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聖女のような情婦
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辿り着いた集落の奥に、一際大きな家があった。
木造の堅牢な館を見て、農民がこんな立派な家に住んでいるとは随分と羽振りの良い村だと藤千代が感心していると、そこが領主の邸宅であった。
琶国の生家よりも小さく素朴な家構えに、藤千代は拍子抜けしてしまった。
門が開き、使用人が慌ただしく出迎える中、藤千代はレオニドに連れられて奥の棟へと通された。
「旦那様にお目通りの手配をするので、しばらくお待ちいただけますか。ここはわたしの部屋ですから、気軽にくつろいでください」
勧められるまま椅子に座っていた藤千代は、レオニドの部屋と知って慌てて立ち上がった。
「お気遣いなく! わたしは作業場でもどこでも平気ですから」
レオニドは苦笑しながら、藤千代を再び座らせた。
「チヨ殿には、わたしの手伝いをしてもらおうと思っているのです。読み書き計算ができて、閔語も話せる者などそういませんから」
藤千代はきまりの悪さを感じながらも、再び椅子に腰を下ろした。レオニドが部屋を出て一人きりになると、そっと窓の外を眺める。
遠くに見える山並みも、土の匂いのする冷たい風も、体の大きな人々も、何もかもが見知らぬ景色だ。こんな場所にいるなど、ほんの少し前までは想像もしていなかった。
閔でも奇異の目で見られることはあったが、当時は宣教師団という明らかに異質な集団の一員として仕方のないことと割り切っており、そこまで気に病むことはなかった。
しかしここでは藤千代はたった一人の異邦人で、目の色も髪も肌も体格も、何もかもが違う。異国での孤独が、ようやく現実味を帯びて胸に迫った。
だが、戸惑っているのは数年ぶりに帰ってきたリュカも同じだろう。
領地に着く数日前から、リュカはすっかり落ち着きを失ってしまった。
藤千代に対しても、じっと見つめてくるかと思えば目が合うと慌てて逸らしたり、何か言いたそうにしながら寄ってくるのに、何も言わずに不貞腐れたりと、対応に困る態度ばかりだった。
レオニドをはじめ、閔へ迎えに来た従者たちからは大事にされているように見えたが、思春期の孤独が心の奥に翳りを残しているのかもしれない。
──しっかりせんばいかん
藤千代は大きく息を吸うと、拳で胸を叩いた。
一方その頃、広間に通されたリュカは、部屋に入った瞬間にアッと声を上げそうになった。慌てて口を噤み、床に片膝をついて頭を下げる。
「皇帝陛下のご来臨を賜り、身に余る光栄でございます」
部屋の中央にいた男はリュカのそばへと歩み寄ると、大きな手を差し伸べた。
「ここでは父と呼びなさい」
リュカは緊張で強張った顔を上げると、おずおずとその手を取って立ち上がった。
「……はい、父上…………ご無沙汰しております」
リュカの父であり、現在の皇帝でもあるミハイルは、優しげな笑顔を浮かべてリュカを見下ろした。
「長らくの留学、よく頑張ったな」
「……ありがとうございます」
目を伏せて呟くリュカの手に、細い指が重なる。
「ミハイル様、ご覧になって。もうわたくしの背を超えてしまっていますわ」
リュカはミハイルの隣に立つ女へと目を向けた。肌は透き通って見えるほど白いが、病的とまでは言えない。
「お体の調子はいかがですか? 母上」
具合が悪いと聞いていた母のプラスコヴィアは、儚げな佇まいではあるものの、穏やかにリュカを見つめた。
「頭痛や眩暈でずっと臥せていたのだけど、ミハイル様がいらっしゃってからはとても調子がいいのよ」
プラスコヴィアが愛おしげに見上げると、ミハイルも優しく彼女を見下ろした。
リュカは気まずい微笑みを浮かべながら、部屋を見回した。
「ところで、お祖父様は?」
部屋には領主である祖父のロジオンはおらず、代わりに見知らぬ中年の男とその従者らしき者の姿があった。
