ある逆恨みたっぷりな噂がひっそりと流れる中、人員整理で認められて昇進した者や、横暴な上司から救われた者、国王の侍従達近衛騎士を始めとした新王妃派が噂を吹き飛ばすべく全力投球の構えで準備に励んでいたのだった。
「スノウ元気かしら……」
「お美しい王妃殿下、少し休憩になさいますか?」
「そうねぇ……コホン、ねぇ、前から思っていたのだけど、その必ずつける美辞麗句やめてもらえないかしら?」
王妃の執務室で書類が山積している机を前に、椅子の背もたれに脱力しながらもたれかかったクリスティーナはミラに声をかけた。
「いえ、これは失礼いたしました。前王妃様のご命令の名残りでございます」
ハッと口元を押さえたミラは、丁寧に頭を下げて謝罪する。
「はぁー。色々ぶっ飛んでいる方とは思っていたけれど、使用人にそんなこと言わせてたの?私は必要ないから言わなくて良いわ」
「承知いたしました。しかし、以前は義務のように口にしておりましたが、今は自然と出てきておりました」
「……ありがと。けど、何だかこそばゆくなっちゃうから」
「本当にお美しいですわ」
「っもういいから」
最後には苦笑しながらツッコミを入れたクリスティーナ。しかし、ストーリー回避のためには無闇矢鱈と吐かれる褒め称える言葉を止めたかったのだ。
ストーリーが童話ベースと知った日から、王宮の把握と称して色々な部屋を見て回ったが、不思議な鏡なるものは見当たらなかった。
そもそもこの世界には、ちょっと凶暴化したくらいで“魔物”と称される動物は居るが、大それた魔法を使える者はそういない。使えるのは賢者と呼ばれる遠い国のご老人。森の奥深くに住むと言う魔女は呪術と薬学がメインだとか。
複雑な儀式や陣が必要な魔術の開発・解析と対策や、薬草に宿る微弱な魔素と効能の研究をする魔術研究所なるものがあることはあるが、魔物から出た魔石や貴石に効果をつける事ができても、鏡がしゃべっちゃうようなチートマジックアイテムなんぞどこにもなかった。
そこでふとスルーしていたが、さっきの様に挨拶のようにかけられる言葉に注目した。
「女神のように美しい王妃殿下」
「花も恥いる美しさでございますね王妃殿下」
「国で一番お美しい王妃殿下」
あ……れ?
もしかして実はでっかい鏡の後ろに使用人がいた的な話だろうか?と考えていると、初夜の翌朝の言葉を思い出した。
『使用人は家具でございます。感謝を述べていただく必要はございません』
家具……家具。鏡って家具か。と思った瞬間にクリスティーナはピシャーンと雷に打たれたような衝撃を受ける。
鉄壁無表情侍女ミラ。
自身を家具と言い放つクリスティーナに生涯の忠誠を誓った使用人の鑑のようなミラ。忠誠を誓った主には、嘘偽りを口にしないのではなかったか。
……鏡は前世だが、英語でミラー
お、おまえかぁぁぁぁぁぁぁぁ!
やぁっと解けなかった謎が解けたクリスティーナは、心の中で大絶叫した。そして衝撃を乗り越え、毎度の如く掛けられる称賛スイッチをOFFにすべく、何気なさを装ってツッコミを入れたのだった。
───────────────────
<後書き>
一緒にツッコミを入れた方、宜しければ感想ください(笑
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