「ロジオン殿はこのところ体の具合が優れず、臥せておられる。お前の帰りを待ち侘びていたが、見舞う前にこちらの御仁を紹介しよう」
ミハイルの言葉で、後ろに控えていた見知らぬ男がリュカの前へ歩み出た。
「お前の義父となるヴァレニス殿だ」
リュカは乱暴に扉を開けると、大股でずかずかとベッドへ向かった。
頭に血が上っていたリュカだが、億劫そうに体を起こした祖父の姿にその勢いは鈍り、ベッドにたどり着く頃には、しゅんとした表情を浮かべていた。
「お祖父様……」
苦痛に顔を歪めながら起き上がったロジオンは、かさつく指先をリュカの頬へと伸ばした。
「こんなに大きくなって……見違えたな」
リュカは祖父を再び寝かしつけると、ベッドのそばに腰を下ろした。
「お体の調子が良くないと聞きました」
ロジオンは小さく頷くと、リュカをまじまじと見つめた。
「このところ、起き上がるのも辛くてな……領主を譲ることについてはわかっているな?」
「それは……精一杯努めます。でも結婚は嫌だ」
体は大きくなったのに、幼い頃と同じような表情で顔を顰めるリュカへ、ロジオンはため息を漏らした。
「もう持参金の目録も受け取っている。領主の継承手続きと結婚のために、わざわざ皇帝陛下がご来臨なさっているんだぞ」
「あの人は……!」
母に会いに来ているだけじゃないか、と言いたいところを、リュカはグッと堪えた。
「元々、陛下はお前に帝位を継がせるおつもりだったのは知っているな? 御自身が退位なさった後に、後ろ盾のないお前が困らないようにというご配慮だが、後継争いにお前を巻き込むべきでないとようやくお考えを改めていただいたのだ。ようやくここで平穏に暮らせるのだから、これ以上何も言うな」
言いたいことは山ほどあったが、声を出すのも苦しそうな祖父を煩わせるわけにもいかず、リュカは納得いかないながらも黙って部屋を出た。
あちこちの部屋を覗いてまわり、ようやく藤千代を見つけたリュカは、その膝に泣きついた。
「継承の話はわかるけど、結婚なんてきいてない!」
藤千代は、早口で捲し立てるリュカを宥めて椅子に座らせた。
「そうは言っても、領主になれば世継ぎを育てる義務がありますから、結婚するというのも当然では……?」
こともなげに言う藤千代を、リュカが目を見開いて見つめる。
藤千代にしてみれば、ここまで結婚を嫌がるリュカの気持ちの方が理解できない。
確かに、年齢だけを考えれば少し早い気もするが、領主という立場なら未婚の方が不自然だ。
藤千代は、リュカが自分に対して特別な感情を抱いていることは薄々感じていた。
しかしそれは、異国での孤独な生活の中で生まれた依存でしかなく、家族の住む領地に戻り、さらに結婚するとなれば、藤千代への執着は自然に薄れていくはずだ。
リュカの力になりたいと思っているものの、恋愛感情を向けられても応えようがない藤千代としては、むしろリュカが結婚して落ち着いてほしいとすら感じた。
困惑した表情の藤千代へ、リュカは怒りのこもった目を向けた。
「だったらなんで……!」
リュカは勢いよく立ち上がると、椅子が倒れるのも構わず部屋を飛び出した。
──だったら、なんで接吻なんか……
リュカは涙が滲む目元を乱暴に擦りながら、愛馬のシミュヨンがいる厩舎へと向かった。
その後、部屋に戻ってきたレオニドに連れられて、藤千代は現領主のロジオンとリュカの母であるプラスコヴィアに紹介された。
リュカとよく似たプラスコヴィアを見て、藤千代は思わず呆気に取られた。
華奢な容貌は少女と言ってもいいほどで、とても年頃の子を持つ母には見えない。事前に聞いていなければ、リュカの姉だと思っただろう。
それは若々しいというよりもむしろ、幼い印象だった。
藤千代は、リュカの複雑な家庭環境をようやく理解できた気がした。
領主として、妻を娶って子をなすことが大事だという考えは変わらない。しかし、リュカの話もろくに聞かずに否定したことは間違っていたのではないか……。
浮世離れしたプラスコヴィアの笑顔を見ながら、藤千代の胸は重く澱んでいった。
木造の堅牢な館を見て、農民がこんな立派な家に住んでいるとは随分と羽振りの良い村だと藤千代が感心していると、そこが領主の邸宅であった。
琶国の生家よりも小さく素朴な家構えに、藤千代は拍子抜けしてしまった。
門が開き、使用人が慌ただしく出迎える中、藤千代はレオニドに連れられて奥の棟へと通された。
「旦那様にお目通りの手配をするので、しばらくお待ちいただけますか。ここはわたしの部屋ですから、気軽にくつろいでください」
勧められるまま椅子に座っていた藤千代は、レオニドの部屋と知って慌てて立ち上がった。
「お気遣いなく! わたしは作業場でもどこでも平気ですから」
レオニドは苦笑しながら、藤千代を再び座らせた。
「チヨ殿には、わたしの手伝いをしてもらおうと思っているのです。読み書き計算ができて、閔語も話せる者などそういませんから」
藤千代はきまりの悪さを感じながらも、再び椅子に腰を下ろした。レオニドが部屋を出て一人きりになると、そっと窓の外を眺める。
遠くに見える山並みも、土の匂いのする冷たい風も、体の大きな人々も、何もかもが見知らぬ景色だ。こんな場所にいるなど、ほんの少し前までは想像もしていなかった。
閔でも奇異の目で見られることはあったが、当時は宣教師団という明らかに異質な集団の一員として仕方のないことと割り切っており、そこまで気に病むことはなかった。
しかしここでは藤千代はたった一人の異邦人で、目の色も髪も肌も体格も、何もかもが違う。異国での孤独が、ようやく現実味を帯びて胸に迫った。
だが、戸惑っているのは数年ぶりに帰ってきたリュカも同じだろう。
領地に着く数日前から、リュカはすっかり落ち着きを失ってしまった。
藤千代に対しても、じっと見つめてくるかと思えば目が合うと慌てて逸らしたり、何か言いたそうにしながら寄ってくるのに、何も言わずに不貞腐れたりと、対応に困る態度ばかりだった。
レオニドをはじめ、閔へ迎えに来た従者たちからは大事にされているように見えたが、思春期の孤独が心の奥に翳りを残しているのかもしれない。
──しっかりせんばいかん
藤千代は大きく息を吸うと、拳で胸を叩いた。
一方その頃、広間に通されたリュカは、部屋に入った瞬間にアッと声を上げそうになった。慌てて口を噤み、床に片膝をついて頭を下げる。
「皇帝陛下のご来臨を賜り、身に余る光栄でございます」
部屋の中央にいた男はリュカのそばへと歩み寄ると、大きな手を差し伸べた。
「ここでは父と呼びなさい」
リュカは緊張で強張った顔を上げると、おずおずとその手を取って立ち上がった。
「……はい、父上…………ご無沙汰しております」
リュカの父であり、現在の皇帝でもあるミハイルは、優しげな笑顔を浮かべてリュカを見下ろした。
「長らくの留学、よく頑張ったな」
「……ありがとうございます」
目を伏せて呟くリュカの手に、細い指が重なる。
「ミハイル様、ご覧になって。もうわたくしの背を超えてしまっていますわ」
リュカはミハイルの隣に立つ女へと目を向けた。肌は透き通って見えるほど白いが、病的とまでは言えない。
「お体の調子はいかがですか? 母上」
具合が悪いと聞いていた母のプラスコヴィアは、儚げな佇まいではあるものの、穏やかにリュカを見つめた。
「頭痛や眩暈でずっと臥せていたのだけど、ミハイル様がいらっしゃってからはとても調子がいいのよ」
プラスコヴィアが愛おしげに見上げると、ミハイルも優しく彼女を見下ろした。
リュカは気まずい微笑みを浮かべながら、部屋を見回した。
「ところで、お祖父様は?」
部屋には領主である祖父のロジオンはおらず、代わりに見知らぬ中年の男とその従者らしき者の姿があった。
「ロジオン殿はこのところ体の具合が優れず、臥せておられる。お前の帰りを待ち侘びていたが、見舞う前にこちらの御仁を紹介しよう」
ミハイルの言葉で、後ろに控えていた見知らぬ男がリュカの前へ歩み出た。
「お前の義父となるヴァレニス殿だ」
リュカは乱暴に扉を開けると、大股でずかずかとベッドへ向かった。
頭に血が上っていたリュカだが、億劫そうに体を起こした祖父の姿にその勢いは鈍り、ベッドにたどり着く頃には、しゅんとした表情を浮かべていた。
「お祖父様……」
苦痛に顔を歪めながら起き上がったロジオンは、かさつく指先をリュカの頬へと伸ばした。
「こんなに大きくなって……見違えたな」
リュカは祖父を再び寝かしつけると、ベッドのそばに腰を下ろした。
「お体の調子が良くないと聞きました」
ロジオンは小さく頷くと、リュカをまじまじと見つめた。
「このところ、起き上がるのも辛くてな……領主を譲ることについてはわかっているな?」
「それは……精一杯努めます。でも結婚は嫌だ」
体は大きくなったのに、幼い頃と同じような表情で顔を顰めるリュカへ、ロジオンはため息を漏らした。
「もう持参金の目録も受け取っている。領主の継承手続きと結婚のために、わざわざ皇帝陛下がご来臨なさっているんだぞ」
「あの人は……!」
母に会いに来ているだけじゃないか、と言いたいところを、リュカはグッと堪えた。
「元々、陛下はお前に帝位を継がせるおつもりだったのは知っているな? 御自身が退位なさった後に、後ろ盾のないお前が困らないようにというご配慮だが、後継争いにお前を巻き込むべきでないとようやくお考えを改めていただいたのだ。ようやくここで平穏に暮らせるのだから、これ以上何も言うな」
言いたいことは山ほどあったが、声を出すのも苦しそうな祖父を煩わせるわけにもいかず、リュカは納得いかないながらも黙って部屋を出た。
あちこちの部屋を覗いてまわり、ようやく藤千代を見つけたリュカは、その膝に泣きついた。
「継承の話はわかるけど、結婚なんてきいてない!」
藤千代は、早口で捲し立てるリュカを宥めて椅子に座らせた。
「そうは言っても、領主になれば世継ぎを育てる義務がありますから、結婚するというのも当然では……?」
こともなげに言う藤千代を、リュカが目を見開いて見つめる。
藤千代にしてみれば、ここまで結婚を嫌がるリュカの気持ちの方が理解できない。
確かに、年齢だけを考えれば少し早い気もするが、領主という立場なら未婚の方が不自然だ。
藤千代は、リュカが自分に対して特別な感情を抱いていることは薄々感じていた。
しかしそれは、異国での孤独な生活の中で生まれた依存でしかなく、家族の住む領地に戻り、さらに結婚するとなれば、藤千代への執着は自然に薄れていくはずだ。
リュカの力になりたいと思っているものの、恋愛感情を向けられても応えようがない藤千代としては、むしろリュカが結婚して落ち着いてほしいとすら感じた。
困惑した表情の藤千代へ、リュカは怒りのこもった目を向けた。
「だったらなんで……!」
リュカは勢いよく立ち上がると、椅子が倒れるのも構わず部屋を飛び出した。
──だったら、なんで接吻なんか……
リュカは涙が滲む目元を乱暴に擦りながら、愛馬のシミュヨンがいる厩舎へと向かった。
その後、部屋に戻ってきたレオニドに連れられて、藤千代は現領主のロジオンとリュカの母であるプラスコヴィアに紹介された。
リュカとよく似たプラスコヴィアを見て、藤千代は思わず呆気に取られた。
華奢な容貌は少女と言ってもいいほどで、とても年頃の子を持つ母には見えない。事前に聞いていなければ、リュカの姉だと思っただろう。
それは若々しいというよりもむしろ、幼い印象だった。
藤千代は、リュカの複雑な家庭環境をようやく理解できた気がした。
領主として、妻を娶って子をなすことが大事だという考えは変わらない。しかし、リュカの話もろくに聞かずに否定したことは間違っていたのではないか……。
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